中国鉄道縦断の旅2015(11)万里茶路から羊肉に行き着く

万里茶路から羊肉に行き着く

Nカメラマンは旅を続けながら、各地の珍しい食べ物を探していた。私が前回呼和浩特で食べた稍麦を紹介したところ、ぜひ食べたいということになり、駅前の食堂を探す。稍麦、焼麦とも書くが、これはいわゆるシューマイの原型だと考えられる。形は大きいが、中身はシューマイの具と同じ。但しここでは羊肉が使われることが多い。これが後に広東まで渡って、あの小型のシューマイになったのだろう。

 

蒸籠、26元前後。ただこの食堂はチェーン店であり、漢族が経営しているらしく、店はきれいで豚肉もあった。やはりこういう料理は、モンゴル族の店で食べた方が味もよかったはずだ。風情もなく、漢族の客で溢れかえっているので、うるさくて仕方がない。Nさんも残念そうだ。

 

食後は万里茶路研究の鄧九剛先生を訪ねるつもりだったが、北京に行っており不在だと事前に分っていた。それでも先生から展覧館には行け、と言われたので、タクシーに乗って行ってみた。だが館は閉まっており、人はいない。知らされていた番号に電話すると林さんがやってきて中に入れてくれた。最近は誰も使っていないのか、非常に館内は冷えていた。取り敢えず一通り案内してくれたが、写真の展示を見るぐらいで特に資料もなく、収穫はなかった。

 

館の裏が清代のラクダの集積地だったというので、外へ出てみた。麻花板と書かれた石碑があった。この付近は既に不動産開発が行われており、石碑は後から建てられたものだった。そういえば、この道路の反対側は確か競馬場だったはず。モンゴルの歴史的なものと何か関係はあるのだろうか。

 

林さんが『先生から劉さんを紹介するように言われています。今から劉さんのところへお送りします』というので、よくわからなかったが、道路脇に立っていた。林さんも一緒に待っているので、誰かが車で迎えに来て来るのだと思っていたら、立派な車が到着し、ネクタイをした運転手が恭しく降りて来た。この時初めて私は微信でタクシーを呼べることを知った。これなら小さな会社は車を持つ必要もなく、運転手もいらない。雨でも濡れて待つ必要すらない。何とも画期的だ。

 

しかも行先は既に入力されており、料金も微信から落ちるので、我々は払うことさえできなかった。何だか途轍もないシステムを見た思いだった。日本にこんなシステムはない。既にGDPだけでなく、ある部分で中国は完全に日本を追い越してしまった。この車だと例え荷物を忘れても出てくる確率が高い。今の中国人にとって極めて有用なサービスだった。

 

劉さんの店は意外と遠かったがいくらかかったのかもわからない。とても優美な茶馬驛駅という名前だった。入った瞬間に牛の皮にくるまれ、台車に載せられた昔の茶が目に入った。これが万里茶路を馬やラクダで運ばれた茶葉だったのだ。写真も豊富に展示されており、我々にはとても有益な場所だった。

 

更には日本、イギリス 清代 宋代 モンゴルなど6つの違った空間で茶を体験できるスペースまであった。日本の茶道も出来るようだ。こんな教室が呼和浩特にあるとは驚きだ。勿論政府の支援もあり、政府イベントなども手掛けているという。同時に茶芸教室、茶葉販売の販売も行っており、お茶に関心のある人々が出入りしていた。因みに劉さんは大学院まで出た才媛で、地元の優良企業、蒙乳で働いていたらしい。あまりの激務に会社を辞め、今の仕事を始めたという。

 

万里茶路の研究も行っているようで、中国は勿論、ロシアやモンゴルなどの研究員とも連携しているという。試しに万里茶路の詳しいロシアの研究員はいるかと聞いたところ、何と我々がこれから行く、ロシアとモンゴルの境、キャフタの博物館の研究員を知っているという。是非にと紹介を頼んだ。今回の旅でも中国は何とかなるが、ロシアはお手上げだった。この情報は実に貴重であり、その後劉さんを煩わせながらも、ついには目的に辿り着くことになる。

 

劉さんが夕飯を食べようと誘ってくれたので、モンゴル火鍋へ向かう。ここで頂いた羊肉は本当に美味かった。彼女も『モンゴルまで来て羊を食べないなんて』と言って勧めてくれた。ウマシ!白酒39度も登場し、S氏とNさんはいつもと勝手が違うといいながら、乾杯を重ねていた。2人は結構酔っていたので、タクシーで帰る。さすがに夜は極寒だったが、火鍋で体が温まっていてあまり感じなかった。だから皆、羊を食べ、火鍋を食べるんだということを体感できた。

 

1225日(金)
大盛魅へ

 

翌朝はゆっくり起きた。このホテルは朝食付きとのことだったが、隣に併設された永和というチェーン店で食べる仕組みだった。一人10元の券を渡され、好きなものを頼む。私はピータン粥と餅で合計9元だった。元々あったであろう食堂は廃止されていた。何となく味気ないが、これが今の中国の現実だと思う。ホテルも商売が難しくなっている。駅前だからと立地に頼るのは難しい。高速鉄道の駅は皆別にできているのだから。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です