アンコールへの旅2014(7)伝統の森で見えてくるもの

皆さんは説明を聞きた後、2階のショップに移動、実際に作られた作品を見る。この村はボランティアで成り立っている訳ではなく、この商品の売り上げで成り立っている。森本さんは遠く日本まで商品を担いで行商に出る。この村の活動を理解してもらい、全てが天然で作られるこの商品の素材、製造過程を丁寧に説明し、理解して買ってもらっている。『今はなんでもアマゾンで買える時代、うちの商品はアマゾンで買えない、そこに価値があるのでは』という。全くその通りだ、と感心する。因みに卸の話があっても全て断っているそうだ。

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商品の値段は以前より高くなっているような気がする。それでも買う人がいる、需給関係、いい物は必ず売れる、という信念がある。商品の裏にはデザイナーと織り手の名前が入っており、責任感も出るし、自分の目の前でお客さん(しかも欧米や日本などの遠くから来た人々)が、自らの作った商品を購入してくれる喜び、モチベーションの向上に大いに繋がる。

 

私は今回の参加者の皆さんに、『この村を評価するのであれば、商品を購入することが一番』と伝えてきた。中には大量の布を買った方もいた。6年前に買った布で服を作ったと写真を見せた方もいた。大切に1つを選んで購入した人もいた。人それぞれ、この村の活動に理解を示していた。やはり何といっても、現地を訪れ、実際の状況を見て、説明を受ければ気持ちも違う。村の子供たちにとっても自分の母親が織った、お姉ちゃんが描いたデザインが評価されることは実に嬉しい、誇らしいことだろうと思う。

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ランチも用意してもらった。これも活動の一環、スタッフが作ってくれた食事を森本さんと一緒に頂く。懐かしい一口カツなどの日本食メニューもあった。今日は撮影などがあり、かなり忙しい様子だったが、それでも一緒に食べ、色々な話をしてくれた。中でもご自分の病気について率直に語り、またそこから得られたものがある、と話す姿は、これまで私がアジアで見てきた何人かの『突き抜けた日本人』と呼べる所に行き着いたと強く思う。間違いなく我々とは一段違ったステージに立っていると、痛切に感じられる。3年前に60歳を過ぎてなお、『中国語を勉強したい』と言った森本さんとも一味違っていた。

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これまでは世界中を飛び回ってきたが、これからは出来るだけこの村で過ごす、という言葉が印象的。私もいつか終の棲家を見つけ、少しの安住を求めることがあるだろうか。その時、自分には何が見えているのだろうか。実は会社を辞める直前、この村にやって来て、何かを見たはずだった。そして3年前には何かが見えた、と確信した。だが今回、私にはまた何も見えなくなってしまった。何故なのだろうか。

 

帰りはバスがそこまで来ており、乗り込むとすぐに出発した。森は直ぐに遠のいた。僅か3時間弱の滞在だった。前回のように2泊3日ぐらいできればよかったのだが、それもまたご縁。ゆっくりと流れに任せて生きていこうと、なぜかなめらかな舗装道路の帰り道で思っていた。

 

それから

帰り道、アンコール国立博物館に寄る。ここは展示物が充実しているとのことで、ゆっくり見ようと思った。まずはビデオ、ガイドが言語を日本語にしてくれ、理解が深まる。かなりの収集物があり、年代別にきれいに展示してある。数年前に改装されたとかで、実にきれいな博物館という印象。それにしても12ドルの入場料は高過ぎはしないだろうか。外国人に広く知ってもらうという意識はなく、外国人は金を払うもの、というこの国の政策が如実に出ている。

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ここでは各人思い思い過ごす。中には博物館には入らず、買い物に行く人達もいた。まあこれはスタディツアーというより、団体観光旅行だから、そんなものかと思う。皆それぞれに興味や関心が異なるのだから、仕方がない。ましてや12ドルも支払って、面白くもない物を見ても意味がない。

 

そういえば昨年プノンペンで見学したドリームガールズプロジェクトを突然思い出す。このプロジェクトの主催者はアンコールワットの壁に描かれた文様をみて、クメール人にはデザインの才能があると思い、カンボジアの若い女性からデザインを募集し、コンテストを行い、優秀作品を商品化して、その収益をデザインした人に還元する仕組みを作った。そしてついにはプノンペンにオープンしたイオンモールにそのデザインを使った商品を販売するお店まで開いてしまった。人は何を見て、何を感じ、そしてどうするのかは個人次第だ。

 

そしてホテルに戻る。ここで半数の方々が今日の夜便で帰国となる。同時に私はこのホテルを去り、S氏から頂いたホテルに移動する。これも3年前と同じパターンである。今度のホテルは地図で見ると近そうだったが、荷物を引いて歩いていくと30分以上もかかってしまった。トゥクトゥクに乗ればよかったと後悔したが、それもまたよい経験だ。途中で道路の真ん中に祠があり、何人もの男女が祈っていたのがちょっと不思議だった。

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今度のホテルは6号線沿いのこじんまりしたところだが、フロントの雰囲気が良く、WiFiが部屋で簡単に繋がったので、気にいった。因みに古いホテルなのか、部屋はかなり広かった。こういうホテルは中国でも時々見かけるが、妙に落ち着く。

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