福建・広東 大茶旅2016(1)福州でレジェンドに会いに行く

【福建・広東 大茶旅2016】 2016102-19

 

台湾経由で福州に入る。だが今回の目的地は厦門、いや安渓。そしてさらに南下して広州。このような日程のなったのは、カメラマンTさんの希望。彼が安渓に取材に行くというので付いていくことにした。なぜ今、安渓なのか、何か新しい発見があるのだろうか。また茶葉の道を万里茶路以外でも追い掛けていく企画、福建と広東が輸出拠点だから、という意味で広州へも行ってみる。

 

102日(月)
1. 福州
突然レジェンドのもとへ

福州空港に着くと、空港バスに乗り込む。以前乗った気がしたので、知っているつもりで何も調べなかったが、何本もバスが出ていて慌てる。取り敢えず一番早く出る便に乗り込む。どうせ市内へ行けばタクシーを拾わざるを得ない。バス代25元。市内まで約1時間かかり、到着。

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バスを降りてタクシーを拾い、取り敢えず魏さんの紅茶屋へ向かう。店に入っていくと、魏さんが数人でお茶を飲んでいたが、私を見てかなり驚いた顔をした。『明日じゃなかったの?』という。完全に私の到着を1日間違えていたらしい。よかった、彼がここにいて。すぐに今晩の宿を探すべく、魏さんの親戚のネイさんが動いてくれた。向かいの如家は前回高かったが、ネイさんの交渉のお陰で安く泊まれた。感謝。

 

さらに驚いたのは、『ちょうど今から張老師のところへ行くんだ』と言われたこと。張老師とは中国茶業界の泰斗、張天福氏に他ならない。それは何をおいてもお供する。張天福氏には4年前に一度、お会いしたことがある。やはり魏さんに連れて行ってもらった。103歳と言われたが、非常にお元気で、電話で茶作りの指示を出していたのが印象的だった。その時は福州の茶葉輸出の歴史を調べており、『1860年代の福州の様子』について聞いてみたが、『生まれてないから分からない』と言われてしまった。そして『茶葉人生』という分厚い自叙伝を頂戴し、詳しいことはその中を読んで、笑顔で言われたのをよく覚えている。

 

現在は既に満107歳。自宅を訪ねると、張夫人が迎えてくれた。『以前一度来たわね』と言ってくれる。張老師は車いすに乗っていた。先ほど食事をして、魏さんを待っていたようだ。少し眠そうだったが、彼が近づくと、目を見開く。このお歳になると、興味にあるものにだけ、目が反応するということかもしれない。

 

今回は女性も3人、同行していた。皆さんお茶関係者だが、レジェンドの張老師と写真を撮りたいと殺到する。これはまた中国らしい。日本ならもう少し配慮するだろうが、こちらでは遠慮はない。老師は疲れてしまっただろうか。そこへ男性が入ってくる。先ほど台北の茶業博覧会から戻ったと報告している。台湾の皆さんも老師の動向には関心が高いようだ。

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今日魏さんはなぜここを訪れたのか。私は聞いていなかったが、何と張老師も関係した金元泰という紅茶が金賞を受賞したという。一体どこで金賞を取ったのかと聞くと、『静岡の緑茶コンテスト』というではないか。それは今月末に静岡で3年に一度開催される世界お茶祭りで表彰式があるイベントだった。私もこのお茶祭りに行き、セミナーをすることになっている。ここで日本との繋がりが出てくるとは思いもよらないことだった。老師も日本人がそのために来たのかと思ったかもしれない。

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魏さんが受賞したお茶の缶を見せると、それまではあまり動きのなかった張老師が自ら缶を手に取り、じっと見ている。これは偶然ではあるまい。お茶、といえば反応する、まさに茶葉人生なのだ。張老師に頂いたご本、余りの分厚さにそれほど読めていなかったのだが、これを機に、読んでみよう。

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お茶屋さん

帰りに茶葉市場に寄る。海峡茶都は昨年、来たことがある。その時はこの市場のオーナー会社、満堂香の総経理にジャスミン茶について聞いた。今回は岩茶のお店に行く。上海から来たお茶屋の女性のために、魏さんが案内したのだ。彼女はこれから厦門へ行くのだが、最後の最後まで時間を有効に使い、色々と勉強に余念がない。

 

紅茶だけでは消費者を満足させることができない。福建省では岩茶も重要なアイテムであり、今回は白茶がお気に入りのようだ。茶葉を売るのが難しくなっている時代、経営者は様々な工夫を凝らす必要がある。困難な時代を数多く過ごしてきた張老師は、今の時代をどう見ているのだろうか。

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車はあるビルの前に停まる。魏さんが私を連れて上のレストランへ行く。そこには魏さんのお母さん、弟さん2人とその家族が待っていた。弟さんは香港在住で、たまたま里帰りしており、家族で食事をするところだった。こんなところにお邪魔して申し訳ない。まあ、主役は次男の幼い娘、個室で動き回る。何とも可愛らしい。

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驚いたのは、魏さんが兄弟とは広東語を話し、お母さんとは福清語、弟さんの奥さんとは普通話を話していたことだった。確かに魏さんは華僑であり、改革開放でお父さんがこちらに戻ってきたと聞く。香港育ちの兄弟は幼いころから広東語を使っていたらしい。お母さんはどこの人なのだろうか。これだけの言語を自由に操る、とはさすが華僑。因みに魏さんは香港在住の奥さんとは普通話を話すという。何とも複雑だ。

 

食事が終わると、紅茶屋に戻る。店には何組もお客さんがいた。魏さんは少し風邪気味だというので、早目に引き上げたが、実は政府の役人が来るというので、それを躱していた。経営者は本当に大変だ。私も宿へ戻ろうかと思ったが、半年前に政和、河口に一緒に行った林さんなどがやってきて、面倒を見てくれる。

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