茶文化の聖地 四川を茶旅する2019(7)突然彭州へ

3月24日(日)
突然彭州へ

久しぶりに一人で寝たのと、朝ご飯を食べなかったことにより、今朝は身体がすっきりしていた。9時に陳さんが車で迎えに来てくれ、Mさんと共に今日の旅が始まった。成都市内を抜けて高速道路を走る。北西に約1時間、彭州市に至る。そこから田舎道をまた1時間ほど行って、目的地に着いた。

 

そこはきれいな観光茶園のようだった。一体ここはどこだろうか。宝山村とある。迎えてくれたここの責任者、徐さんは茶師で、やはり福建省武夷山から招聘されて、ここで数年前に茶作りを始めたらしい。きれいな建物も、中にある最新設備の製茶機械も、福建の投資家が準備した。『正直この地は歴史的な場所ではあるが、近年茶業はあまり盛んではなかった。我々が再度茶業を始めるためにここに来た』という。

 

裏山に登ると、そこには茶畑が広がっていた。『ここは60年ぐらい前に、茶樹が多く植えられたが、その後放棄された場所。それを数年前に借り受け、茶作りが始まった』という。ということは、ここは中国でよく見かける、政府に指示で茶樹を植え、その後の混乱で捨てられた土地だった。その茶樹も数年の管理で見違えるように復活した。

 

実は昨晩この辺りには雪が降っていた。『本当は向かい側の龍門山系に入れば、樹齢100年を越える茶樹が沢山植わっているのだが、そこはとても滑りやすく、残念ながら今日行くことは出来ない』とも言われてしまう。やはり茶旅だ。そんな簡単に目的地に行ける訳がない。確か昨日陳さんの雑誌で見た、梯子を掛けて茶葉を摘む様子、あの茶樹が見られないのは残念だが、仕方がない。この葉っぱで徐さんは紅茶を作っているという。

 

昼ごはんを食べに行く。ここも誰かが投資して、きれいに整備された場所。野菜も鶏も地元産でこりゃ美味い。その横にはかなり古い建物があり、茶館として使われていた。近くには中国のどこにでもある老街が観光化されている。この地は古くは2000年前の書物にも出てくる要衝の地、茶処であり、唐代の陸羽も茶経にこの地について書き残しているというが、今はその面影はない。

 

実は彭州市は北海道の石狩市と姉妹都市だ、と地元の古老が教えてくれた。きっかけは30年以上前にこの地の若者の農業実習を石狩市が受け入れたご縁だという。全く性格の違う都市が結びつく、こんなこともあるのだな。近年この地はほうれん草の産地だとも言い、1990年代には日本に盛んに輸出していた歴史もあるというのは何とも意外な話だ。

 

午後は寺に行くという。丹景山にある金華寺。幹線道路から山道に車が突っ込み、ちょっと行くと、階段が見えた。その手前の駐車場から、道なき道を突然歩き始めたので驚く。どこへ行くのかと思っていると、そこには古い石碑のようなものが建っていた。『これは唐代にここで出家した新羅の王子の墓だ』というではないか。何の話だ、それは。

 

階段まで戻り、登り始めるときつい。先日の蒙頂山最古の茶園ほどではないが、既に膝を痛めていたので、上がるのは大変だった。何と陳さんは車で上がっていたので、ちょっと恨む?喘ぎながら寺の門に到達した時は、もう死にそうだった。しかもそこで終わりではなく、そこが寺の始まりだった。

 

奥に入っていくと、お坊さんたちが何かしている。その中には、韓国の茶雑誌の社長も混ざっていた。先ほどの新羅の王子の話から、韓国との縁を感じ、やってきたという。見ていたのは、何と王子の遺骨だというではないか。先ほど見た墓から掘り出されたものらしい。急な展開にちょっとまごつく。しかし王子は何故こんな山奥に来たのだろうか。国に後継問題でもあったのだろうか。

 

寺院内でお茶を頂く。お坊さんがお茶を淹れてくれるのだが、このお茶、紅茶を煮出している。渋みなどはない。徐さんのお茶を使っているらしい。ここには市の観光局の人も来ており、今年中に韓国人社長と今年中に何らかのイベントをする話が進んでいた。さすが韓国、日本はこういうのはなかなか出来ないな。

 

今日の集まりの意味がようやく分かり、我々二人の日本人はお邪魔だった?と悟る。因みにこの寺には見るべきものが沢山あったようだが、殆ど見ないで帰ることになった。例えば寺院内の柱には龍が施されており、これは皇帝だけに許されるしるしだと言われた。ここは皇帝が建てた寺院なのだろうか。

 

陳さんの車で成都市内に戻る。午前中は曇りや小雨だったが、帰り道で晴れてきたのは何とも恨めしいが、これも仕方がないことだ。夕日が車の窓に反射してまぶしい。日曜日の游がンで市内はやはり渋滞だ。ホテルの近くで軽く夕飯ということで、魚麺を食べる。これは今流行りらしく、大勢のお客が入っていた。何とか席を確保して、大型どんぶりの麺を頂く。スープが特にうまい。また完食してしまい、腹がくちる。

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