静岡フラフラ茶旅2017(2)台湾で活躍した茶業関係者を調べる

3. 藤枝
幸之松の夜

実は幸之松さんにはちょうど1年前に呼んで頂き、セミナーを開催してもらっていた。満員盛況のお客さんだったが、ごく一部のお茶農家、お茶好きの方を除いて、お目当ては私の話ではなく、こちらの料理だったと思う。まあ話の内容も、お茶に相当関心がないと興味を引かない黒茶だったからだろうか。そして驚くほどおいしい料理が続々運ばれてきて、皆さん大満足だったのを覚えている。

 

その時は牧之原のSさんの紹介だった。結局その夜は彼の家に泊めてもらったのだが、『次回静岡に来ることがあれば泊まっていいよ』と言われていたので、お言葉に甘えることにしたのだ。このお店、何しろ風情があってよい。外国人などは必ず喜ぶ日本的な作りだと思う。

 

お店に入るとすぐに料理が運ばれてきた。お刺身、てんぷら、鍋物、どれも美味しく頂いたが、中でも静岡名物黒はんぺんの揚げ物。何と5枚も食べてしまう。これまで食べた物とは別次元の美味しさだった。『今日は家庭料理だ』とのことだったが、大将の料理は実に食べ甲斐がある。

 

Sさんがお茶関係者として呼んでくれていた人がいた。ここ藤枝には、あの日東紅茶の工場がある。そこに勤務するHさん。仕事で世界中の茶産地に行くそうで、今時のお茶事情を聞く。当たり前だが、世界は我々の目の前で起こっていること以上に、動いているようだ。そして日東紅茶の歴史についても、得るものがあった。

 

そんな話をしていると、東京にいるはずのI夫妻が入って来た。一昨日は京都の茶会に出て、昨日の夜、帰り際にここに寄って食事をしたらしい。そこで今日私が来ることを知り、何と実家のある山梨から戻って来たらしい。神出鬼没とは私がよく言われることだが、I夫妻は私の上を行っている。驚くべし。しかも食事が終わると東京へ帰っていたからすごい。何時に着いたのだろうか。

 

私はHさんとのお茶談義に没頭し、気が付けば12時を回ってしまう。酒も飲まずに、実に6時間近くも話をしていたことになる。これは楽しかった。それからお風呂にも入らず、そのまま寝てしまう。Sさん夫妻はさぞや呆れたことだろう。私の旅スタイルはどこでも自由奔放だ。

 

6月7日(水)
翌朝は鳥のさえずりで目覚める。散歩でもしようかと思ったが、もうご飯が出来ていると御呼ばれした。まるで旅館の朝ご飯を頂くようで、何とお替りまでしてしまう。昨晩から食べ過ぎだ。申し訳なかったのはSさんご夫妻の方は、私のはるか前に起きて、犬の散歩も済ませ、朝食もすでに済んでいたこと。居候がのこのこ起きてきて、大飯ぐらいだとは、落語のような展開となる。

 

4. 金谷
野茶研へ

今日は朝から金谷の試験場へ行くことになっており、藤枝駅まで車で送ってもらう。なんとも迷惑な客だっただろうが、また機会があれば泊まりに行きたい。でも断られるかもな。藤枝から電車で金谷まで行く。駅で降りてバスの時間を聞くと30分後しかなかった。しかももしそれを逃せば、午前中はもうないらしい。ちゃんと調べもせずに来たのは無謀だった。取り敢えず駅付近を散策。高台に上がり、旧東海道の石畳の道の入り口まで歩いたところでバスの時間となる。

 

バスの乗客は殆どなく、10分ほどで目的地に着いた。通称野茶研と呼ばれる場所、今日はお知り合いのIさんのお陰で、ここの図書館で調べ物をさせてもらえることになっていた。ここの歴史を見てみると、何と明治時代は東京の西ヶ原にあったらしい。私の母校も西ヶ原にあったのだが、ここの跡地、ということはないのだろうか。試験場だから広々としており、周囲には茶畑もある。

 

Iさんと一緒に図書館に行くと、既に話が通っており、何と私が調べたかった人物に関連する本を選んでくれていた。何とも申し訳ないことだが、時間の短縮となる。藤江勝太郎、中村円一郎など、台湾茶業で活躍した静岡出身者は多いが、茶処静岡のこと歴史に埋もれてはいないだろうか、と思うのだ。静岡でも彼らの名前を知る人が多くないのは残念だ。資料もそれほどない。出身地の町役場などに問い合わせた方がよい、とのアドバイスは貴重だった。

 

お昼はIさんの研究室で一緒に食べ、またお茶の話をした。Iさんとは昨年のお茶祭りセミナーで初めて会ったのだが、偉い研究員の先生とは知らなかった。私は品種や育種のことは何もわからないのだが、お茶の話題が全く尽きないのが不思議だ。やはり世界の茶産地を旅している人とは、話のテーマが合うのかもしれない。

 

午後は、何と偶然にもここで、黒茶の試飲が行われるというので、飛び入り参加した。集まったメンバーもすごい。近世茶歴史を研究するYさん、江戸文化を研究するK先生、尖ったお茶屋のIさんなどが、黒茶を持ち寄り、勉強している。私もプーアル茶などいくつかの黒茶を持っていき、飲んでみる。色々と専門的な意見や疑問が出てきて面白い。更には研究室でトルコのチャイなども飲んでみる。皆さん、お茶に向き合う姿勢が半端ない。私は場違いだな。

 

それから図書館に戻り、お借りした資料を整理してから、バスで金谷に戻った。バスの本数が少ないのでちょっとドキドキしたが、何とかたどり着く。そして名残惜しかったが、そのまま在来線で東京へ戻った。本当は1泊ぐらいして、お茶屋さんや農家を回りたかったが、時間が許さなかった。まあまたすぐに来るだろう。

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