《台湾温泉巡り2002》(5)谷関

5.2002年8月27-28日(火、水) 谷関

(1)知本から谷関まで
知本駅は本当に何も無い駅であった。駅前には2-3軒の建物があるだけで飲み物を買うことすら出来ない。自強号が停まる駅でこれだけ寂しい駅も珍しいだろう。

高雄経由台中までの切符を購入。NT$729。駅は新しく、きっと台東駅の移転と温泉ブームによる知本の重要性から駅が作られたのでは?確かにタクシーだけは数台いた。それと駅の放送に何と日本語が含まれていた。

9時半に乗車。車中は左が海、右が山という風景が続く。あまり乗客はいない。その中で私の隣は何故か西洋人。但し流暢な北京語を使っており、しかも観光客ではなく、途中の名も無い駅で下車して行った。西洋人でも台湾が好きになり、骨を埋めるつもりで滞在している人もいるだろう。台湾は日本人の為だけにあるのではないのだ。

12時10分に高雄着。急いでホームを渡り、駅弁を買い込み12時20分発の自強号松山行きに乗り継ぐ。高雄、台南、嘉義には本年3月に来ているので、今回は飛ばして一路台中へ。

14時40分台中着。本当は台中の茶芸館にも寄りたい気分であったが、これから向かう谷関が非常に遠いところなので、早くバスに乗り込もうとバス停を探す。駅前左の百貨店の前に漸く谷関行きバス停を発見。しかし台中の人が不親切なのか、私が外国人に見えないのか、バス停1つ聞くのに非常に苦労する。

15時20分にバスが着て乗り込む。ところが最初の1時間は街中を行き、何と豊原駅前に着く。こんなことなら最初から豊原に来るべきであった。豊原には昔ゴルフに来たことがあった。確かプロゴルファーの涂阿玉が練習生をしていたところと聞いた。

それから山道を1時間半行く。途中ビンロウ樹が非常に多く、このあたりも昔のビンロウ成金が多かったのだろうかと思う。ビンロウは昔台湾の名産であり、刺激があることから長距離トラックの運転手などが中毒になっているもので、咬むと口の中が真っ赤になり、一般人には食べにくい物。最近は安いタイ産などが出回り、台湾産は苦戦しているとのこと。行くに従い山の風景が濃くなる。渓流が流れ、山からは煙も棚引く。野菜などを作る畑もかなり面積が制限される。バスもかなり揺れる。

(2)谷関のホテル1
17時40分何とか谷関に到着。山の中の温泉街の雰囲気がある。ガイドブックにある『伊豆』という日式温泉を探す。場所は近いのだが、かなり急な坂を上りバテる。漸くたどり着くも部屋はスイートルームしかないという。どんな部屋でも良いというほど疲れていたが、まさか10人以上は入れる個室露天風呂の付いた部屋に1人で泊まるわけには行かない。宿の人々も親切で色々骨を折ってくれている。ここには是非泊まりたいと思い、明日の予約を入れて引き上げる。

引き上げるといってもどうすればよいのか?既に時間は6時半を過ぎ、あたりは暗くなってくる。仕方なくバス停付近に戻り、そこにある『龍谷飯店』に行く。受付の女性が親切でNT$2,000のところをNT$1,800にしてくれて、部屋も川沿いの眺めの良いところにしてくれる。更に夕食券をくれる。近くのレストランでNT$200分の食事が出来る。レストランに行くと、チャーハン、キャベツ炒めなどを頼んだが、スープは態々小椀に入れてくれる心遣いがある。1人旅には有難い。

夜1階にある風呂場へ行く。完璧に日本的な半露天風呂。窓が無く直接渓流が見渡せる。実に気持ちが良い。25度、37度、42度の3種類の浴槽があり、サウナもある。洗い場も広い。湯は透明でさらさらした感じ。弱アルカリ性炭酸の泉質。実に入りやすいお湯である。夜の闇に渓流のせせらぎが聞こえる。

風呂から出ると休息室があり、無料で電動マッサージ器が使える。初めて使ってみたが、人が揉むようなわけにはいかないものの、結構気持ちが良い。台湾人が3人ほど試しており、鼾を掻いて寝ている人もいる。いやあ、温泉気分だなあ。

(3)谷関のお茶
夕飯の後、受付の林さんに『八仙山茶』の産地に行く方法を聞く。林さんはとても親切で、農協に電話してくれたが、バスなどは無く歩いて数時間掛かることが分かる。更に春茶はもう残っていないと言われ、諦める。

気の毒に思ったのか、林さんは自分の阿里山高山茶をご馳走してくれた。このホテルには茶芸館があり入浴客は自ら茶を入れて飲むことが出来る。紅木の立派なテーブルが4つもある。更にこの茶芸館は博物館にもなっており、ここの山から発掘された古代の石などが展示されている。ここのオーナーは日月潭にある九族文化村も経営しており、文化には非常に関心が高いとのこと。

