マレーシア老舗茶荘探訪2019(4)イポーの老舗茶荘を見つけるも

イポーで

今回のホテルは珍しく、日本人客の評価が高い所にしてみた。予約はせずにタクシーで乗り付け、料金を聞いてみると、やはりネットより少し高い。そのことをフロントに告げると、『実はネットの料金はプロモーション価格だ』と言いながらも、ほぼその料金で2泊泊めてくれたので有難い。この辺の対応が高評価の一因だろう。

 

約100リンギの部屋、こじんまりしているが、ロッジ風で、バスタブがあり、NHKが見られ、何より落ち着いた空間がある。朝食も付いている。こういう部屋が日本人の好みだとよくわかる。ロケーションは駅からはかなり離れているが、街の中心部にあり、前回泊まった大型ホテルのすぐ近くにあり、やはり便利である。

 

まずは街の位置関係を確認するため、駅まで歩いてみることにした。少し歩くと屋台が数軒入った食堂に出くわす。確か前回もここに来た記憶があり、懐かしさもあって入ってみた。イポーは食の街であり、煮麺も名物の1つなので頼んでみる。老夫婦がやっていたが、おばさんは広東語で注文を聞き、こちらが華語で答えるとなんと流ちょうな英語で返してきた。この辺のやり取りが実に楽しい。

 

駅までは3㎞近くあったが、曇りで暑くもなく、ゆっくり歩いた。この街もレトロな雰囲気はあったが、特にある一角には保存された古い街が残っていており、カメラポットになっていて、観光客が訪れている。往時炭鉱の町として栄えたイポーの面影はある。その中にお茶屋を発見したが、今日は日曜日のせいか、閉まっていた。

 

駅は昔のままだが、そこにあった立派なステーションホテルはかなり前に営業を止めていた。駅の周囲には特に見るべきものはない。宿の近くまで戻ると、何軒か食堂があり、その中で目を引いた、魚片粉の店に入る。濃厚なスープに揚げた魚の塊が放り込まれており、何とも美味。かなり満足して宿に帰り、大河ドラマを見て寝る。

 

8月19日(月)
イポーの老舗茶荘はどこに

朝はホテルで朝食を食べ、暑くならないうちに歩き出す。特に情報もなく、何の当てもない散歩だった。昨日と違う道を歩いて行くと、横道にきれいなモスクが見えた。実は私はイポーの街歩きが大好きだが、その理由はおそらく『華人の街』だからではないかと思っている。マレーシアはマレー系が人口の7割近くを占め、華人はマイノリティーだが、ここイポーは華人人口が7割と言い、華人的なにおいが濃厚で、何だかホッとしてしまうのだ。

 

その中でモスクを見つけて近寄ったのは決して偶然ではあるまい。何か見えないものに引っ張られたのだ。そのモスクの向かいの建物には『珈琲茶公会』の文字が見えるではないか。思わずそのドアを叩くと、中から女性が出てきて応対してくれた。ところが茶公会のはずが、『イポーはコーヒーの街だから、会員の多くはコーヒー関係者』だと言い、何と老舗茶荘については分からないという。組合が把握していないのであればもう絶望的だ。

 

だがその女性はとても親切で、どこかに電話を掛けている。すぐに男性が車で駆け付け、私をどこかに連れて行ってくれる。しかも何とその女性も同行してくれた。車はちょっと郊外に出て、瀟洒なカフェに向かった。イポーは白珈琲の発祥の地であり、このカフェでその歴史が分かるという。平日の午前中なのに満席で、しばし古い道具などの展示物を見る。

 

白珈琲とカヤトーストを頂く。この男性は実はお茶ともコーヒーとも関係がなく、イポー名粒、カレー麺を作る食堂の三代目だった。今日はたまたま休日だったので付き合ってくれたというのは、何とも有り難い。彼の原籍は海南島であり、実はイポーで食堂やカフェをやっている人は海南人が多いという事実を知る。この白珈琲も海南人が始めたそうだ。これまで華人の中で海南人について調べたことはなかったので、今後は注意してみよう。

 

彼の車で昨日行った古い町並みの所で降ろしてもらう。結局午前中は茶荘の情報は得られなかったので、ダメもとで昨日見た茶荘に行ってみる。今日は開いており、六堡茶などが店の前に出ていた。梁瑞生茶荘、雰囲気はかなり古い。三代目という若いオーナー易さんとそのおじさんが快く迎えてくれ、彼らの歴史を聞く。創業80年、広東出身のこともあり、ずっと広東系のお茶を中心に扱っており、紅茶粉は商わないらしい。

 

易さんはとても親切に、店にある沢山の資料を見せてくれ、色々なお茶を振る舞ってもくれた。更には易さんに教えてもらい、もう一つ老舗茶荘があるというのでそこまで歩いて行って見た。お店を見ると確かに老舗の匂いがプンプンする。中に入り女性に声を掛けると忙しそうに『オーナーはいない。私は歴史については何も知らないし、資料などの提供はしていない』ときっぱり言われる。

 

尚も取りすがるように『日本から来て、調べている』と訴えたが、『写真は自由に撮ってよい』と言われただけだった。仕方なく店内の写真を撮っていると、何とそこに、イポーの老舗としてリストに載っていた茶荘の名前を発見する。だが、なぜそこに名前があるのか、この茶荘とどんな関係にあるのか全く聞くことが出ず、退散するしかなかったことは残念でならない。まあこれもまた茶旅だ。

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