タイ茶を訪ねる茶旅2015(7)チェンライ タイ茶工場を見学して

少し待つと、林家の長男がやってきた。実に実直そうな青年で、見ただけで好感が持てる。英語も話せるので、彼の案内で工場に向かう。工場内にはお茶のいい香りがしていた。今まさに摘まれてきた生葉が運び込まれ、室内に広げられていた。これから緑茶を作るらしい。Cha-thaiは元々紅茶製造を主としていたが、近年は緑茶需要がかなり伸びているとのこと。そして茶葉はこの近辺だけではなく、チェンライ、チェンマイ、メーソンホーンなどタイ北部各地の茶農家から運び込まれてくる。何故この場所に茶工場があるのか、それは茶葉の集積地としてとても便利だからとすぐに分かる。

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社長であるお父さん、林さんが入ってきた。この地に工場を建てたのは30年前だそうだ。大量のタイ茶を作るには、原料である茶葉の確保が一番重要だったという。確かにタイ市場で大きなマーケットシェアを持つ同社の生産は半端な量ではない。タイ経済は常に順調ではなく、いや逆に常に何らかのイベントを抱えている中、庶民の味として生き続けていくこと、これは並大抵のことではない。

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第二次大戦後、タイにもアメリカ文化が流入し、コーヒーが入ってきたことは衝撃だった。同社のライバルは他の製茶メーカーではなく、コーヒーメーカーだという。但しスターバックスのような高額な商品は全く競合しないとも言う。タイ人はスタバでコーヒーではなく、アイスグリーンティラテなどを好んで飲むが、この料金は1杯120バーツ前後。同社のアイスグリーンティは僅か35バーツだからだ。この価格帯だと、景気変動にも左右されにくく、今日までやって来ている。

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また同社にとっても不可欠なコンデンスミルク、これをネスレなど外国勢に抑えられているおり、彼らに大きな収益を握られているのは痛い。しかし膨大な資本を持つ欧米企業ではないと、コンデンスミルクの設備投資はできないので、仕方なく彼らの製品を買っている、と嘆く。

 

話を聞いている間にも、茶葉は揉捻機に掛けられるなど、どんどん処理されていった。少し雨が降り出した。11時を過ぎるとランチタイムで従業員はバイクに乗り、家に帰っていく。この工場では地元住民を優先的に雇っている。『これも華人が地元と融和する1つの大きな手段』となっている。地元に支持されなければ、如何に大きな工場を建てても、最終的に上手くいかないのは自明の理。

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それから工場内のパッキング施設を見学、実に大量の段ボール箱が積み上げられていた。これが先日訪問したバンコック郊外の本社を経由して各地に配送されていくようだ。更には品質管理をしている試験室なども回ってみた。これからアセアンに大きく打って出る予定の同社、当然ながら国際基準での生産を進めている。

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我々もランチをご馳走になる。カオソイを食堂の人が作ってくれた。漬物と一緒に食べるとピリ辛だが、美味い。スッキリした緑茶がアイスで登場した。喉が渇いていたので、ごくごく飲む。林さんたち華人も自社製品のタイ茶ではなく、伝統的な釜炒り緑茶などを好むようだ。コンデンスミルクを入れた甘い物、ライムを絞った物など、様々なお茶が提供されて、試飲した。フルーツも沢山出てきて、有難く頂いた。何だか嬉しくてどんどん食べてしまった。

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社長とは打ち解けて別れがたかったが、工場を後にした。華人の家族経営、実に素朴でよかった。明らかにシンハの大企業経営とは違っていた。このような出会いは茶旅の醍醐味であり、更には低価格で庶民に向けて販売する、タイ茶のアセアン進出など、前向きの話は聞いていて嬉しくなる。

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ドイチャーン

そして今日はチェンライに泊まることにしているので、そちらへ向かった。だがまだ午後も早い時間ということで、近隣の山に入ってみる。Eさんが知っている風光明媚なスポットを眺める。この付近には元々茶樹が自生したのかもしれないが、新しく茶樹を植える、苗木を育てるなど、茶に関する新たな動きがあるように見える。茶葉の需要が増加していることが感じられる。

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山頂付近にはドイチャーンという有名なコーヒーチェーンの工場があった。ここには一般観光客用のショップがあった。そこで休息し、コーヒーを飲んでみる。お茶ばかり飲んでいたので、コーヒーをブラックで飲むと、その苦味、そして酸味が新鮮に感じられる。工場脇にはきれいな庭園があり、いい感じの建物があった。30年前にゴールデントライアングルの代替作物として、タイ政府主導でコーヒー栽培が始まったようだ。チェンライはお茶だけではなく、コーヒーで有名になっている。

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チェンライの街に車で送ってもらい、Eさんお勧めのホテルに投宿する。ここは何と数年前に私が偶然泊ったところだった。そしてその時のフロントの対応が良く無かったことを鮮明に覚えていたが、今回も全く変わっていなかったことに驚いてしまった。部屋代は150バーツも上がっていたのに。まあこれも運命か。

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チェンライの街も相変わらずそれほど発展しているようにも見えず、食事をする場所も探さないとなかなかない。夜は閉めてしまう店も多いのだ。のどかでよいとも言えるが、何もすることがないのはちょっと寂しい。

 

8月6日(木)

翌朝は6時半にまだ準備中のレストランで朝食を食べて、自らタクシーを拾い、チェンライ空港へ向かう。非常に長い旅が終わりを告げようとしている。腰はまだ痛く、足を引きずりながら、バンコックエアーに乗り込む。この航空会社はLCCではないので、空港内でジュースもくれるし、機内で簡単な食事も出る。ようやく少し落ち着いた気分になる。

 

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