雲南から江蘇、湖北の茶旅2017(12)観光茶園プロジェクト

あれだけ並んでいたのに、明日のチケットが難なく買えるというのもなんだか不思議な感じだ。そんな思いでまたバスに乗ろうと駅前のターミナルへ向かう。ちょうどバスに乗り込んだところ、近くで女性の叫び声が聞こえてきた。どうやら子供が癲癇でも起こしたようで、揺り動かしながら泣き叫んでいる。中国では病人を見ても助けないという風潮があるので、どうなることかとみていると、あっという間に周囲に人が集まり、城管と呼ばれる人々が車を出して病院に連れて行った。この辺の対応は素早くてホッと胸をなで下ろした。

 

ホテル近くでバスを降り、昼ご飯をどうするか考えていた。その辺を歩き回ったが、食べたい物もなく、近所のパン屋で菓子パンなどを買ってみることにした。何だか長い間パンも食べていないように思えたのだ。こんな田舎街で、そこそこの味のパンが作られているのは驚きだ。急速にライフスタイルが変わりつつある証拠ではないか。部屋に持ち帰って食べると意外といける。

 

白楊坪の茶畑へ
ホテルで待っていると、ようやく仕事が終わったと微信に連絡があり、蒋さんが車でやってきて、拾ってくれた。運転は彼の部下の若者が行ったが、山道には慣れておらず、また最近入ったのか、工場へ向かう道を知らなかった。蒋さんは車の中でも、殆どスマホを操作し、また商売の電話をかけている。企業経営者というのは大変なものだ。

 

約1時間かかって山の上の茶工場に到着した。いずれの方向を走ったのかもわからず、辛うじてここが白楊坪という場所であることを知る。参観者用の建物があり、そこでお茶を飲ませてもらう。晴れているのでとても気持ちがよく、空気も澄んでいる。だが肝心の蒋さんに話を聞こうと思っても、外に出て行ってしまう。仕方なく着いていくと、そこは工事現場。蒋さんは親方と何やら話し込んでおり、あれこれと指示を出している

 

横の看板を見ると2年をかけて、総額8000万人民元(日本円約13億円)の観光茶園プロジェクトをここで行っていたのだと分かる。元々の茶工場や茶園を生かして、新たに文化館やレストラン、宿泊施設などを用意するらしい。一体どれだけの人が来ることを見込んでいるのだろうか。当然政府の支援の下で行われているのだろうと思っていたが、『完全なプライベート』と聞いて、少し驚く。中国で今流行りの観光茶園だが、投資は回収できるのだろうか、ちょっと心配になる。

 

蒋さんが茶園を案内してくれた。景色は抜群に良い。緩やかな斜面に見慣れぬ品種が植わっている。農薬は使っていないという。茶摘みをしている地元民を見かけるが、何となくのどかな雰囲気だ。実は蒋さん自身も土家族という少数民族で、先日行った伍家台の途中の村の出身だという。この付近も少数民族が多く住み、貧困地区となっているので、『起業して仕事を与える』という地元貢献は重要だという。それにしても大型プロジェクトを抱えていては、それは忙しいだろう。よくぞその中で私の相手をしてくれたと感謝する。

 

工場には茶摘みを終えた農民が続々と集まって来た。今日の収穫を引き渡すのだ。どこの茶畑でもこの計量の空間は緊張感がある。受け取った生葉はすぐに萎凋槽に入れられるが、『萎凋している訳ではない』という。いずれにしても数時間置いて深夜に製茶作業は始まるというので、実際の工程を見ることは出来なかった。また工場内には日本製の機械もあるようだったが、見ることはなかった。

 

ここで地元料理の夕飯を頂き、慌ただしく下山した。既に周囲は暗くなっており、山道は少し危険に感じられる。ホテルまで車で送ってもらい、蒋さんとは別れた。彼も現在の自宅は市内にあるとのことだったが、これからまだ仕事しそうな雰囲気だった。私は昨日の劉さんの店に行き、お茶を買おうと思っていたがスタミナ切れ、ホテルでぐったりしていた。

 

4月13日(木)
8.漢口
平さんに挨拶

翌朝も快晴だった。9時前にホテルをチェックアウトして、昨日と同じバスに乗り、駅に向かった。既に切符が手元にあるので余裕で乗車する。そして見慣れた?車窓の景色を眺め、途中から速度が増していくのを体感し、約4時間をかけて、漢口に到着した。この駅もすでに何度も使っており、見慣れているので、迷うことなくすぐに地下鉄に乗り、いつものホテルを目指す。

 

このホテルには大学の後輩Kさんが居るので、まずは一階の彼の店(日本料理屋)を覗く。ちょうどいたので、そこで彼の話を聞く。子供の教育のことを考えて十数年ぶりに日本に復帰するらしい。確かに彼と初めて会ったのは2003年頃の香港だったから、かなりの月日が流れていた。話の中に、日本での就職活動の不思議さや、外国人が巻き込まれるであろう、住む地域の様々な課題、学校など子供を取り巻く環境など、今の日本の現状がよく見えてくるような内容ばかりだった。これではかなり不安だろうと思ってしまう。

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