京都ぶらり茶旅2020(2)徒歩で行く京都観光

最後にきつい階段を登りきると、清水寺に出た。ここに来たのは恐らく高校の修学旅行以来ではないか。ただ目的は寺の見学ではなかったのでスルーして、参道に出る。いつもであれば多くの店が観光客を呼び込んでいるはずだが、残念ながら今日は閉まっている店が多く、また歩いている人もまばらだ。学生服も全く見かけない。

三年坂を探す。ここも売茶翁が店を開いた場所と言われているので、一応チェックする。こういう機会でもなければ、わざわざ訪ねることはないだろう。または気が付かないうちにその坂を下りてしまうことはあっても、意識はしないだろう。この辺は如何にも京都に来た、という雰囲気のある場所だが、一方観光客向けになり過ぎてきているともいえる。三年坂とは別名、『産寧坂』(安産祈願)『再念坂』(清水参拝後ここでもう一度祈願)などと書かれているのが面白い。

高台寺に突き当たる。秀吉の正妻おね様のお寺というイメージがあり、お茶会なども開かれている寺だが、今は当然ながら休止中だった。庭が見事な場所だが、スルーして階段を下りていく。ここの階段の風情が好きだ。そして八坂神社までフラフラと歩いて行くのは悪くない。普通はここから賑やかな一帯を散策するのだが、今日はまっすぐ?建仁寺へ向かう。

5年ぶりの建仁寺で桑の碑を眺める。栄西の喫茶養生記、もう一度読んでみようか。この本は喫茶というより薬として効能が書かれているはずだ。その横には平成の茶苑と書かれ、茶樹が植えられている。その前には栄西禅師、茶碑が建立されている。後ろを見ると建立者は祇園辻利の三好さんになっている。台湾から引き揚げた後、作られた祇園辻利の歴史にも興味が沸く。

境内を歩いていると、曹洞宗の開祖、道元禅師がここで修行したとの看板も見える。この当時の宗教については、よく知らないので、各宗派の繋がりなどを含めて改めて勉強する必要性を感じる。お茶の観点だけから栄西を、そして禅宗を見ていても、何も分からないかもしれない。

そのまま四条通へ出た。先ほどの祇園辻利が気に掛かり、その本店を訪ねてみた。店員さんに店の歴史を訪ねてみたが、ほぼ何も知らないようだった。『先代が昨年亡くなりまして、歴史を知る人もいなくなりました』という言葉が、まさに歴史を感じる。戦後の混乱期、着の身着のまま台湾から引き揚げてきた人々の苦労は既に忘れ去られようとしている。

急に腹が減る。元々ランチを探すはずがいつの間にかこんな所まで歩いてきてしまっている。目についた焼肉屋に飛び込み、焼肉定食を食べる。腹が減っており何ともうまいのだが、なぜ京都まで来て、焼肉を食べているのか、自分でも分からない。ランチ1080円と書かれていたので、てっきり税込みだと思っていたら、税別だった。こんなことが新鮮に感じられる。

特に雨も降って来ない。ホテルに帰っても仕方がないので、更に歩きだす。正直これだけ長い距離を歩いたのは数か月ぶりで、足がパンパンに張り、嬉しさにあふれている。やはり旅をしないといられない体になっているのだ。目指すは知恩院。恐らくここも高校の修学旅行以来ではないだろうか。40年前のその時、静かでよい印象を持ったお寺だった。

かなり厳しい階段を上ると、やはり静けさがあった。自分がここへ来た理由など、完全に忘れて、ただボーっとしていた。いつもなら修学旅行生などで賑わっているのかもしれないが、これが私の知恩院だと思う。門を出てフラフラ歩き出す。すると寺の外壁の植え込みがなぜか目に入る。

そこには何かの碑が建っていたが、よく読めないので、植え込みの中へ入りこんだ。そして驚いた。『前田正名君』という文字が見えたのだ。私が知恩院に来た理由は、この前田正名の碑を探すことだったのだ。しかもまさか境内ではなく、こんなひっそりした場所にあるなど思いもよらない。前田正名は明治期の偉人の一人だと思っているが、今や完全に忘れ去られた人物だ。この碑が現在の彼の評価を物語っていた。

更に行くと『大谷本願寺故地』や『蓮如上人御誕生の地』などという碑が見えてくる。花園天皇陵もあり、『ここはお国の何百里』などという軍歌の碑まで現れる。何とも不思議な道を歩き終えると、そこには平安神宮の赤くて大きな鳥居があった。何だか旅が終わった気分になるも、今日最後の目的地へ向かう。

西福寺、そこは南禅寺の参道をちょっと脇に入った、とても小さな寺だった。なぜそこへ行ったのかと言えば、そこに雨月物語で知られる作家、上田秋成の墓があると聞いていたからだ。上田秋成は江戸時代、数寄者として名があり、煎茶にもかなりのめり込んだという。ちょっと意外な人物が煎茶と関連していたので検索してみると、墓は大阪ではなく京都にあると分かった訳だ。ただこのお寺、門のところに説明書きはあるものの、中に入ることは叶わず、墓に参ることは出来なかった。

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