九州北部茶旅2020(11)北九州 ユニークなTea House

小倉駅からJR日豊本線に乗り込んだ。20分ほど乗って朽網という名の駅で降りた。正直何と読むのか分からなかったが検索して、『くさみ』だと知る。網から海を連想したが、どうも海はないらしい。なぜこんな地名になったのか。ネット上では『景行天皇が土蜘蛛討伐の際に、葛の網をしいたところそれが朽ちたことに由来』とか『「くさ(臭)」+「み(水)」で、臭みのある水(飲めない水)に由来』とか説明されているが、何となくピンと来ない。

駅から上り坂を上がり、国道らしき道に出た。ここに来た理由、それは昨年3月の四川旅でご一緒したMさんが凰茶堂という中国茶のお店を出していると聞いたからだ。そのお店は想像していたよりずっと大きく、車が何台も止まっていた。午後1時ごろだが、ランチを食べる人、お茶を飲む人で賑わっていた。お茶だけでなくスイーツも充実しているようだ。

ここ3か月はコロナで様々な問題があったが、ソーシャルディスタンスや除菌など1つ1つの課題をクリアーしてお店をオープンさせているという。話を聞いていると思った以上に飲食業は大変だと痛感する。Mさんは忙しそうだったので、私は奥まった席でお茶をオーダーしてまったりと飲み、美味しいデザートをサービスしてもらってご機嫌になる。

ランチのお客さんが捌けた頃、茶葉を売る辺りに移動して、Mさんと無駄話を始めた。このお店、思ったより遥かに茶葉の種類が多く、またマニアックなお茶まであって、見ていても楽しい。それは店主の拘りだろう(まあ、あの四川省の茶旅にやってくるくらいだから)。

その間も地元のお客さんはひっきりなしにやってきて、中国茶を飲む人がこんなに多いのかと、ちょっと驚く。地域に根付くには苦労も多いのだろうが、何とも頼もしい限りだ。コロナに負けず、お店を続けていって欲しい。そしてまたいつか、一緒に茶旅する機会があればよいなと思う。

朽網駅に戻ると、何と電車が止まっているという。こういう場合、どうしたらよいのか、考えは全く浮かばない。だが幸いなことに頭を巡らすまでもなく、なぜか電車はやってきて、すっと乗り込み、小倉駅まで戻った。ホームを歩いていると、『北九州名物 かしわうどん』が目に入り、突然腹が減った。そういえばちゃんとお昼を食べていなかったのだ(さっき凰茶堂で飲茶を食べなかったことが急に悔やまれる)。甘い汁で煮しめた鶏肉が上に乗り、ネギとの相性がとても良い。こういうローカルフードが好きだ。

宿には戻らず、また商店街を散策する。美味しそうな和菓子屋さんがあったので、思わず寄り道した。日本茶旅ではやはり和菓子の魅力が大きく、まんじゅうなどを1つ買って部屋で食べるのが病みつきになってしまった。ついでにこの先で渡すお土産も購入して満足する。

そして午後は、駅近くにあるバーに向かった。昼からバー?酒も飲まないのにバー?と言われそうだが、昼はカフェ、夜はバーのホルンというお店があるという。狭い入り口には、おしゃれにTea House Hornと書かれている。中に入るとバーカウンターがあり、奥にはテーブル席が意外とたくさんあるようだった。

このお店は、バーテンダー店長のMさんが和紅茶の美味しさに目覚め、夜の本業以外に昼間は和紅茶専門カフェとして運営しているというのだ。私は近年酒を飲まないのでバーに行くことはないが、バーカウンターでゆっくりバーテンダーとお話しながらドリンクを味わいたいという密かな欲求は持っていた。そういう人の気持ちを満足させてくれるのが、ホルンだったのだ。

Mさんがゆっくりと和紅茶を淹れてくれた。最近の和紅茶は物によっては非常に質が高い。そして和洋どちらのお菓子にも合うような気がしており、美味しく頂く。Mさんは若いころからバーテンをやっていて、既に10数年の経験があるという。そして和紅茶との出会いで、新たな可能性に目覚めた。こんなお店が全国にあればいいな、楽しいなと思ってしまう。

夕方5時を過ぎると、夜の営業準備に入るというので、この心地よい空間を退散した。また商店街に戻ってみると、土曜日の夕方で人混みがすごい。コロナなどどこ吹く風だ。夕飯に何を食べようかと悩んだが、前回滞在時に焼うどんを食べたので、今回はとりかつ丼にしてみたいと思う。さっきかしわうどんを食べたことなど完全に忘れ去られている。

ところがとりかつ丼で有名店だという店はなぜか夕方前に閉店となってしまっていた。検索すると同じ店の2号店が別の場所にあると知り、そこまで歩いて向かった。川沿いのショッピングモール内のフードコートのような場所にそれはあったが、こちらはなぜかかなり空いていた。とりかつ丼とみそ汁、サラダセットを注文。とりかつは甘みがあり、私の好みだった。九州北部の旅はこうして終わりを告げた。

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