林さんのお茶は阿里山の中腹にある友人である茶農家から直接取り寄せているとのこと。1斤、NT$2,000と値段も高級。始めに今年の春茶を飲む。実に自然な感じ。水も八仙山の天然水を使用。美味い。しかし林さんに寄れば、今年台湾では雨が少なく、茶葉の出来は今一つ。昨年の春茶を飲めば分かるとのことで、挑戦する。実にマイルド、とても昨年のお茶とは思えない。台湾では時々古いお茶を飲んでも、新鮮な感じがしたりするが、今回は正に驚き。

林さんは50歳前後の女性で、20年前には台北で日本人相手に土産物を売っていたこともあるという。2年前までは台中でコーヒーショップをやっていたが、生まれ故郷に戻りたくて、今の仕事を探したという。お茶は昔から好きで、仕事の合間には必ず飲んでいるとのこと。その自然な感じが良い。

尚お茶について言えば、谷関の先に梨山という有名な茶の産地がある。以前はここから梨山まで車で行けたが、1999年9月の大地震により道路は大きく崩れ落ち、3年経った今でも復旧の目処は全く立っていないという。道の崩れている様子はホテルからも見えるほどで、その災害の凄さが分かる。

(4)吊橋
翌朝の朝食もビュッフェで、『素食』という各種野菜と粥を食べる。台湾の温泉は本当に健康的だ。

このホテルには川の向こう側に専用の温泉プールが付いているのが見え、家族連れが朝から出掛けている。行って見ようかと思ったが、難敵は吊橋。橋は結構長く、幅があまり無く、更にかなりの高さがあり怖そう。即座に断念して、部屋の風呂に浸かる。小さい浴槽ながら肩まで浸かれる深さがあり、満足。

尚ここ谷関では、吊橋が幾つかあり、橋を渡らないと行けない場所も多い。私は一人旅であったので行かずに済んだが、団体であればどうなっていただろうか?

(5)谷関のホテル2

12時に龍谷飯店をチェックアウトし、昨日予約した伊豆温泉へ。歓迎してくれたもののチェックインは3時からとのことで、仕方なく大浴場に入り待つ。この風呂、完全な露天風呂で流し湯。男湯と女湯がある。かなり広く、気持ちが良い。冷水の浴槽もあり、何度も入って楽しむ。午後の日差しを浴びて、入浴するのも良いものだ。

1時過ぎると昼休みの従業員が思い思いに入ってくる。毎日こんな温泉に入れるとは、何という贅沢。私もここの従業員になりたくなった。心なしか彼らの肌はつやつやして見える。

3時にチェックイン(NT$2,800、朝食付き)すると、フロントのある建物の横から階段を上がり、温泉プールが見える。更に石段を上がるとログハウス風の建物がある。ここが今夜の宿泊場所。5軒長屋の一番手前に入る。部屋の名前は『箱根』。中は広くは無いが、整っている。そして何といっても前庭にある露天風呂。露天風呂付き個室なのである。

早々に自分で湯を溜める。湯はかなり熱く、水を足さないととても入れない。待つこと10分、入る。実に気持ちが良い。夕方とはいえ、都会では8月の台湾の気温は30度を超えている。ところがここは海抜1,000mの山の中であり、露天風呂に浸かっていると顔はヒンヤリ、体はポカポカ。極楽、極楽。出来れば水を入れずに少し時間をおくと効果はもっと高いのでは?

夕食後、体を洗う為に再度男湯に入る。湯に浸かってから出ると結構寒い。日本の秋に露天風呂に入ったときの感触。尚この宿には情人池と呼ばれる個室風呂もあり、そちらに入れば湯醒めせずに済んだのに。しかし一人で情人池はちょっと恥かしい。

翌朝も7時に起床し、湯を溜めて入浴。朝から自分の部屋で入浴できるとは、何という贅沢。部屋に露天風呂があることがこんなに嬉しいことだとは知らなかった。自分でも可笑しい位に感激。特に木の葉がはらはら落ちてきて、湯面に浮かぶともう言葉も出ない。

朝食付きで、粥、玉子焼き、野菜炒め、漬物など日本の旅館の朝食に近い献立。美味いので、粥をお替りする。非常に心残りながら、この素晴らしい宿をチェックアウトし、バス停に向かう。9時10分発台中行き。NT$121。今日は何時もの運転手が休みで代わりの人がやるので少し遅れるという。実にローカル。こんな時は腹も立たない。

出発後少し行くと、茶荘、茶畑などが見える。歩いても行くべきだったと後悔する。更に行くと梨が多く植えられているところもある。2日前と世界が違って見えるのは疲労度のせいか?

10時45分に豊原駅に到着。直ぐに11時7分発の自強号に乗り継ぎ、台北へ。NT$348。途中板橋駅を過ぎてから、地下に潜っていったのは初めての体験。13時8分台北着。これで台湾一周鉄道の旅をほぼ完成。(乗らなかった区間は台東から知本までの2駅と台中から豊原の1駅のみ。)

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