シベリア鉄道で茶旅する2016(3)まるで闇両替のように切符を手に入れて

 荷物を引きずっていたので東直門のホテルへタクシーで向かう。運転手に『両会のお陰で大変だよ。不便だね』というと、彼は大きく頷いたが、しかしすぐに首を振り、『両会が開催されることは良いことだ』と口走った。驚いた。まさか本気でそんなことを思っているとは思えない。まさか盗聴?昨今の政府による言論統制は、この微妙な状況下で、タクシー運転手の軽い愚痴すら封じているのだろうか。何ともやりきれない思いだった。

 

チェーンホテルには予約を入れており、問題なくチェックイン出来た。決して安くはないかが、ここは立地が良いので、部屋がないことが多い。3人部屋はないので、私は一人部屋に入る。私の携帯を使い、Nさんが国際旅行社に電話を入れた。嬉しいことに明日のウランバートル行のチケットはあるという。氏名、パスポート番号など発券情報をショートメッセージで送った。もう大丈夫だ、と思い、昼ご飯を食べていなかったので、ランチに行こうと言ったが、S氏は『まずはチケットを確実に受け取ることだ』と言い、すぐに国際飯店に引き返した。この辺は本当に硬いが、それだけ様々な経験がそうさせているのだろう。

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国際飯店に引き返した。西門の横から電話を入れて、スタッフを呼び出した。5分ぐらいしておじさんが現れた。そしてチケットを取り出して、内容を確認しろという。午後の日差しがあったが、寒風が吹く中、S氏は入念にチェックした。そして封筒から代金の現金を出した。その代金は硬臥で一人当たり1222元。3人で3600元余りと、数えるのも大変だった。まるで闇両替でもしているような雰囲気であり、周囲の人々も何が行われているのか、と、好奇の目で見ている。確かにチケットは手に入り、旅が続けられることは朗報だったが、国際列車がここまで高いとは思っていなかった。しかも途中駅のエレンホトでの下車も許されないとのこと。何となく喪失感が凄い。わかったのは、エレンホト行の列車は、この国際列車に僅かに連結されているだけであり、席数は極めて少ないので売り切れだったということらしい。

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歴史散歩

国際飯店の横道をふらふら歩き、桂林米粉の店があったので入る。15元の牛なん麺を頼む。さすがに腹が減っているし、外は寒いので、美味く感じられた。でもあっという間に喰い終わる。今日のやるべきことは終わっていた。これから特にやることはない。S氏は原稿を書くためにホテルに戻るという。私は懐かしいこの付近を散歩することにして別れた。このあたりにも、昔の店舗跡など歴史的建造物はいくつも残っていた。二環路の内側は今や歴史保存区のようだ。

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フラフラ歩いていると趙家楼飯店が見えた。ここは五四運動で焼き討ちにあった場所。対華二十一か条の要求を認め、売国奴と言われた官僚曹汝霖の屋敷跡だ。ここには中江兆民の息子、中江丑吉が世話になっており、事件当日には駐日公使、章宗祥と一緒に曹汝霖に間違われて、襲われ、負傷したと言われている。当時は中国人エリートの多くが日本に留学し、日本と深い関係を持っていた。因みに曹汝霖は留学中、中江家に寄宿していた。今はホテルになっており、門のところにその歴史を説明するプレートが嵌っていたが、宿泊する中国人は気付いているのだろうか。

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実はその向かいには1930年代、梁啓超及び息子、梁思成と妻で建築家かつ詩人の林徽因が住んでいたと言われた場所である。私は北京在住時代に『北京歴史散歩』でおここを訪れたことがあったが、今は全て取り壊され、跡形もない。2014年に故居ではなかったと認定され、プレートも外されたと聞く。なんだか不思議な話だ。中国の歴史保存は金にならないと行われない。この一等地にマンションを建てたいとか、何らか所有したい人は大勢いるだろう。そんなことが原因なのだろうか。確かに日本亡命から戻った梁啓超は天津に主に住んだらしいが。

 

懐かしのマッサージ屋へ行く

天気が良いので歩き続ける。建国門は以前勤務し、居住した場所である。元我が家は今も健在で益々立派になっている。その向かい側に昔よく行ったマッサージ屋があった。実はここのメンバーカードを帰国後紛失していたのだが、先日部屋を整理している時に見付けていた。確かこのカードには何がしかの入金がされている。ただすでに数年経っており、この変化の速い中国で、これが使えるとはとても思えなかった。単に懐かしさと興味本位で店に入ってみる。

 

午後の早い時間であり、お客はいない。受付でカードを見せると、マネージャーが出てきて、『勿論カードは使えます。お金もちゃんと残っていますよ』というではないか。これには少なからず驚いた。折角なので久しぶりにマッサージを受けることにした。店は大きくは変わっていなかった。ここであった話は既に『中国出稼ぎ事情』として書いた。http://www.chatabi.net/colum/8812.html まあとにかくこの店があってよかった。マッサージも気持ちよかった。そして今後もあり続けて欲しいが、情勢はそれを許さなそうだ。早くカードを使い切らねばなるまい。

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