静岡フラフラ茶旅2017(1)松下コレクションを見学する

《静岡フラフラ茶旅2017》  2017年6月6日-7日

パスポートの有効期限が6か月を切っていた。そうなると入国拒否される国があると警告され、本当かなと思いながらも、パスポートの更新に踏み切った。台湾で更新しようと思ったが、2週間もかかると言われ、さすがに異国で2週間パスポートなしは不安だったので、東京へ行った。その間は日本に居なければならず、旅も日本国内に限られる。そこで静岡へお茶の歴史調査に赴くことにした。果たしてどんな成果があるだろうか。

 

6月6日(火)
1. 袋井まで

いつものように朝早く起きて、在来線で静岡を目指す。小田原まで小田急線、そしてここで普通乗車券を袋井まで別途購入して乗車する。スイカは熱海を跨げない。ちょうど中村羊一郎氏の『お茶王国しずおかの誕生』という本を読んでいると、鎌倉初期、径山寺の修行を終えて帰国した聖一国師が興津の清見寺に立ち寄り、その際中国から持ち帰った茶の種を足久保に蒔いたとの話があると書かれていた。その真偽はよくわからないが、ちょうど興津の近くに来ていたので、思い切って降りてみることにした。

 

駅で切符の有効性を確認のうえ、清見寺への行き方を聞く。線路沿いに歩いて行くだけなので、難なく到着した。そこは門と寺が線路で仕切られている珍しいロケーション。鉄道ファンにはいい撮影スポットではないだろうか。線路を跨ぎ、本堂を見学。きれいな庭が見られた。ただ聖一国師に関する記述や茶の木などはほぼ見られない。仕方なく庭を掃除している人に聞いてみたが、『お茶の歴史については全く知らない』と言われて拍子抜けした。

 

本によれば室町時代には清見寺は都にも知られた銘茶を産出していたとある。聖一国師が足久保に茶の種を蒔いたという文献はどこにもないが、もしそれが本当ならば、当然清見寺にも蒔いたであろうと推測している。それにも拘らず、現代の寺には茶の痕跡すらないのはなぜだろうか。実に不思議だ。やはりこの話は眉唾物だろうか。

 

来た道をとぼとぼ帰る。途中にスーパーがあったので昼ごはんとしてパンを購入した。そこにはレジもあったがかなりの人が並んでおり、私のように買い物数が少ない客は自動決済に誘導される。初めて緊張したが、自分でバーコードを読み込ませ、現金を入れるだけ。意外と簡単で便利だと分かる。東京の近所のスーパーにはないのだが、静岡は進んでいるのだろうか。

 

2. 袋井
松下コレクション

それからまた東海道線に乗り、静岡を過ぎ、藤枝、金谷、掛川と馴染みの駅を全て通り過ぎ、70分かかって袋井に到着した。そこから浅羽支所へ向かうバスを待つ。意外にもバスは1時間に3本程度あり、比較的早く乗れた。10分ちょっとで目的地には着いたが、目指す浅羽支所が分からず迷う。

 

思ったより立派な建物の3階に目指す松下コレクションの部屋があった。ここで茶旅の先達、松下智先生の60年に渡るコレクションが最近公開されたと聞き、どうしても行ってみたいと思ったのだ。火曜日と水曜日の公開と聞き、ちょうどよかった。先日その確認は小泊先生にお電話していたが、会場には松下先生ご本人がおられて驚いた。

 

コレクションは意外にも、黒茶などが多く展示されている。トワイニングの周年記念のブロック茶まである。その辺がいかにも松下先生らしい。お茶の歴史を福建や広東、台湾などを中心に語ることはない。少数民族と茶、更にはビンロウの関係まで展示されている。このような展示は今までになかった物ではないだろうか。少数民族のお茶研究、実に興味深い。

 

また一方には書棚があり、大量の参考資料、本が並べられている。それを見ると中国や台湾が中心ではあるが、よくぞここまで行かれたものだ、という奥地の物もあり、また日本各地の地方誌なども沢山ある。思わず手に取り、見入ってしまうほど、貴重な物がいくつもあった。

 

先生によれば、『ここにある資料は一部だ。現在本の執筆をしており、多くに資料は使用中だ』という。ご自宅には一体どれだけのお茶や資料が眠っているのだろうか。いずれにしても整理するのは大変だったことだろう。そしてこのようなコレクションの展示館が日本にはこれまでなかったことが残念でならない。

 

松下先生には『ぜひ茶寿までお元気でご活躍ください』とお伝えした。茶寿とは108歳のことで、中国茶業界の泰斗、張天福氏をイメージした。先生からは『今のところ体はどこも悪くない。90歳でインドのダージリンに行こうと思っている』という力強いお言葉があった。コレクションの見学者は平日にもかかわらず、かなりいた。勿論先生のこれまでの活動と研究成果の結果であり、また茶の歴史への関心の高まりを感じた。これからはお茶の歴史に興味を持つ人が増えてくれればよいと思う。

 

帰りもバスで袋井駅に戻る。それほど待たずに乗れるのがよい。袋井から藤枝までJRで行く。今晩は、藤枝の幸之松さんにお世話になることになっていた。藤枝駅に着くと、Sさんが車で迎えに来てくれた。何とも有り難い。

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