ベトナム縦断茶旅2017(5)変わっていくハノイ

タクシーを拾い、蔡君がハノイでお世話になっている家に向かった。広い道を通っていると、突然通行止めに遭い迂回した。そうか、今日はトランプ大統領が来るんだな。帰りに影響がないとよいのだが。その家がどこにあるかは分からなかったが、今はスマホで検索すればよく、タクシーの運転手に見せれば、訳なく到着する。路地を入っていき、小雨が降っていたがすぐに蔡君と合流できてよかった。新興住宅街を分け入っていく。

 

その家は団地の中にあった。自宅の向かいに友人が自由に出入りできる部屋があった。蔡君もそこに寝泊まりしているらしい。その脇に、ベランダを改造した実に心地よさそうな空間があり、そこへ招き入れられる。雨の音が何となくミュージックになる。そこに飼っているオームが音を合わせる。盆栽が置かれ、様々な壺が配置される。骨董屋さんにいるような気分になる。

 

ここで家主がお茶を淹れてくれ、同時にベトナム茶の歴史の話をしてくれた。彼はベトナム語しかできないと言い、こちらはベトナム語は出来ないので、蔡君が中国語に通訳してくれた。彼は非常に落ち着いた感じの文化人であり、日本にも興味を持っていた。自然農法の福岡正信について語り出したり、私が知らない青森のリンゴ農家の木村さんの話をしたりしている。現在のベトナムの金儲け第一主義に明らかに異を唱えている。ベトナム発展の陰で、こういう人々が出てきていることが、新鮮だった。ここに集まる人々はそういう意識を持っているのだろう。

 

お昼近くまでダラダラと話し込んでしまい、失礼した。ランチはここの近くのシンガポール料理屋に入る。蔡君の希望だ。新しい感じの店で、1-2階はカフェ、3階にレストランがあった。出てきた料理はシンガポール風チキンライスだったが、キムチがついていたり、海苔のスープが出てきたりと、どう見ても韓国風だった。恐らくはオーナーが韓国人で、ちょっと新鮮味を出すために、シンガポール風を名乗ったのではないか。

 

雨も上がったので、蔡君の知っている茶館へ向かう。散歩がてら30分ほど歩く。彼は昨日ベトナムの友人に連れて行ってもらったばかりらしいが、何と道に迷っている。ようやく見つけ出したその茶館は、何となくいい雰囲気の外観を持っていた。中に入ると低いテーブルが置かれ、皆床に腰掛けている。何だかとてもいい感じなのだが、お茶のメニューを見ると、ジャスミン系など、香り重視だった。

 

私はこういう場所でゆっくりとお茶を飲むことが出来なタイプだ。普通の緑茶を所望したが、何となく香りがついている。どう見てもここは若者がくつろぐ場所で、蔡君にはよいが私には不釣り合いだ。故意に古びた感じを出したりするのも今一つ馴染めない。早々に蔡君を残して失礼してしまった。

 

宿まではかなり遠いとは分っていたが、折角ハノイに来て、長距離の街歩きをしないのもなんだと思い、歩き始める。今では地図が無くてもスマホがあれば方向性は分かるので、それに沿って歩く。狭い路地を行くと、そこには寺があったので、入っていく。なかなか整った寺で趣があるが、ほぼ感じはないので寺の名前すらわからない。

 

大きな道路沿いを歩くと、車が多く、また暑いのでかなり疲れた。途中にロッテリアがあったので、入って休む。今では日本で見かけることが少ないロッテリアだが、ハノイではよく見掛ける。韓国系として幅を利かせているようだ。ここでもレモンジュースを頼む。ちょうど隙間の時間なのか、掃除が始まったのですぐに退散した。

 

結局1時間ほどかかって何とか宿に帰り着く。途中で見慣れた道を通る。ここは数年前に5泊ぐらいしたGHがある場所で、すぐ脇に線路があった。その先を行くと、初日夜中に蔡君に連れられてきたカフェがあり、ようやくその位置関係が分かって来た。やはり歩かないと何も分からない。

 

相当疲れたので、夜まで休む。夕飯は軽く済ませたいと思い、フォーの店を探したが、なかなか良い店に当たらない。数年前に『ハノイではフォーいえば牛肉だよ!チキンフォーなんて偽物さ』と言われた記憶が蘇り、牛肉を探したせいかもしれない。結局チキンになるが、地元民で満席の店であり、何とか席を確保した。そういう場所はやはり美味しい。

 

実は今朝、洗濯物をホテルに出しておいた。夕方6時にできると聞いていたが、6時に行くと『8時だ』という。まあ仕方ないかと夕飯の後再度取りに行くと、今度は言われていたより料金が高い。最初にここの宿に決めた時のおじさんは、実はかなりアバウトな人で、夜勤のにいちゃんも困っていた。大したことではないのだが、やはりちょっと気分を害する。

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