スリランカ紅茶の買付茶旅2016(12)リプトンシートに這って上がる

10:30にバスは満員で出発した。この小型バス、かなりの年代物で、シートも壊れかけていたが、とにかく席があったので、特に問題はなかった。バスはすぐに上りに入り、茶畑は見えた。景色は良いし、天気も良い。何だか遠足気分だった。山道を30分ぐらい行くと、ダンバッテンの茶工場を過ぎた。そこにはトゥクが沢山停まっていた。やはりここからリプトンシートへ行く人はこれに乗るしかないのだ。私はラッキーだったと思ったのだが。

そこから10分ぐらい行く。どこにシートはあるのだろうか、シートとはどんなものだろうか、トーマスリプトンがここに来た、というのだから、立派な山小屋でもあるのだろうなどと思っていると、車掌が突然降りろ、という。シートはどこだ、と聞くと、遥か山の絵上を差して、ここから歩いて行け、というではないか。どう考えても騙された思いだった。降りたのは私だけだった。バス代は50rpだが、その代償は大きかった。事前調査の旅というのはこのような危険がある。あとで見てみると、リプトンシートの2.5㎞前あたりで降ろされたらしい。

本当に周囲に家もない、人気もないところにポツンと降ろされ、去っていくバスを見送った。仕方がないので指さされた方、茶畑の階段を下りて、山へ登る道を歩いていく。すると、周囲が一面すべて茶畑になる。天気も良く、空気もよく、茶の香りがする。まるで春の野でお花畑を歩いているかのような気持ちよさがあった。歩いているとさっきのバスのことなどすっかり忘れてしまうほどだった。茶摘みも行われているが、私の他には誰もいない。何という贅沢な時間だろうか。

途中でゲートがあった。トゥクが止められ、入場料を払っている。私はその横を通り抜けようとしたが、何と歩いて上るものからも50rpを徴収した。一体この上には何があるというのだろうか。その内、上りがきつくなる。横を数台のトゥクが通り過ぎたが、山の小道は切り返さずに曲がることはできないほど狭かった。トゥクには中国人のカップルや、白人女性などが乗っており、風を巻き起こして進んでいった。太陽は燦々と照り付け、熱さを感じるようになってきた。

私は道を外れ、茶畑の中の階段を上ってみた。もっときつかったが、他の方法がなく、無理やり登り切った。それでもまだ頂上には着かない。もう止まってしまいそうな勢いになったころ、ついにトゥクが駐車しているところが見えた。車も停まっている。あまりに疲れたので、まずは小屋があるところに上がる。水を持っていかなかったので、水分補給が必要になる。小屋では注文すれば紅茶が出てきた。何とも有り難い。勿論お茶の品質などは問わない。50rp。おやつも出てきたが、それには手を付けなかった。それほどまでに疲れていた。

リプトンシートと言われるものは、崖の先端にリプトンが座っている像があるだけで、完全に期待外れだった。トーマスリプトンは1890年ごろ、スリランカにやってきて、この辺を調査した、その時に休んだ場所、そして友人たちを案内した場所だ、と説明されていたが、本当にここに来たのは1度ぐらいではないのだろうか。それほどに何もないし、今やってきても大変なところだ。単にここで景色を眺めて、休んだというのならよくわかるがどうだろう。小屋の上には展望台のようなものが作られ、皆はそこに上がって、周囲を見ていたが、私はそんな気にもなれない。元々高所恐怖症だし、風も結構強かった。それよりはとにかく休息が大切だ。

何しろ、他の皆さんは見学が終わると早々にトゥクに乗って降りていく。だが私には乗せてくれるトゥクはないのだ。歩いて降りる以外に本当に方法はなかった。しかもその道のりは下りとはいえ、先ほどバスを降りた場所より、はるか先、7㎞の道のりでようやく茶工場に着くのだ。これはいくら天気が良いと言ってもかなりの距離だ。

ダンバッテンまで歩いて降りる

それでもここにずーっといてもやることはない。とぼとぼと山を下り始めた。上りに比べれば下りは楽だ。軽快に降りていく。茶畑の水路の補修をしているおじさんがいた。茶畑でこんな人を見ると、日常を感じる。30分ぐらいでバスを降りたあたりまでやってきた。やはり早い。だが暑い!そこでは茶摘みを終わった女性たちが、茶葉を持ち込み、マネージャーが計量をしていた。これで一日の稼ぎが決まるのだ。皆真剣だった。マネージャーは若い男性、彼は英語も出来たので、少し話を聞いた。最近は天気が不安定で、収穫にばらつきがあるようだ。人件費などコストはどんどん上がっていくが、茶価は一向に上がらない、そんな不満も漏らしている。

小さな教会もあった。茶摘みをしているタミル人はヒンズー教徒だとおもっていたが、改宗などが進んでいるのだろうか?マネージャーたちはキリスト教徒なのだろうか。その先ではまだ茶摘みを行っていたが、なんと摘んでいる人の中に何人か男性がいた。これもまた珍しい光景だ。聞いてみると、最近は男性の摘み手が増えているという。仕事の機械化が進み、男性の仕事が減少したからだろうか。女性が減少しているのだろうか?

道路脇で弁当を食べている子供がいた。小学生だろうか、こんな大自然の中、茶畑を見ながら弁当を食べる!いいなと思い、私も持っていたビスケットを出して食べてみる。結局1時間ぐらい歩いて、初めてまとまった集落を見る。特に問題なく歩いてきたのだが、何となくホッとする。その先の道には沢山の学生が道を下っていく。こんな通学経路、羨ましいとしか言えない。茶葉を運ぶトラックが通り過ぎる。周囲がすべてお茶に見える。

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