万里茶路を行く~北京から武漢まで(7)劉先生と出会う

あまりに暑いので、川に出たくなった。聞いてみると、漢口から武昌に渡るフェリーがあるという。江関楼からほど近いところに乗り場があり、頻繁にフェリーが出ていた。1.5元、まあ香港で言うスターフェリーのようなものだが、バイク乗りが乗り込むなど、観光用というより地元民の足だ。車は橋があるのでそちらを通るが、バイクや徒歩はこちらの方が速いのかもしれない。乗船時間も15分ぐらいだろうか。いい風が吹いてきた。かなり広々とした空間に、ビルが点在している。

 

武昌側で降りたが、付近に地下鉄がない。仕方なくタクシーを拾い、また漢口へ戻る。今日は昼にWさんとの待ち合わせがあったので、急いでそちらへ向かう。そこはシンガポール系のデベロッパーが開発したショッピングモール。昔は上海あたりで沢山の開発を行っていたこの業者、今や武漢あたりが主戦場だろうか。中国の広がりを感じる。そのモールの中にあるレストランに入る。

 

Wさんは彼女が学生の時、寺子屋に参加してくれた優秀なメンバーでその後大手企業に就職、1年限定で、武漢での事業立ち上げに来ていた。中国語の問題はないので、スムーズに業務しているかと思ったが、『中国の仕事の仕方があまりにも非効率。それを若い子にどうやって伝え、やらせるかが難しい』らしい。

 

実は今中国で業務している日系企業の大きな問題の1つは、現地に派遣した駐在員が現地社員をうまく使えない、など。それはある意味で当然。日本のような会社組織で、管理職経験もない人が海外に送られ、部下を持つというのはなかなか厳しい。そんな中ではWさんは問題点を的確にとらえられ、改善策を示し、向上に努めているので、かなりの適応力があると言える。

 

劉先生と会う

一旦ホテルに戻り、午後は昨日紹介された劉先生に会いに行く。どこへ行けばよいのかと聞けば『ホテルの前からバスに乗り、終点まで来て』と言われる。その番号のバスに乗ると、大きな道をかなり走り、更には橋を渡って武昌へ。そして1時間近くかかって、ついに終点まで来た。

 

バスを降りると、そこで犬を連れた人がいた。劉先生だった。もう一人、万さんという男性が車を運転してくれ、先生の家に行った。先生の家は、研究者らしく、沢山の本で溢れていた。その中には当然ながら武漢や湖北省の歴史関連の物が多く見られ、そして万里茶路関連の本も目に付いた。ここで時間をもらって読んでみたいと思うものがいくつもあった。中でも2014年に武漢からロシアまで万里茶路を旅した記録が、写真入りで詳細に書かれた本があり、ぜひ欲しかった。後で万さんが自分の分をわざわざくれたのは有り難かった。万さんはこの旅のメンバーだったのだ。

 

また劉先生は呼和浩特の鄧先生とも仲良しだった。やはり地道な研究者という共通項があるからだろう。そして万里茶路関係の本を2冊出しており、それを頂戴した。更には、漢口の関連施設を案内してあげようという、夢のような提案まで頂いた。確かに自分だけで歩いてはとても探せない、専門家のみが知る場所があるという。後日是非にとお願いした。

 

その内に武漢大学の劉教授がやって来た。万里茶路の重要性を語ったうえで、『日本と何か連携できないか』と言ってきた。8月に万里茶路サミットを宜昌で開くので参加しないかとも誘われた。劉教授はまだ50歳ぐらいで血気盛ん。まずは実績作り、政府の政策を履行することが学内での評価につながるという感じ。一方劉先生は市井の研究者で、60代。私は劉先生に色々と教わることにした。

 

夕飯を食べに行こうということになる。そこへお知り合いのMさんから連絡があったので、彼も誘った。ただ彼は携帯シムを持っていないので、移動中は連絡ができない。電話もつながらない。何とか、地下鉄駅を伝え、そこで待っていると、ちゃんとやって来たのには驚いた。これもご縁というものだろう。

 

ご飯の前に家の近くで明日の切符を買った。これにより駅で並ばなくて済むのは有り難い。先生の家の近所はまだ古き良き武昌が残っている。食事はMさんも入り、劉教授の教え子も参加して、楽しく行われた。これも素晴らしいご縁、感謝だ。帰りは万さんが車で途中まで送ってくれ、昼間のフェリーを逆に乗って帰った。夜はナイトクルーズで5元。夜景は予想以上に素晴らしく、Mさんも驚いていた。もう少し武漢の漢口を見直すべきだろう。

 

624日(金)
宜都へ

 

本日は湖北省の紅茶の産地、宜都を訪ねることになっていた。福州の魏さんに紹介され、現地に連絡を取ると、『宜昌まで動車で来て、そこからバスに乗り換えて』と指示が出た。昨日動車の切符は買ってあったので、まずは地下鉄で漢口駅まで行く。初めてなので早めに出て、早目に着く。漢口駅は古い外観でなかなか良い。大勢の人が列車を待っており、大混雑。昨日切符を買ったのは大正解だった。

 

動車はスムーズに発車し、満員の乗客を乗せて、重慶方面に向かった。今や中国では高速鉄道網が張り巡らされ、どこへでも行けるような気になっている。1980年代の松下先生の旅を読んでみると、武漢から宜都までバスで8時間以上かかっているらしい。現在は宜昌まで2時間、そこから隣のバスターミナルへ行き、頻繁に出ているバスに乗り1時間で宜都に着いてしまう。何とも有り難いことだが、雨が降っているのが悲しい。

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