《台湾温泉巡り2002》(6)烏来

6.2002年8月29日(木) 烏来

(1) 巨龍山荘
台北駅前で直ぐに烏来行きのバス停を探す。青島西路にあったが、非常に分かりにくい。おまけに新店までMRTに沿って行き40分も掛かる。これでは最初からMRTで新店まで行き、バスに乗り換えた方が遥かに早いことが分かる。証拠に新店で沢山の乗客が乗り込んできた。

新店より先は山道となる。渓流の脇を通ると子供が水浴びしている。大都会台北の郊外とは思えないほど、長閑である。もう直ぐ終点と思って見ていると、突然『巨龍山荘』という看板が目に入る。確か聞いたことがある。迷わずバスを降りる。

『巨龍山荘』は手前に建物が無いので、田舎の1軒屋といった感じ。ロビーは広い。受付で部屋の有無を尋ねると『部屋はあるが、1人では泊められない』と断られる。日本人で態々やってきた旨を伝え、色々と話しているうちに、店長の女性が出てきて泊めてくれた。料金も何故か10%ディスカウントしてくれた。NT$2,880(朝食付き)。ここでは、オーナーが日本のことを良く研究しており、男女に係わらず1人旅は原則泊めないのだという。他のホテルでは自殺者があったとの話もあるが、定かではない。

部屋はロビーより2階下にある。まるで日本の洋風温泉旅館。しかも箱根辺りにありそうな新しくなく、情緒があり、下には渓流が見える。いや、最高。河辺までは降りられないが、途中まで木々の中をおりると東屋もある。上に道路があるが、極めて静か。

(2)ナルワンホテル
ロビーに行くと姉妹ホテルのナルワンホテルに行って滝を見ないかと誘われる。ホテルのバンに無料で乗せてくれる。非常に親切。

13年振りに滝を見る。水量が減って滝が細った感じ。突然携帯電話が鳴る。家からだ。これは奇縁。長男は生まれる前にお腹の中に入って台湾に来ており、この滝の音も聞いたはずだ。(但し現在の彼は中学生になり、夏休みの宿題に悲鳴を上げていた)

烏来にもゴミ箱が無い。観光地なのにゴミ箱が無いと極めて不便。ペットボトルを買っても捨てるところが無く、結局買った場所で引き取って貰う。観光客が買い物をして生活が成り立つ街で観光客のことを考えないのは如何なものか?

ナルワンホテルはこの滝の前にあり、滝のみが売り物。温泉などは特に無いが、値段は巨龍山荘と同じ。

(3)夕食
夕食は巨龍山荘のレストランで食べる。ここはオーナーの張氏の趣味で茶葉料理を出すことで有名。但しこの日は誰もレストランに居らず貸切。台湾の茶葉料理はここから始まったと言われているだけに寂しい、残念。

紅茶鶏丁と清香蚵仔湯をオーダー。紅茶鶏丁には文字通り紅茶の葉が入っている。賽の目に切った鶏肉と茶葉を炒める。何となく香ばしい。清香蚵仔湯はあさりに生姜が入ったスープに緑茶がまぶしてある。茶葉の色が鮮やかである。またあさりの身が大きく、ぷりぷりしている。どちらも食べ易く、美味。NT$370。

食後店長の黄さん(女性、40歳)の勧めで、散歩に。この宿にはクーラーがあまり無く夜は外の方が涼しい。沢山汗を掻いて新陳代謝を図る狙いがある。黄さんは半年前まで台北の貿易会社に勤めていたそうだが、最初の仕事はホテル業であったという。最初は泊めてくれないなどと不親切な人だと思ったが、打ち解けるととても親切。宿泊費も割り引くし、入浴権も2枚くれる。後で聞くとどうやら髭面の私を温泉作家(?)と間違えた節がある。従業員の若い女性が『何を書くの?』などと聞いていたから。勿論黄さんにはサラリーマンであることを伝えたが、それでも親切は変わらなかった。

尚ここのオーナーは烏来に2つのホテル(巨龍山荘、ナルワン)と国際岩湯という温泉(宿泊施設は無いが、非常に素晴らしい露天風呂があると聞いている)を保有する他、緑島の朝日と墾丁にもホテルを有する。元々はお茶好きで20年前には、ここで茶芸館をやっていたのが始まりという。黄さんによれば、オーナーは研究熱心で凝り性。趣味が高じて仕事になっていった模様。ホテルの至る所に工芸品が置かれている。

ということで2階の茶芸館へ。かなり広いスペース。まるで博物館のように茶器などが並べられている中に喫茶スペース(テーブルが7-8卓)がある。クーラーが無い室内は暑いので、渓流を見ながら茶が飲める屋外を選択。渓流を見ながらといっても、実は暗くてよく見えず、音を静かに聴く。

包種茶の一種を頼む。最高級ではないが色が鮮やかに出る。香も甘い感じでよい。NT$200+お湯代NT$100。オーナーはお茶に煩く、自ら茶園を経営しているようだ。このホテルにはかなりの茶葉が来ており、店長の黄さんも暇な時は茶葉の仕分けなどをやっている。実に面白い宿だ。

(4)風呂
愈々1階下の風呂場へ。入り口でロッカーの鍵をくれる等かなり日本的。数個の個室風呂があるが、窓もなくあまり広くない。大浴場はまあまあの広さ。洗い場も日本のそれと同じ。風呂は半露天で渓流が見渡せて気持ちが良い。湯は弱アルカリ性炭酸泉で、透明。大きな浴槽は温めだが、小さな浴槽はしっかりと熱いジャグジー。湯で体を温め、出ると渓流を眺めながら体を洗う。涼やかな風がサッと吹く。いやあ、極楽、極楽。きっと箱根辺りにもこんな温泉があるに違いない。

夜8時を過ぎても沢山の人が入っている。この宿には部屋は10室しかないことを考えると皆これから帰るのだろう。箱根では考えられないことだ。夜半川の音が大きくなる。眠りが浅くなる。どうやら雨が降り出したようだ。どんどん強くなる。この旅1週間で初めての雨。それがこの宿で。実に良い気分で寝返りを打つ。

午前8時に一番風呂。流石に誰も居ない。昨夜と違い、大浴槽も40度あり、気持ちよく入る。小雨が降る川辺を眺め、対岸の緑豊かな山を眺める。台湾にいることが信じられない静けさ。かなり絵になる。

朝飯は粥とキャベツ炒め、炒り豆、目玉焼き。日本的にお盆に載せられている。マニュアルが行き届いている。但し1人で泊まっているのに、2人分くれるのは如何なものか?いやいや、この宿では1人は泊めないマニュアルなのだ。

10時に雨が上がる。眩しい日差しの中、晴れやかな気分で台北に向かう。台湾1周7泊8日温泉の旅。予想を遥かに上回る満足度。これを人に知らしめないのは罪ではないかと思う。

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