雲南から江蘇、湖北の茶旅2017(10)間違って行ってしまった伍家台

7.恩施
間違って山の中へ

夕方5時半にようやく列車を降りた。恩施駅、外へ出ると、そこだけ新しい街だった。小雨が降る中、予約されていた車を探すと、女性の運転手が出てきた。今日は以前武漢で出会った茶荘オーナーの紹介で恩施の茶畑に向かう。既に連絡は取れており、車に乗ればそこまで運んでくれるという。だが、その料金は200元と結構高かった。

 

車は街中を通り抜けると、何と高速道路に乗った。どこまで行くんだろうか。高鉄もそうだが、高速道路も最近作られたらしい。真っすぐ行けば重慶まで遠くないという。途中を見ると土家族自治区があり、茶も作られているようだった。運転手の女性は『今月は毎日のように茶業者を車で運んでいる』という。高速を降りて山道に入り、暗くなる中、かなりの山中で車が停まった。約1時間半もかかった。そこには茶工場があった。

 

連絡しておいた戴さんが待っていてくれた。彼は車を出してきてすぐに出掛けた。既に夜も7時を過ぎており、夕飯は工場にはないらしい。それでご飯を食べに出た。田舎の夜は確かに何もない。連れていかれたところはいわゆる農家菜。しかも山の中の本格的な農家だった。料理ができるまで、寒いからと言って、囲炉裏の傍で待った。お祖母さんと孫娘があたっていた。料理は結構辛くて体の芯から温まった。何となく日本昔話を思い出す。

 

それからここ伍家台にある博物館に行った。こんな小雨の夜、お客は誰もいないが、空いてはいた。中には伍家台の緑茶の歴史などがかなり詳しく展示されていた。ここは緑茶の一大生産地なのだと分かった。だがどこを探しても私が今回ここに来た目的である恩施玉露に関する記述は見付からなかった。戴さんにそのことを聞くと『えー、ここでは玉露は作っていないよ』というではないか。

 

一瞬天を仰いだ。一体何のために高鉄に9時間も乗り、タクシーに1時間半も乗って、はるばるこんなところまでやって来たのか。確かに私は武漢の戴さん(今いる戴さんの妹)に『恩施の緑茶を見たい』と言ったのだが、当然その緑茶とは玉露のことだと思い込んでいたのだ。驚くというより、呆れてしまった。ボー然となる。

 

すると戴さんが『玉露を作っているのはここではなくて別の場所だよ。かなり離れているから一度恩施の街まで戻る必要がある。しかも紹介がなければ探すのは難しいだろう』という。そういえば戴さんの妹は先日その玉露の生産現場に皆で行ったと聞いている。『ああ、そこは武漢の平さんの紹介だよ』と聞き、平さんって、前回武漢であった人だと思い出し、微信で連絡を取った。すぐに返事が来て、明日訪ねられるようにセットしてくれた。これぞ、茶旅の醍醐味である。

 

博物館と言っても、それは土産物売り場に併設されている。海抜800mの自然環境に恵まれた土地、観光資源として売り出している。その横の建物は茶工場になっていた。ちょっと入ってみると、茶葉が置かれていた。雨でも摘んだらしい。葉は小さい。工場には大型の機会が揃っていたが、釜炒りの道具もあり、ここで作られる緑茶はやはり蒸し製ではないと分かる。その夜は茶工場のゲストルームに泊めてもらう。カエルの鳴き声を聞きながら布団に包まって寝る。

 

4月11日(火)
玉露を求めて

翌朝は早く目覚めたがかなり涼しかった。相変わらず小雨も降っている。どうにも動けない状況だった。それでも雨が止んだ瞬間をとらえて、散歩に出た。何とも風情のある田舎の道で、所々に家があり、斜面には茶畑も少し見えた。茶工場では朝の作業をする従業員がいたが、勿論生葉は未だ運び込まれておらず、閑散としていた。

 

戴さんたち若者は、ここに泊まり込み、茶作りの様子を見ている。出来た茶葉は武漢にもっていって売っているようだ。彼らはゆっくり起きてきて、朝ご飯の麺を食べる。まあ、折角来たんだからゆっくりして行けば、と工場の人にも言われたが、どうにも玉露の方に頭が行ってしまい、おまけに雨で茶作りもなさそうだったので、早々に退散することに決めた。

 

戴さんの車で街まで行き、そこからミニバスに乗った。これは意外と速く、料金も35元で戻れた。よくわからないがこれから劉さんという女性を訪ねることになっている。しかし彼女の店がどこにあるのかも知らないのだ。取り敢えず硒都茶城と言われたのでそこで降りた。

 

茶城の入り口付近に『恩施玉露展示体験館』と書かれた店があった。そこへ入っていくと、やはり劉さんの店だった。ただ彼女はまだ来ていないので、そこでお茶を飲ませてもらう。何となくほっとするような柔らかい緑茶で、茶葉もきれいだった。ちょっと休んでいるとかなり劉さんがやってきて、『取り敢えずこれからどうするか、ご飯を食べながら考えましょう』という。彼女は26歳だという。

 

いずれにしても今晩はこの辺に泊まるのがよいというので、まずはホテルに連れて行ってもらい、それからそのホテル内のイタリアン?で食事した。さすが若い女性だ。行くところが違う。『恩施もこの数年でかなり発展した』とパスタを食べながら説明してくれる。突然山の中から帰還して、パスタとはかなりの飛躍があるが面白い。

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