タイ人と行く高野山2015(3)高野山 驚くべきライトアップショー

高野山で長唄を

少し休息してから、梵恩舎というカフェに行く。ここは日本人のご主人とフランス人の奥さんが開いているインターナショナルカフェ。K和尚が仲良くしているので、私も2年前に一度ここにきてお茶を飲んでいる。今回は和尚の計らいで、何とここの2階で長唄を聞く、というのである。何故高野山で長唄?京都から遊びに来ていた長唄の修行をしたカップルが、偶然和尚と知り合いになり、タイ人がやってくるなら、ぜひ日本の伝統文化の1つとして、長唄を聞いてもらいたい、ということになったらしい。この辺、意外な展開が面白い。

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梵恩舎の建物は1階にカフェスペースがあるが、実は2階にもスペースがあった。そこは意外とお洒落な空間で、中2階というか、屋根裏というか、落ち着いた場所になっていた。座敷になっているので、欧米人などは長時間座るのは辛いかもしれないが、タイ人は座るのに慣れているから、ちょうど良いかもしれない。むしろ私は長く座るのは辛い、と思ってしまう。

 

男性が唸り声を上げて、三味線をかき鳴らす。女性も三味線を合わせる。皆興味津々、何が起こったのか、と言った感じで見入る。本格的な演奏がまじかに聞けることは、実に素晴らしい。演奏が終わると、三味線を弾いてみたいと、即席で習い出す人もいた。三味線を知っているのかと聞くと『クーカムで見た』というのだ。クーカムとはタイで爆発的に流行ったテレビドラマ。主人公は日本軍の大尉小堀。小堀の実直な人柄などが、『タイ人の日本人観が変わった』と言われるほどに、好印象のドラマだったらしい。原作はタイ作家の『メナムの残照』という小説。その中で小堀が三味線を弾く場面がある?のだとか、三味線はタイで有名な楽器だ。

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まさか高野山で長唄・三味線が聞けるとは、タイ人も大喜びだった。また会場はカフェなのに、ドリンクすら誰も頼まず、全く無料で場所を提供してくれた。勿論今日は日曜日で、お客は引っ切り無しに来ており、我々に構う暇がなかった、ということかもしれないが。下のカフェのお客さんたちにも音は筒抜けだから迷惑だったのではないかと心配したが、下からも拍手が沸いていたのを見ると、皆さん聞きいっていたのかもしれない。この意外性、これからもこのカフェで時々やって欲しい。カフェのお客さんの日本人で、タイ滞在経験のある男性が突然タイ語で話し掛けてきたり、何かと話題性のあるタイ人一行のご来場であった。

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ライトアップショー

それから歩いて宿坊に戻る。戻るといっても彼女たちは簡単には歩かない。餅を売っていれば誰かが買ってみんなで分けて食べる。数珠やおりんなど仏具にも興味を持ち、何でもかんでも手に取り、気にいったものがあれば購入している。兎に角今日は観光客が多く歩いており、迷子を出さないようにと日本人が連携してかなり気を使った。僅か2㎞を歩くのに、2時間はかかっただろうか。宿坊での食事の時間に遅れそうになり、かなり慌てて宿に飛び込む。

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私は後から参加を決めたため、宿坊は満員であり、泊まる所がなかったが、結局和尚の家に泊まらせてもらうことになった。我々二人は小雨が降る中、今来た道を急いで戻り、和尚の家に。実はこの後8時から、ライトアップイベントを見に行くことになっており、時間が殆どない。しかも高野山では食事をする場所も限られており、今日はどこも満員だろう。ということで、何と忙しい中、和尚はカレーを作っておいてくれた。何とも有難い。宿坊ではタイ人がお坊さんより食事の給仕を受けて『有難い、いやあり得ない』と思っている頃、私もお坊さんから給仕を受けていたことになる。何とも有難いことだ。美味しく頂いた。

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そして急いで明王院へ戻り、皆をピックアップして、すぐ近くの大伽藍へ向かう。ちょうど1回目のショーが終了したらしく、大勢の人が暗がりの中から、溢れ出してきた。それを避けながら進むと、場内には既に2回目を待つ人々がかなりいた。正直私は高野山でライトップショー、というのがピンと来なかったが、とにかく大人気だということは分かった。

 

ショーが始まる。驚くべきことに根本大塔にレーザー光線が激しく当たる。若手僧侶がずらりと並び、その読経の声が周囲に響き渡る。そして何と大塔に曼荼羅が浮かび上がる。偉い僧侶がゆっくり歩いて来て、扉を開け、中に入っていく。これは何を表わしているのだろうか。いつの間にか太鼓の音も響いてくる。端の方で激しく太鼓を敲いている人がいた。高野山の人だろうか。僧侶と太鼓、クライマックスが訪れた。光が消えると、フーッと息を吐きたくなった。

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ショーが終わると、写真撮影が始まる。実はショーの最中は写真禁止だったのだ。タイ人たちはまずは和尚と記念撮影。それを見た日本人の観光客も和尚と一緒に写真に納まる。今やお坊さんは人気者だ。高野山でお坊さんと記念撮影、というのは悪くないのかもしれない。それにしても何ともビックリするショーだった。タイ人たちはここで完全に自覚したのではないだろうか。『日本の仏教と自分たちの仏教は全く違うものである』ということを。

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我々は和尚宅に戻る。和尚はかなり疲れていたはずであり、早々に寝ることにした。私は風呂に入ることもしなかった。よく考えてみれば、昨晩夜行バスに乗り、殆ど寝ておらず、そのままここまで来てしまったのだ。因みに私が持って来たポケットWi-Fiは、この山では使えなかった。これは早く休めという意味だと理解した。

 

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