九州北部茶旅2020(9)博多にちょっと寄ってみて

7月17日(金)博多に短期滞在

今朝もいい天気だ。宿には朝食が付いていないので、迷わず飯抜き。食べ過ぎなのだ。駅まで荷物を引いて戻り、JR筑肥線で博多へ向かう。一度さっと乗り換える。車内は博多に近づくにつれて、急に人が多くなる。1時間半で到着する。今回博多には泊まらないので、先ずはコインロッカーを探して荷物を押し込む。

駅前から祇園の方向へ歩いていく。10分もかからず承天寺に着く。ここは鎌倉時代の臨済宗の僧、聖一国師が開山した寺だ。当時の博多の豪商、謝国明などの援助を得たらしい。聖一国師といえば、静岡茶の祖とも呼ばれているが、その史実はちょっと疑問らしい。ただ入宋中は杭州郊外の径山寺で4年ほど修行しており、ここで茶に親しんだことはほぼ間違いがない。先日京都へ行き、やはり国師が開いた東福寺も訪ねているので、何となく親近感が沸く。

国師は宋から、うどん・そば・羊羹・まんじゅうなどの製法を日本に伝えたと言われている。承天寺に「饂飩・蕎麦発祥之地」の碑があるのはそのためだ。博多ごぼてんうどんは私の好物だが、麺がフニャフニャなのは日本でここだけが当時の麺を維持しているのではないかと勝手空想してしまう。

また国師には博多で疫病が流行した時に、施餓鬼棚を弟子に担がせ、自らその上に乗って町中に聖水を撒き、疫病が退散したとの逸話があり、これが博多祇園山笠の起こりだとか。それで「山笠発祥之地」の碑も置かれている。いずれにしても当時のマルチタレント聖一国師の果たした役割は実に大きい。

そこから川端に向かう。実は今朝知り合いのZさんから連絡があった。彼女はコロナでずっと福岡にいたらしい。折角なので、ちょっと会おうということになり、ラーメン屋で待ち合わせた。ところが歩いて10分ほどの場所なのに、なぜか店に辿り着けない。仕方なく別の店に入り、ラーメンを食べた。それからカフェに移動して話し込む。

Zさんとは北京で知り合い、その後色々とご縁があった。今は福岡にも家があり、ここが気に入っているらしい。そして博多のお寺で写経するなど、すっかり馴染んでいる。何事にも探求心が強く、かなりのめり込むタイプなので、教えてもらう事も多く、話していて楽しい。

話は尽きなかったが、Zさんと別れてまた歩き出す。先ほど訪ねた承天寺の近くまで戻り、今度は栄西禅師が開祖、源頼朝が建立したという最古の禅寺、聖福寺に向かった。さすがに古刹、という雰囲気を醸し出す境内だった。栄西は宋から持ち帰った茶種をこの寺にも撒いたというが、その場所はよくわからない。僅かに茶筅を持ったユニークな茶筅観音があるだけだ。ここは広田弘毅の菩提寺でもある。文官で唯一絞首刑になった元首相は何を思ったであろうか。

バス停を探していると、立派なお寺に出会った。東長寺、真言宗の寺で、弘法大師が唐から戻り、ここで密教を祈ったらしい。福岡は日本の玄関口、そんな時代は意外と長かったはずだが、今ではその意識が薄れている。一度はこの町に住んでみたいと思うが、その機会は訪れるだろうか。

バスに乗り、指定された場所に移動した。福岡は地下鉄も発達しているが、バスも沢山走っており、どれに乗ってよいか迷う。バスを降りてちょっと迷いながら、とあるマンションまでやってきた。実は知り合いのYさんが、ここにマッサージ屋を開業したというのだ。

10年前北京に居た時は、Y夫人が腕の良いマッサージ師と共同でマッサージ店を経営しており、かなりお世話になっていた。だが今度はご主人が全く違うマッサージを始めたというのだから、ちょっと驚いて覗いてみることになった。マンションの一室に入ると、施術室がある。先ずはマッサージと言われ、恐る恐るベッドに横になる。

CS60というのだそうだ。ボールのようなものを体に擦り付ける感じで、北京で昔受けていた強い指の圧力とは違い、スーッと気持ちが良い。何だかウトウトしてしまい、気が付くと施術はほぼ終わっていた。特に体が悪いとの自覚もないので、ちょうどよい休憩となった。

別の部屋に移ると、Y夫人がお茶とお菓子を用意してくれていた。彼女は中国茶の茶芸師で、こちらも本格的だ。マッサージと中国茶が同時に味わえるところなど、ちょっと想像がつかない展開だった。そしてダラダラと過ごしていると、疲れも癒え、爽快な気分となる。夕飯も近所の焼き鳥屋で一緒に食べた。ちょっと昔話などをして、ちょっと今の社会について語っていると、あっという間に時間は経ってしまう。

今晩は小倉まで行かねばならないため、早めに切り上げてバスで博多駅に向かった。ロッカーから荷物を取り出し急いでホームへ走り、鹿児島本線区間快速に乗り込んだ。これで1時間半かけて、暗い中を列車は走る。午後10時前に何とか小倉駅に到着。今晩も駅近の宿を予約していたので、チェックイン。そしてシャワーを浴びるとすぐに寝てしまう。

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