万里茶路を行く~北京から武漢まで(2)外国人に不便なった中国

616日(木)
北京の街を歩く

 

翌朝はゆっくり起きる。まずは北京から張家口までの列車の切符を買うことにする。昨今中国人は基本的にネットで予約をして、身分証を使って機械で切符を取り出せるのだが、外国人は例え予約はできても、駅の窓口でパスポートを提示して受け取らなければならないため、長蛇の列の後ろに着くことになる。そうなるといつ列車に乗れるかも読めず、実に不便である。

 

そこで街の切符売り場で購入するのが早い。だがネット予約が増えた現在、街からのこの切符売り場がどんどん消えている。今回も何とか探して、買うことができた。僅か5元の手数料で、切符が手に入るのだから、駅で並ぶより、相当にマシだ。外国人にとって中国旅行はどんどん不便になっている。それは以前のように、外貨獲得のため、外国人に配慮する必要がなくなったからだろうか。

 

地下鉄10号線から5号線に乗り換えて、東単まで出てきた。今日は旧知のTさんとSさんとランチをすることになっていた。東方広場、1999年の建国50周年を前に香港の長江グループに開発が任された物件である。何しろ東単から北京飯店の横、王府井まで繋がっているのだから、それはそれは広い敷地。今回指定されたレストランを探すのも一苦労だ。

 

Tさんとのお付き合いはもう30年近くになる。Sさんとは前回の北京駐在時に一緒になり、お世話になった。共に今は別の会社の駐在員になって活躍している。北京もどんどん人が変わり、知る人も減ってきた。私が最後の駐在から戻ってもう6年が過ぎていた。時は流れている。

 

午後は東単からフラフラ散歩した。晴れているがそれほど暑くもない。建国門は懐かしい場所。だが昔よく行った火鍋屋は取り壊され、友誼商店も閉じられている。日本大使館も移転し、日本人も減っている感じがする。更に行くと携帯ショップがあったので、聞いてみた。すると『毎月5元で携帯番号が維持できる』という聯通のカードを紹介された。

 

ただカードを購入するのに150元ほどかかるが、これなら1年間お金を払わなくても、60元で済むから、今回のように電話が通じないという事態は避けられそうだ。本当は中国移動の方がより電波が強くてよいのだが、便利なものほど高いのだ。昨日30元を入れた移動のカードをあっさり外して、今日から聯通になった。

 

北京郊外、北東の方角へ向かう。これも不思議なご縁だが、3月末に北海道の室蘭に行った時に紹介されたAさんと会うためだった。Aさんは大手企業の駐在員として、1980年頃から北京に在住し、奥さんも中国人。中国の永住権を持つ稀な日本人だった。北京の地下鉄も各方向に延び、今やどれがどれやら分らない。14号線、15号線などを乗り継いでいく。

 

Aさんは北京の自宅のほか、お母様の介護で故郷の室蘭にいることも多いらしい。以前に北京でも顔を合わせているのかもしれないが、まさか室蘭でお会いするとはまさにご縁だ。私が明日張家口に行くというと、『実はそこに別荘がある』ともいう。驚くばかりのご縁である。今は孫の世話が大変だ、と笑う。

 

夕方、市内に戻る。東直門の駅からすぐのところにできたレストランへ行く。いつものように後輩のKさんのアレンジだ。何だかレトロな雰囲気が売りのこのお店、結構流行っているのは、やはり美味しいからだろう。今や北京も見た目と味、の両方が揃わないと生き残れない。今回も懐かしいメンバーが集まり、昔話と今の北京の現状が語られる。空気も悪いし、物価も高いし、色々と締め付けもあるしと、いい話はあまりない。

 

 

617日(金)
北京西駅

朝起きて荷物をまとめ、地下鉄中関村駅まで荷物を引いていく。ここまで来ると後は4号線で西駅まで行ける。西駅から列車に乗るのは初めてだったので、少し早めに出たが、相当に早く着いてしまう。仕方なく、駅にある吉野家で朝ご飯を食べる。牛と鶏が両方あるバージョンだが、何となく塩辛い気がした。これで30元以上するのだから、物価は決して安くない。

 

列車には相変わらず大勢の人が乗り込んでいた。どこまで行くのだろうか。3月にすでにこの路線に乗り、ウランバートルまで行ったので、道中の風景にはあまり興味が沸かない。硬臥にも慣れた。隣のおばさんが吉野家で弁当をテイクアウトしてきた方が気になってしまう。今回も万里の長城は見えなかった。

 

2. 張家口
宿に泊まれない

 

張家口南駅に着いたのは、午後2時過ぎだった。僅か4時間にも満たない旅では疲れもない。これまでの数十時間単位の移動からするとほんの一瞬のように感じられる。張家口も天気が良い。爽やかな風が吹いている。まずは駅前で今日の宿を探した。ちょうどきれいそうなところがあり、部屋も確認して、さてチェックインしようとパスポートを出すと、それまで愛想のよかったおばさんの顔が急に曇る。

 

 

『パスポートはダメなのよ。身分証がないと』と言われる。じゃあ、この辺で泊まれるところはないかと聞くと、数分先のホテルはOKだと思う、というのでそこまで行ってみたが、ここも全く同じだった。既に4月に福州でも似たような状況に陥っており、何となく事情は分かったが、泊まれないのは困ると、一生懸命交渉した。だがオーナーが出てきて『とにかく勘弁してくれ。今はうるさいんだよ』と逆に懇願される。

 

そして外国人が正規に泊まれるホテルは張家口には4つしかないと言い、この付近にはないから、タクシーで行けという。確かに南駅は比較的新しいので、市内に行かないとないのだろう。タクシーの運転手にそれを告げると彼も『それはおかしい』と言って、途中のホテルで聞いてみてくれたが、やはり答えはノーだった。

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