茶旅の原点 福建2016(16)厦門のITパークで

7.    厦門
なぜかITパークへ

厦門では本来することがなかったのだが、またS氏から指令が来た。『厦門でお茶のサンプルを受け取ってきてほしい』と。まあ暇なので引き受けたのだが、その相手は茶荘や茶市場にいる人間ではなかった。どのようにして会うのがよいのかよく変わらず、『あなたの近くに泊まりたいが、どこか良いところはないか』と聞いてみると、ある場所を予約してくれた。だがそこはITパーク内だった。

 

行き方は分らないので、厦門北駅からタクシーに乗る。厦門北駅は厦門空港よりも遠い。結構な時間をかけて車は目指すITパークに入った。その中にあるホテルだと思い込んでいた私に、運転手が『住所はここだよ』と言ったのは、単なるオフィスビルだった。こんな所のはずはない、と思ったが、運転手はさっさと私を置いて行ってしまった。こういう工業区などは分り難いのでタクシーは嫌がるのが普通だ。

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1階に喫茶店があったので聞いてみると、何と正面入り口から入れ、という。そこを入ると受付があり、守衛さんが応対した。予約したというと、何やら紙を取り出す。1日泊まるための契約書だというから驚いた。やはりここはホテルライセンスを持っていない。そこで警察との間で取り決めたのが、日ごとに部屋を貸す賃貸契約という手法だったと思われる。恐らくはこのITパークに出張で来る人及び徹夜残業などの人が寝るために作られた宿、必要悪だった。こんなところに潜り込めるとは面白い。

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部屋は15階にあり、いわゆるマンションの一室という感じ。ベランダからの眺めはなかなか良い。ホテルより快適ではないかと思われる。ただタオルがない。歯ブラシなどもない、と思っていたら、ビニールに1セット入った物があったので開けてみる。あとで有料だ、と言われ、10元取られた。因みにタオルも受付に言えば貸してくれたらしいが、その仕組みはまるで説明されないから分からなかった。

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S氏の知り合いである陳さんが部屋まで来てくれた。彼はこのビルで働いているという。動画関係の仕事らしい。日本のアニメが大好きで日本語も覚えたという。彼は私が依頼されたサンプル茶を渡したが、『代金は300元です』というのでまた驚いてしまった。サンプル茶は当然無料だと思っていたのだが、確かにサンプルにしては量が多い。仕方なくS氏に微信で確認すると『払ってくれ』というではないか。正直『どんなお茶をいくらで、どれだけ、持ってきてほしい』とS氏は頼むべきだと思う。そうでなければ外国で、このようなことがあった場合、対処は出来ない。私に持ち合わせがあったから払えたが、もし現金がなければ受け取ることも出来なかったではないか。

 

陳さんは仕事があるので帰って行った。そして私は腹が減った。昼ご飯を食べていなかったのだ。だが周囲にある食堂で食べる気にもなれず、バナナを買って食べて終わりにした。ITパーク内を少し散策したが、広々とした空間で気持ちはよかった。でもどこも同じように見えるので散歩にはあまり向かない。部屋に帰ってPCに向かう。5時を過ぎるとさっきの陳さんから電話があり、食事に行こうと誘ってくれた。

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彼の車で市内へ。やはりそこそこ離れていた。まだ明るい中、レストランが出している外のテーブルに腰掛け、お茶を飲みながら、食べ物を食べる。鍋物から炒め物まで、とても二人では食べ切れないほど頼んでいる。やはり中国人とは食べる量が違うのだ。彼は武夷山の出身であり、厦門とはかなり文化の違うところの出であった。だからお茶に詳しいとも言える。

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食後は彼の知っているお茶屋さんへ行く。この辺は厦門の高級住宅地らしく、地価も相当に高い。こんなところで茶荘を経営するのは大変だろうと思っていると、オーナーの女性が『武夷山に帰ろうかと思っている』とぽろっという。やはりお茶は売れない時代なのだ。店員は一生懸命紙に茶葉を包み、1つずつ丁寧に糸で縛っていた。このような芸術的処置がないと更に売れないらしい。お店の改修をしたばかりだというのに、何とも厳しい時代なのだ。

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55日(木)

日本へ

翌朝は曇っていたので、景色を眺めることが難しかった。雨は嫌だなと思っているとその内靄は晴れてきた。朝ご飯は下のファーストフード店でお粥を食べる。このような店のシステムは残念ながらしっかりしていないから、順番はバラバラ。前の人が食べ残したものが大量にテーブルに溢れて次の人間は使えない。それでも出勤前の若者はどんどん入ってきて注文するから、ますます混乱する。

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ここにいても仕方がないので、早めにチェックアウトして、タクシーを捕まえようとするが、なかなか捕まらない。ITパーク内に入ってくる車は少ないのだろうか。いや、仕事で乗ってくる人は多いはずだ。やはり最近はやりの携帯で呼ぶタクシーのせいだろうか。それでも何とか捕まえて、空港まで行く。この出費はバカにはならない。それでも地下鉄のない厦門としては仕方がない。

 

空港に着くと早過ぎて、チェックインができない。そうだ、これが厦門空港の欠点だった。直接カウンターへ行けないのだ。仕方なく外で待ち、何とかチェックインを済ませ、それでも時間が余る。今回の旅は思えば長かった。その思い出にふける。飛行機はそれほど混んでいなかった。ゴールデンウイークだというに、やはり日本人の旅行者はいないのだ、と実感した。中国には魅力的な場所が一杯あるというのに、なんとももったいない。

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