ミャンマー激走列車の旅2015(1)最初の列車は工事中

《ミャンマー激走列車の旅2015》  2015年7月23日‐31日

 

不思議なこともあるものだ。確か昨年旅行作家のS氏と雑談した中に、『シルクロードのお茶版、ティロード、万里茶路というのがあるんですが、まだ誰も知らなくて』と何気なく話したことがある。その後数か月も経ってから『企画が通ったよ、一緒に行かない』と声を掛けられた時には、もう何のことか分らないほどだった。S氏とは数年前にバングラディシュにご一緒したことがあるが、その時は大学生に同行しており、氏の本当の旅は本の中でしか経験していなかった。興味本位で『行きます』と元気よく答えてしまったのだが。

 

バンコックに滞在している間にS氏がやってくるとの話があった。何と例の企画の旅をするという。万里茶路とバンコックは関係ないだろうと思っていたら、その企画は『北半球の一番南の駅から一番北の駅まで列車で行く』というものだったことを初めて知る。第1回はシンガポールからバンコックまで。一旦帰国して2回目が始まるというのだ。まさに乗り掛かった舟、一緒に乗って行くことにしたのだが、これがあの試練の始まりとは全く想像もしていなかった。

 

7月23日(木)
カンチャナブリへ

朝5時に定宿で目覚めた。隣にはカメラマンのNさんがいた。S氏とNさんの名コンビはこれまでいくつもの旅を仕掛け、本を作り好評を博している。Nさんの優しい視線から撮られる写真は私も好きだったので、今回一緒に行けるのは楽しみの一つだった。タクシーで駅へ向かう。もしバンコックの中央駅ファランポーンを使うのであれば、このメンバーは迷わず地下鉄に乗っただろう。しかし今日の出発点は川向こうのトンブリ駅。バンコックに30年来来ているが、正直そんなところに駅があることも知らなかった。

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バンコックの渋滞を避けて6時にはタクシーに乗る。車はスピードを出してすぐに川を渡り、30分で目的地に着いた。だがここが駅だろうか、と思うほど、貧相な駅舎がそこにあった。早々に切符の購入。ところが・・??何と最初の目的地カンチャナブリまで繋がっているはずの鉄道は、修理のため、途中駅で打ち切りだとわかる。すごい、最初から躓いている。どうするのかと思っているとS氏は何事もなかったように『行けるところまで行く』というだけ。切符を買い、時間があるので駅前の道端でコーヒーを飲み始める。

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この辺の店、店員の顔を見るとタナカを塗っている女性が沢山いた。何ともミャンマーチックなと思っていると、実際にここで働いている人々はほぼミャンマー人だった。この駅を使う乗客の中にはミャンマー人が多いということだろうか。我々も今日はミャンマーへ向かっている。気持ちは高まるが、列車は走るのだろうか。何しろタイ国鉄のスローな運行にはこれまでも痛い目に遭っている。因みにこの駅には両替所などはなく、銀行のATMが鎮座していた。もし外国人がここに辿り着いたら、これでキャッシングする。

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思いのほか、列車は定刻に入線し、ほぼ定刻に出発した。乗客はそれほど多くない。4人掛けの普通座席に陣取る。何と座席番号が一応あるのだが、手書きで書かれているところが凄い。一番後ろの一両は座席がなく貨物用かと思ったが、とてもきれい。そこにはタイ人が自転車を持ち込み、乗り込んできた。最近タイでもツーリングブームだ。列車内でアルコールを飲んではいけない、との表示もある。いつの間にか列車はホームを離れていた。窓から心地よい風は吹いてくる。

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途中に駅はいくつもあり、多少の乗り降りはあったが、概ね平穏。窓から見える風景は田舎の畑あり、突然のマンション建設ありと、都市と農村が交錯する。1時間半ほどこの列車に乗っていたが、ある駅で停車してしまった。駅舎を見るとそこには『泰緬鉄道起点駅』という碑が立っている。1942年日本軍は、ここノンプラドックからあの泰緬鉄道建設を始めたという。そうだ、我々は鉄道の旅でミャンマー入りしようとしているのだが、今も泰緬鉄道があれば、このルートでミャンマーへ行けるはずだ。だが残念ながらその鉄道今はもうない。今回の旅の最後に出会う中国系ミャンマー人によれば『1990年頃、あの鉄道の線路はすべて撤去して、タイに売ったよ』という話だった。

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ここで迷っていた。数人がこの駅で降りていた。だが工事の始まっている駅まではまだ1駅ある。皆がざわつき出す。タイ語のできるS氏が情報を収集したが要領を得ない。ついには荷物を持って一旦降りて、易に人に聞くことに。その間に列車が出たらとひやひやしたが、駅員はこのまま駅を突き抜けろ、と指示を出し。さて、一体どうなるのだろうか。のっけから皆目わからない旅となっている。

 

 

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