スリランカ紅茶の買付茶旅2016(7)道端のキリテー

運転手さんの家へ

ついに買付の旅が終了した。クマさんもさすがにホッとしたようだ。今回の買付はそれなりにうまくいった方らしい。ただヌワラエリアの茶がうまく調達できなかった。その場合は、後日コロンボのオークションで競り落として、調達する方法もある。実は今回訪ねた茶園でも、何度か『これはオークション出品リストにすでに載っています』という話があった。

出品リストに載ってしまうと、その後はそのお茶を個別売買することはできない規定のようだ。以前はサンプル程度と言って、少量の場合は売買が黙認されていらしいが、最近はかなり厳しい。クマさんのように個人でお店をやっている場合、仕入れる量もそれほど多いわけではなく、限られてくるので、単独でオークションに出ていくのは簡単ではない。その場合はルアンさんのお客さんも含めて、何人かで購入して分けることもあるようだ。

そんな話をしていると、どこかの街に着いた。今日も例のロッジに泊まると聞いていたのだが、ここはどこだろうか。どう見ても自動車修理工場にしか見えないのだが。実はここは、今回の運転手さんの家であり、彼が経営している工場だという。昔は中国でもそうだったが、経済発展の初期は、車を運転できることは高級技術者であり、またその車を修理できるのは限られた人々だった。彼はそれができる人だったのである。普段は工場をやり、ルアンさんに頼まれた場合に運転手を引き受けるらしい。今回のメンバーはいわばスペシャルチームだった訳だ。これはYさんのお陰だったかもしれない。

Yさんは私を連れ出し、大通りに出る。車は多くはないが、学校帰りの学生とその親が沢山歩いており、次々にバスに乗りこんでいった。店では揚げ物のお菓子が売られており、美味しそうに見えた。家に戻ると、クマさんたちがいない。探して隣の建物に行くと、そこは織物工場になっていた。これも運転手さんが、親戚などに仕事を与えるために作ったらし。

そして家でお茶を頂く。運転手さんの長男がお茶を運んでくれる。英語もちゃんと話した。赤ちゃんや小さな女の子もいて、なかなか楽しい家庭のように見えた。お茶は先ほどディンブラでもらったもの。初めはストレートで飲んでみたが、やはりミルクがよいということで、ミルクティも出てくる。普通の家庭はミルクティのようだ。ドーナッツのようなお菓子が出てきたが、甘くはなかった。やはり甘いミルクティに合わせているようだった。

日が暮れる前には、ロッジに戻った。心地よい疲れがあり、シャワーを浴びて、軽く寝息を立てる。この瞬間は本当に気持ち良い。解放感に浸る。街は茶園と比べると結構暑かったが、このロッジはやはり涼しく、快適だった。夕飯はカレーになった。鶏肉、魚、野菜と3種類のカレーを食べる。そこそこ辛いが、美味しく感じられる。美味しく感じられることが嬉しい。そしてまたぐっすり寝る。極楽、極楽。

2月10日(水)
5.ガンバハまで

翌朝は散歩しようと思っていたが、なぜか起き上がれなかった。恐らくは緊張が解け、体調も戻ったため、気が抜けたのだろう。8時前にダイニングへ行くと、すでに皆がそろっていた。今日はクマさんの好物だというストリング・ホッパーを頂く。それはそばのような麺(米から作る)にたまごなどを煮込んだ汁を掛けて、付け合わせて食べるのだが、確かにこれはうまい。かなりの量を食べてしまった。

名残惜しいが、8時半にはロッジをチェックアウトする。今日はクマさんが帰国する日。だが私はもう1日、ルフナへの案内をお願いしていた。どうするのだろうかと見ていると、何と一度クマさんを送ってコロンボ空港へ戻り、明日またルフナまで来るのだという。そんな大変な、と思ったが、実はキャンディへ行く方がもっと大変だったことが後からわかる。

今日も相変わらずいい天気だった。道路沿いの茶園を通ると茶摘みが行われているが、今日はもう茶園へは行かない。2日間で飽きたはずなのに、それはまた何となく寂しい。雨が降る前にできるだけ摘み取ろう、ということだろうか。それにしても気持ちの良い天気だ。

1時間半ぐらい走ったところで、道端の茶店に入り、休憩した。ここでキリテーを注文。どうやって作るのか、興味津々で見に行くと、おばさんが作っているところをよく見せてくれた。茶こしで漉して、ミルクと混ぜて高らかに上から落とす。出来上がってから砂糖を混ぜていた。素晴らしい、と思っていたが、後で聞けば、Yさんがおばさんにちゃんとチップを握らせていたのだ。それでサービス精神旺盛な対応が実現していた。どこの世界でも似たようなものだが、このYさんの慣れた対応には恐れ入る。

それにしても、インドのチャイも同じだが、なぜかキリテーも道端で飲むものが一番おいしい。キリテーはチャイより上品な感じだが、それでもそれなりに甘い。ホテルで出るチャイなどは甘さが抑えられすぎていて、物足りないのだが、スリランカのホテルでも同じだろうか。因みにこの店では結構よい茶葉を使っていたので、驚いた。1杯、40rp。

11時半ごろに比較的大きな街に着いた。そこにはかなり大きな市場があり、折角なので寄ってみることにした。お客さんもかなりいて、売り手にも活気があった。魚がたくさん売られているのが意外だったが、干した魚も多かった。ここは未だ内陸部なのだ。野菜は新鮮で、ルアンさんが家に持ち帰るために買いこんでいた。田舎の方が物価は安いのだろう。

また1時間ぐらい走って停まる。この街のスーパーに入り、パウダーミルクを探す。パウダーミルクはミルクティを作るために必要だということで買い求めたのだが、従来外国産ばかりだったものの中に、スリランカ産が見えるようになったとYさんは言い、それを探す。外国産より若干安いのだが、安いからか美味しいからか、よく売れているようだった。

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