インドでアユルベーダを2017(7)製薬工場を見学する

ビンセントは、パリ郊外でアユルベーダのクリニック?を開いて、患者に治療の補助をしているという。恐らくは、症状を聞き、アユルベーダの薬を処方していると思われるが、詳しいことはよくわからない。インドに通い始めてから20年というから、筋金入りのインド好きだ。今回もインド各地で薬を買い求め、パリにもって帰るのが目的らしい。ようは買付に来たのだが、もう2か月もインド各地を訪ねているというから、やはり仕事だけが目的ではない。

 

彼自身はコーヒーを飲むと夜は全く眠れないという。緑茶はそれよりはマシだが、紅茶も眠れないらしい。自分でもかなり敏感だと感じているようだが、普段は何を飲んでいるのだろうか。先生がやってきて、ハーブティを飲んだら、というので、飲んでみる。白湯よりは味があるが、私にとっては、あまり違いはない。

 

体調はまたまたすぐれず、先生とビンセントと他愛も無い話をして紛らわす。先生は『やはりWi-Fiを治そう』と言い出し、電話を掛ける。少しして若い人が2人来て、Wi-Fiを見始める。ようやくパスワードが違っていたと分かり、最終的にWi-Fiが繋がるようになった。そうなれば、やることは一杯ある。Wi-Fiで元気が出るなんて、若者じゃないんだから、と言いながら、喜び勇んで部屋に戻り、メールの返事をし始めた。それにしてもこのWi-Fi、かなり早い。

 

食欲がないならばと、ライスクラッカーをもらう。ポップコーンのような軽いものだが、塩味が適度に効いていて、何ともうまいと感じる。現在体が欲しているのは、実は水分などではなく、塩気であると気が付く。塩は重要だ、と再認識。そこに先生がチャイを持ってきてくれた。甘いチャイを飲むと気分はもう極楽。たまに飲むから有難味が分かる。

 

ネットが繋がったので、プネーからデリーまでの帰りのフライトを予約した。取り敢えず、ここまで来て様子を見て買おうと思っていたが、今回はプネーだけで終わりそうなので、この段階で決めてしまった。何となく体調的には辛かったのだが、徐々に回復している感覚がある。ネットで大河ドラマ直虎を見る。

 

暗くなってからシャワーを浴びる。8時頃ビンセントが『夕飯を食べないか』と声を掛けてくれたが、食欲がないと断ってしまった。ライスクラッカーだけで十分と感じるとは、自分も随分成長したと思う。何となくオイルまみれの生活にうんざりしていた。そういえば、昨日出した洗濯物は返ってこないがどこへ行ったのだろうか。パンツの数は足りているが、毎日スチームバスでビショビショだ。9時には眠る。

 

220日(月)
クリニック4日目

 

6時半に起床。目覚ましが鳴らないので、スマホを見ると、何と電気がついていない。夜の間に充電していたはずだから、もしやすると停電があったのかもしれないが真相は不明、とにかくスマホの充電が緊急の課題となる。散歩に出ようと思ったが、部屋で本を読んで過ごす。

 

今日の朝ご飯はコーンフレークとミルクだった。目先が変わってよかった。完食。今日は製薬工場を見学することになっているので、ギーを飲むことはないだろうと油断していたら、何とギーを出されたので思わず『えー』と子供のような声を出してしまう。すると先生が『じゃあ、半分ね』ととても優しい。やはり訴えてみるものだ。私の体にとって何がよいかはわからないが、取り敢えず今の私は十分に満足した。

 

10時頃、ラトールさんの車でA氏夫妻、そしてレッカさんもやって来た。レッカさんはプネー郊外の村に住み、半自給生活をするガンジーイスト。私は3年前に2晩泊めてもらっており、お湯を沸かすのに庭で薪をくべるのを見て驚いた記憶がある。いわゆるナチュロパティ派のレッカさん。対極にあるアユルベーダの治療や薬に興味津々で付いてきたらしい。

 

私とビンセントは先生の車に乗って、製薬工場へ向かった。20分ぐらい行くと郊外のあたりにマンションがどんどん建設されている。その一角に工場はあった。ちょっと前は何もなかったところらしい。この辺もインドの発展を見る思いだ。工場は先生の妹が運営していた。15年前に建てられたというが、思ったより大掛かりな2階建ての工場で、しかもどんどん拡大しているようだ。アユルベーダ需要はインドでも確実に高まっている。

 

ターメリックなどの原料はシーズンに安く買い付け、ここに保管し、必要に応じて使う。原料が重要なので、自然の森林の中で作られた物だけを使うのだが、最近は大手資本が森林自体を買収してしまうため、良質の原料確保が難しくなっている。ここにも経済成長の余波、歪みが見えてくる。

 

薬は一部機械化されてはいるものの、多くを手作業で行っていた。オイルの製造には1週間、他の薬では6か月を要するものもあるという。練り込むだけで3週間もかかるなどと聞くと、それだけで何となく丁寧に作られていると、安心してしまう。大量生産で価格を抑えるのか、伝統製法を貫くのか、すでにインドは岐路に立っている。漢方薬のにおいに似ているのが、その動向も似ている。

 

 

実際に治療に使用する薬の製造現場がみられるのは何とも安心できる。オフィスでライムジュースが出されたが、先生の方を見たら、半分に減らされてしまった。それでも飲めるだけで嬉しい。数日通常の活動をしていなかった私はちょっと疲れが出たが、先生は車を修理に出すと言い、私はラトールさんの車に乗り込んだ。

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