先生と行く高知茶旅2017(4)ひろめ市場で

それから車で1時間、高知駅まで送ってもらった。Iさんは電車に乗って高知の別の場所へ向かった。Hさんは夕方のフライトで東京へ行くのでそれまで時間がある。2人でコインロッカーに荷物を預けて、高知の街を散策することにした。駅前には幕末に活躍した坂本龍馬、中岡慎太郎、武市半平太の像が青空に屹立している。

 

まずは高知城の方角へ歩いていく。道にはあんパンなどのキャラクターが飾られている。ここは生みの親、やなしたかしが育った場所でもある。彼の父親は高知の出で、東亜同文書院を卒業し、厦門で客死した人だったと知る。一番街というアーケードが見える。高知はサンゴが有名ということで、店がいくつかある。

 

Kさんが言っていたひろめ市場に出くわした。昼には少し早いが、ここでランチを探すことにした。一番並んでいたのは、やはりカツオのたたき。しかも並んでいるのは何と中国人ばかり。聞けばクルーズ船が今日入港したという。若い中国人が『日本語でテイクアウトって、なんていうんだ?』と聞いてきたので教えてあげたら、喜んでくれた。彼らは一生懸命日本語を使おうとしていた。中には英語でコミュニケーションを図ろうとしている者もいる。

 

3日前にたらふく食べたのにもかかわらず、カツオは美味しかった。食後お茶屋さんなどを見ていると、土佐碁石茶なども売られている。土佐の人は飲まなかった碁石茶、これもお土産用か。城の方に向かうと、骨董市みたいなものもあった。中に『両替』の文字を掲げているところが見える。完全な個人営業だが、確かに船でやってきた人々は一体どこで両替するのだろうか。合法的とは思えないが、ニーズはあるのだろう。

 

高知城に入る。山内一豊とその妻の像があった。そういえば大河ドラマで松嶋菜々子がやっていたな、と言ったら、Hさんから、違うでしょう、と言われてしまう。そう松嶋菜々子は『利家とまつ』のまつ、だった。千代は仲間由紀恵、一豊は上川隆也だったことを思い出すには数分掛かってしまった。私の記憶力の衰えは相当に深刻だった。

 

お城はとても立派に見えたが、階段を上って行くのは結構大変だった。結局上までは上がらず(入場料を払わずに)、途中から城下を眺めた。それでも十分に気持ちの良い風が吹き抜けた。中国人観光客も、全員が上に上がる訳でもなく、皆適当に散策していた。正直高知城の歴史に興味を持つ人は多くなく、遠目から写真を撮ればよい、という雰囲気だった。

 

もう一度ひろめ市場に戻ると、場内は完全に中国になっていた。12時に開店する餃子屋を目指して再訪したのだが、尋常ではない込み具合。さすがクルーズ船の威力は凄い。その中で餃子を買うのは日本人が多い。何とか餃子を買って、席を探したが見付からない。ちょうど荷物が置かれている場所があったので中国語で、『ここに座っても良いか』と聞くと、中年女性は『取り敢えず座って、席がないんでしょう』と譲ってくれた。その後両親などが戻ってきたが席は何とかやりくりする。

 

食後は地元の人が日本三大がっかり名所の1つと呼ぶ『はりまや橋』を見に行く。因みに日本三大がっかり名所とは『札幌の時計台と高知のはりまや橋が含まれることはほぼ意見の一致を見ている』ようだが、3つ目は意見が分かれるという(長崎オランダ坂とか、沖縄守礼門とか)。私は世界三大がっかりは聞いたことがあったが、日本版は聞いたこともなかった。

 

ひろめ市場から1㎞ぐらい歩いた交差点、そこに近づいても、確かに橋は見えない。交差点まで行ってちょっと横を向くと、小さな橋が架かっていた。なるほど札幌の時計台も、通り過ぎてしまうのががっかりなのだ。その橋は思ったよりきれいだったが、きっときれいになったのだろう。

 

元々この橋と言えば『土佐の高知の はりまや橋で 坊さんかんざし 買うを見た よさこい よさこい』というよさこい節で有名な訳だが、僅か20mの橋も、まさか自分が名所となるとは思っておらず、更にはがっかりと言われるとは夢にも思っていなかっただろう。お坊さんの恋の歌、というのは、決して褒められた話ではないのだから。

 

今ではその橋の架かっている奥に、きれいな人工水路があり、子供の遊び場もある。Hさんは橋のたもとのお菓子屋に入り、お土産の物色に入った。何だかおいしそうだったので、帰る時には私も買おうと思った。ちょうど時間となり、駅まで歩いて戻り、Hさんは空港バスに乗って去っていった。いよいよここから一人旅が始まった。

 

まずは今日泊まる宿を探さなければと思い、駅の周りを歩いてみた。コインロッカーから荷物を取り出してしまい失敗した。宿が決まったら取りに来ればよかったのだ。すぐ近くに安い宿が見付かった。ただチェックインは午後4時からと言われ、おまけに部屋は4階になり、Wi-Fiが繋がる保証はないと言われてしまう。

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