《雲南お茶散歩 2006》昆明、景洪(3)

3.景洪
(1)景洪まで
昆明空港に到着するとまだチェックインも始まっていなかった。やることもないのでカウンター前に並び、1時間半前に一番にチェックインを済ませる。それでも時間が相当余ったので、レストランに行って夕食を食べる。勿論空港のレストランなので非常に高いし、美味しくもない。

ここで携帯から日本に電話を入れる。実はFさん夫妻が携帯電話を貸してくれたのだ。しかも国際電話が可能なプリペイド式のカードも買ってくれたので、安く日本に掛けることが出来た。尚このカードは昆明でしか使えないとのことで、これから行く景洪では使えない。中国は広いこともあるが、地域間で色々とややこしい。因みに昆明で使える携帯電話は昆明発信となり、中国の他地域へ掛けるときは割高になる。更に電話を受ける側も受信料が掛かるのだが、例えば上海に掛けると受けたほうは結構高いらしい。

電話の趣旨は本日が長男の誕生日であった為、そのお祝い。朝ホテルのPCから一応メールでメッセージは出しておいたのだが、時間もあったので電話したのである。自分の誕生日に出掛けてしまった父親を彼はどう思っているのだろうか??しかし毎度のことなのであまり気にしている様子はなかった。

時間を潰していると出発になる。昔の中国では飛行機がいつ飛ぶかは分からなかった。空港で浪費した時間はどのくらいであったろうか??ジェット機に乗り込む。19年前に昆明から思茅に行った時は、ソ連製プロペラ機アントノフで死ぬ思いであったが、今回は景洪まで僅か40分のフライトであった。時代は変わったのである。何しろ景洪に空港が出来たこと自体が画期的である。そしてかつての秘境西双版納は一大観光地に変貌した。

(2)版納への思い
景洪の空港に到着。非常にシンプルな空港である。タラップを降りると南国の夜風が吹き抜けて気持ちが良い。ターミナルでは民族衣装を着た女性達がパンフレットを持って出迎えてくれた。確かに観光地である。

今回Fさんはホテルを予約してくれていた。タクシーで行けば直ぐだと言われていた。しかしターミナルを出ると暗いせいもあってかタクシーが見当たらない。団体さんはお迎えのバスに乗り込んでいく。どうしようか?すると目の前にミニバスが停まっており、客を呼び込んでいる。何となく乗ってしまう。4元で市内のホテルへ送ると言う。

運転手に版納飯店と告げると『名前は変わったがホテルはまだある』と言う。何となく変な気がしたが、出発する。ほんの10分で街中に入る。私が知っている19年前の素朴な町とは異なり、車が溢れ、ホテルや商店のネオンサインが煌く。まさに普通のどこにでもある町になってしまっていた。

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80年代に西双版納を旅した人々にはある種共通の感慨がある。暖かい気候、あの素朴な人々、笑顔、車も殆ど通らない土の道。夜は街灯もまばらで薄暗い中、笑顔で酒を酌み交わす姿。瀾滄江を緩やかに下ると南国の木々が見え、川で洗濯をする人々が見える。水浴びをする少女の姿などはまるで桃源郷の絵の様である。

皆口を揃えて言う。90年以降版納に行って感動することはなくなった。もしまだ行っていないのなら二度と行かないほうがよい。思い出は大切にするものであると。しかし私は戻って来てしまった。これも茶縁と諦めるしかない。

(3)版納飯店
そんなことを考えていると後ろの中国人カップルが降りていく。宿を決めていなかったようで、何とガイドと思われる男性がバスまで付いて来て、彼らのホテルを斡旋しようとしている。皇冠飯店という名のホテルがよいといっている。1泊200元、Fさんが予約してくれた版納飯店と同じ値段である。外から見るとかなり立派なホテルである。ここでもいいなと思う。

かなり若い女の子4人組は国籍もバラバラに見える。恐らく香港あたりの子がリーダーで旅行に来た感じである。曼丁路という場所へ行こうとしている。タイレストランが沢山あると言っていた。彼女が降りると私一人が残る。段々町の中心から離れて行く。何故だ??

運転手がここだ、と言った場所はどう見てもホテルとは思えない旅館であった。名前も耳海賓館という。中に入るとフロントの女性が怪訝そうな顔をする。『予約しているんだけど?』と聞いてみると、奥からオーナーらしい男性が出てきて、『うちには今夜予約は入っていないよ』とかなり胡散臭そうに私を見る。(どう見ても外国人が予約して泊まるような所ではない)

おかしいなとバックからFさん作成の予定表を取り出す。男性も覗き込み、『金版納じゃないか』と言う。確かによく見ると『金』が付いている。男性はそれならあっちだと指を指すが、歩くと相当かかると言う。タクシーを捜すと直ぐに見つかる。昔は夜9時過ぎにタクシーを見つけるなんて至難の技であったが、今は普通のことである。

タクシーはメーターも倒さずに走り出す。観光地なのでぼられるかと思って見ていたが、5分で立派なホテルの前につける。よく見るとさっきカップルがガイドと降りて行った皇冠飯店の向かいではないか。運転手は何事もなく5元と言う。ここでは市内はどこへ行っても5元であると言う。まるで戦前の東京の円タクではないか。

ホテルは結構立派なロビーがあり、部屋は後方の2階建ての棟にある。プールサイドで飲み物を飲んでいる人達がいる。如何にも南国風で心地よい。緊張は全て吹き飛ぶ。部屋は普通のツインで3星ホテルとしては良い方ではないか。

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(4)夜市
暖かい南国の夜に部屋にいるのはつまらない。タクシーを降りる時に道路に夜市が出ているのが見えた。皇冠飯店の横にある。昼間は普通の道として使われているが、夜は交通を遮断して観光客向けの夜市としている。

 

『西双版納旅遊購物夜市場』と書かれた看板が光っている。歩くと少数民族が民族衣装を着て、路上に品物を並べて売っている。バナナなどの果物、花、工芸品。プーアール茶を売る者もあるが、暗くてお茶の質などはよく見えない。きれいな箱に入れているものもあるが、中身はどうであろうか?

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太い幹の椰子の木にイルミネーションが煌く。中国各地から来たと思われる観光客が思い思いに土産物などを選んでいる。中国の観光地の中には売り子がしつこいくらいに纏わり付いてきたり、強引に売りつけようとしたりするところがあるが、ここでは皆が受身である。声を掛けることもなく、ただ座っている。民族衣装で横座りする姿は、怠惰にも見えるが、何となくたおやかである。

結局何も買わずに帰る。明日はどうするのか、どうなるのか分からない旅では物を持つ予定が立たない。明日は易武という山中に分け入ることになっている。そう思いながら部屋に戻ると電話が鳴る。

F夫人から『易武行きのバスは6時半と9時半に出る。』との連絡が入る。さっきは8時といっていたから、再度確認してくれたのだろう。有り難い事である。ゆっくり9時半のバスに乗ると返事をしたが、結構興奮している自分に気が付いていた。

 

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