茶文化の聖地 四川を茶旅する2019(5)雅安茶廠と茶馬古道

3月22日(金)
雅安茶廠と茶馬古道

今日はホテルをチェックアウトしなくてよい。茶葉ホテルには2泊するので、それだけでも気が楽だ。茶葉枕も快適のようでよく眠れた。これからこの旅の最終目的地、雅安茶廠に向かう。ここが昔から蔵茶を作っている拠点だ。外側から見ると、トレードマークの『中国蔵茶』も見える。

 

メンバーにはあまり自覚はないと思うが、蔵茶もある意味で国家の戦略物資、湖南省安化のように、『国家機密だから見学できない』といわれそうな場所。しかも雅安といえば、チベットとの最前線という感覚もあり、ちょっと緊張する。『謝絶参観』の文字まで見える。だが我々の前に既に上海から来たという団体が、中に入っていく。

 

まずは蔵茶の製造法を説明した展示室へ。この茶作りが如何に力仕事であるかを示している。明代から作り始めたというこのお茶、歴代の茶葉が展示されている。1970年代製造の蔵茶も飾られているが、そこには『川』の文字が。これは湖北省趙李橋で作られるお茶と同じマークか。何だか色々と歴史的な資料があり、とても時間内で見て回れるものではない。

 

マニ車が設置されるなどチベット色も出ている。実際の製造工場も見学できるというので驚きながら中を見る。作られた茶葉は長く保存されるため、竹?にくるまれて積み上げられていく。この茶は如何にしてチベットまで運ばれたのか、実に興味深い。お茶を飲みながら説明を聞く。説明者は地元出身でアメリカ帰りの若者。広報担当だという。ネット販売に力を入れるという。これからの雅安茶廠はどんどん変わっていくかもしれない。

 

バスは高速道路を走っている。これからどこへ行くのだろうか。途中のサービスエリアでランチを取るという。皆がバスを降りて行った時、私はあることに気を取られており、一番後ろの席で、身をかがめていた。少し経ってバスを降りようとしてビックリ。何と既にバスは施錠され、外へ出ることが出来ない。閉じ込められてしまったのだ。メンバーは既にトイレなどに行ってしまっている。遠くに鉈先生の姿が見えたが、叫んだところで聞こえない。どうしたものかと悩んでいると、スマホで連絡することを思いつき、スンでのところで救出された。

 

まあ運転手もガイドも、まさか人が残っているとは思わなかっただろうが、こういうことは過去一度もないと言われると、私の方が悪いのだろうか。確かに出発前の乗車確認はするが、降車確認はしたことないかも。今後気を付けよう。ランチはビュッフェだったが、それほど食欲はなかった。それにしても高速道路のSAも少しずつ質が向上しているような気もする。

 

それから約1時間、ゆるゆると山道を登っていくと、とある街に着いた。既に標高は2000mに近く、小雨が降っていて肌寒い。そこから更に少し上がった村、そこに茶馬古道の起点、といわれる場所があった。ただこの村、村人の服装は昔のままなのに、住宅の建物がやけに新しく、車も停まっている。古道とマッチしていないように見えた。地震後の補助で再建したのだろうか。

 

その先の何もないところに、石が敷かれた道があり、そこが起点だという。どうも観光用として整備されたとしか思われないが、往時この辺りに茶葉を担いだ人足が行き来していたのだろう。茶馬古道は茶葉を馬が運んでいく場面もあるが、実はその多くは人が担いで行く。茶と馬は交易市場の交換商品という意味だとは意外と知られていない。人足のその苦労は想像できないほどであったろう。

 

今日も吹きっさらしの高地は、凍えるほどの寒さで、チベットの方を指して歩いて行く気量はない。防寒対策なしの我々は早々に撤退を余儀なくされる。帰りの道を見ると、政府の奨励で花椒がたくさん植えられており、今や名産品となっているという。また桃の花などがきれいに咲いており、特産品と観光地化を進めている様子も見えた。

 

街に戻って来た。今晩は食べ過ぎなので軽い物が良い、というのでホテルに帰る前に麺を食べることになった。昔某総書記もここで麺を食べたという食堂。地元の人が入れ代わり立ち代わりやってくる中、団体さんが席を占めてしまうのは申し訳ない。辛いのは避けたところ、なかなか美味しい麺が出てきて満足。

 

夜は茶葉ホテルの上の階にあるお茶部屋?に案内される。ここから見る夜景はきれいだ。このホテルの女性社長の招待。2004年のお茶会議に合わせて作られたという部屋は、まさにお茶だらけで、その香りに包まれていた。そこで美味しいお茶を飲みながら、蔵茶の歴史に思いをはせる。社長も2000年頃始まった西部大開発プロジェクトで浙江省からやって来た一人だという。これももう一つの歴史になりつつあるが、西部も常に進化を続けている。

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