黒茶を訪ねて梧州へ2013(3)山の中のプレハブ茶工場

六堡鎮

昼時となり、六堡鎮で食事を取ることに。鎮にも小川が流れ、何となく風情のある田舎町だ。古い街並みが良い。ただ最近建てられた住宅もあり、発展がまだら状態。骨董屋と思われる1軒に入ると、古めかしい籠に六堡茶が詰められて売られていた。お茶も骨董の域か。面白い。尚この籠、日本の女性には大人気。ただ嵩張るので持ち帰るのは大変。

お茶屋に入るとおばさんが枝取りに精を出していた。オジサンは悠々と新聞を読む。我々客が来ると相手はオジサンの仕事だ。お茶を淹れて出す。実に素朴な人だった。良く見てみるとオジサンが飲んでいたのは六堡茶ではなく、紅茶。最近の紅茶ブームを当て込んで、六堡茶に使う葉で紅茶を作ったという。こんな所にまで商業主義が蔓延っているのか、それとも好奇心の強いオジサンなのか。

お茶屋の隣の食堂に入る。いきなり目に入って来たのは、大きな容器に入った蛇。蛇やマムシを漬けた酒だ。何故か元気を取り戻した李さんが『これ飲むか』と聞いてきた。勿論断ったが、既に2階では昼間から大宴会が開かれており、騒々しい。

弟さんは早々に厨房に入り、おばさんと何やら交渉を始めた。おばさんが生きたニワトリを手でつかみ、勧めている。今から鶏を絞めているとどれだけ時間が掛かるのだろうか。裏には鶏が沢山籠に入れられていた。鳥インフルエンザが取りざたされている昨今だが、この田舎には全く関係がない。私も郷に入れば郷に従うのみ。

確かに出てきた白切鶏は本当に新鮮で美味かった。梧州の街中では食べられない新鮮さ、ということで、李さん達もバクバク食べた。野菜たっぷりのスープも美味。本来静かな田舎町だが、何故か今日は酒が入り、隣は大混乱。何か祝い事でもあったのだろうか。それとも茶作りが一段落した余暇であろうか。

山の上のプレハブ茶廠

さっきのお茶屋のオジサンが『もう少し山の上にも茶工場が出来たぞ』との情報をもたらしていたようで、食後我々は更に山を登って行った。20分ぐらい行くと、突然プレハブの建物が見えてきた。車が停まり、李さんが降りていく。男性が4人、トランプに興じていたが、なぜこんな山の中でトランプ?

何とこのプレハブが茶工場だったのだ。そしてトランプしている人々は茶葉が届くのを待っていた。李さんはもう完全にお茶屋さんモードとなり、真剣な目つきで製茶された茶葉を見、建物内にズカズカ入り込み、勝手に湯を沸かして茶の試飲を始めた。私も飲んでみたが、特に美味い、とは感じられず。六堡茶など黒茶類は出来たてが美味い、という訳にはいかないので当然か。ただ李さんは気にいった茶があったようで、そこのオジサンと交渉を始めた。これはプロでないと見抜けない。

そして茶畑を見に行くことになった。畑は更に山を登る。海抜も分からない、と言われてしまったが、結構高いはずだ。眺めは良い。ところに・・異様な人々が。そこにはライトバンが停まっており、カメラを構えたオジサンが3人。そしてバンから女の子が2人降りてきた。その子達は何と日本の浴衣を着て、ポーズを取る。チャイナドレスにも着替えていた。どうやらコスプレ撮影会のようだが、何とも異様だった。李さん兄弟はその反対側の茶畑で写真を撮り合っている。

再び工場に戻ると、ちょうど山から茶摘みを終わって茶葉を担いできた女性と出会う。早々に茶葉を確認する。更にはオートバイで運ばれてきた茶葉を見る。李さんはここでいくらか仕入れた。決済は全て現金。梧州に持ち帰り、評判が良ければまた買い足すという。帰りは来た時よりはかなり楽だった。比較的早く梧州に戻った。

4.梧州2  チケットが無い

梧州でも目的を果たして満足に浸る。李さんに『これからどうするだ」と聞かれ、ふと我に返る。どうするんだ?バンコックのポーラからは賀州という風光明美な場所があると教えられていたので、行って見ようかと思ったが、李さんによれば、『古い民家も大自然も郊外にあり、バスでは行けない』という。それはそうだろう。

賀州を諦めるとあとは香港に戻るしかない。体調も万全とは言えないし、今回は梧州で満足しよう。バスターミナルへ行き、チケット購入を試みる。ターミナルは大混雑で、長い列が出来ていた。中国では見慣れた光景だが、やはり効率が悪いのだろうか、または何かトラブルでもあるのだろうか。

20分ほど待って自分の番がやって来たので『香港』と告げると、『コンピューターが壊れているので空きがあるかどうか分からない。ここに電話して聞け』と番号を教えられる。そうなら最初からそう表示して欲しい、とは思うが、ここは中国。李さんが電話してくれたが、何と何と、香港行き直通バスは3日後まで満席だった。どうする?李さんは直ぐに窓口に戻り、満席だと告げ、代わりにシンセン行きを買ってくれた。明日朝9時発、これで方向は定まった。シンセン行きは一日数本あったが、どれも人が多いようだった。高速鉄道が開通するとこの様子も一変するのだろう。

夕飯は最後の晩さんではないが、李さんとオジサンと3人で梧州名物?海鮮粥を食べに行った。私はお粥が大好きな人間だが、ここの粥は本当に美味しかった。中国でも北部は白粥に塩の効いたピーナツなどを入れて食べると美味いが、やはり南のドロッと煮込んだ粥が良い。今回はそこにエビ、カニなどがふんだんに入っているのだから堪らない。

オジサンからは茶について色々と聞いた。市政府はお茶の新興より不動産収入に力を入れているようで、六堡茶の知名度は昔より上がっているが、それでも将来は楽観できないという。中国の茶業も曲がり角に来ているようだ。

4月14日(日)  香港へ

今朝は早めに起きて、帰る準備をする。六堡茶は散茶にしても、籠に入っているなど意外に嵩張る。十分に時間を余してチェックアウトし、バスターミナルまでタクシーを拾おうとしたが・・。日曜日の朝ということか、タクシーの姿は一台もない。5分待っても通る気配すらない。これは困った。取り敢えずバス停で見てみると1台だけターミナルを通るバスがある。仕方なく、これを待つが、これまた来ない。他のバスが来ると聞いてみるが運転手は首を横に振る。歩いて行ける距離でもなし、どうするか。

そう思っていたところへタクシーがやって来た。慌てて乗り込む。聞けば、偶然今朝は出勤したらしい。普通日曜日の朝は商売にならないから、タクシーは休みが多いと。この辺りは宵っ張りの土地柄。朝はゆっくりお休みか。

ようやくバスターミナルへ着いた。既に疲れていた。シンセン行きのバスは定刻に出発。街を抜けるとそこも開発ラッシュ。そこかしこの土地を掘り返している。これが今の中国の実態。その後はまた長閑な田園風景が長く続く。まだまだ土地はあるように見える。6時間後、シンセンへ到着した。やはり香港直通バスは便利だった。




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