ダラダラ佐賀まで茶旅2015(12)バスで矢部村へ

5.八女

バスで矢部村へ

6時39分に矢部村行きの始発バスは出るという。駅前のバスターミナルには人は殆どいなかった。確かにこんなに朝早く、どこかへ行く人など少ないだろう。一人のおじさんが声を掛けてきた。あまりにも人がないので、寂しくなったのだろうか。その気持ちはよく分かる。おじさんが身の上話を始めるが、少し訛があり、よく分からないところが、如何にもローカルバスの旅だ。

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結局乗客はこのおじさんともう一人の女性と3人だけで出発した。街中を走って行くと数人が乗り込んできた。だがおじさんも含めて大半が20分以内、すぐに下りてしまった。『大木切ります』『栗買います』など、如何に山の中であることを示す張り紙が目を引き始める。道はとても良い。

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50分ほど行ったところ、黒木というバス停でしばし休息した。ここでバスの行き先が分かれるらしい。この時乗客は既に私だけになっており、運転手さんが『これから先が長いので、トイレに行ったらどうですか?』とアドバイスをしてくれた。そうか、まだそんなに遠いのか。それから道は徐々に上りになり、川も見えてくる。畑もある。道沿いには家がある。そんな風景が続いていく。

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きれいな橋が見えてきた。湖のようなダム?も出てきた。落ち着いた、いい風景だ。いよいよ矢部村が近づいた感じがした。が、指定されたバス停にはなかなか着かない。あれ、と思った頃、ついにそのバス停の名前が出てきた。下りる時が来たのだ。乗車時間1時間20分、1350円の料金を払い、運転手にお礼を言った。そこにはにこやかにKさんが待っていてくれた。

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Kさんのお茶

Kさんは昨日まで福岡の催事に連日出店しており、毎日ここから博多まで通っていた。昨晩も夜中に家に戻ったという。何故そんなことをするのか、『その日作ったお菓子を運んでいた』と。いくら若いといっても、疲れているだろう。そんな大変多忙な中、私の為に待っていてくれる、それだけで有難い。車で自宅へ向かう。なんかとてもいい雰囲気の木がある。古い茶の木だという。

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昨年も八女に来た。その時は時間が合わず、ここには来なかった。星野村へ連れて行ってもらった。同じ八女、という地名でも雰囲気はかなり違う。この矢部村も歴史はかなり古いらしい。Kさんの家も昔から茶を作っているという。品評会で数々の賞を取ってきた有名なファミリーだった。Kさんのお父さんが3代目、彼は4代目で農学博士。若手後継者のKさんは、茶業のみならず、地元の青年団、若者の支援など、かなり多忙だという。海外も視野に入れている。

 

今回は時間が限られている。話をしているとすぐに時間が経ってしまう。Kさんの車で茶園を案内してもらう。当然だが、かなり狭い土地に茶樹が植えられている。標高も600m程度ある。この山の中、寒暖の差も大きいだろう。空気もいい、水もいい。環境は整っている。秋の茶葉は伸び放題、元気が良い。高級な玉露を作るため、覆いをするための枠組みも見られる。八女は玉露で生きていく、昨年お会いした試験場のNさんの言葉を急に思い出した。

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八女津媛神社、日本書紀にも書かれている八女津媛を祭る、歴史ある神社が茶園の近くにある。八女の地名の由来だそうだ。樹齢600年、と書かれている立派な権現杉も見られる。八女の古い歴史を物語っている。この付近、車も通らず静寂が漂い、幽玄な雰囲気さえ感じられる。

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極上煎茶『八女津媛』というお茶を飲んでみる。とてもスッキリしていて、甘みも感じられる。全般的に私は東日本のお茶より、九州や四国の煎茶が好みである。このようなお茶が日本茶の主流にならないのは何故だろうか。それと今の日本茶消費量の減少とは当然関係があるのではないか、と思ってしまうのだが、どうだろうか。

 

既に時間は12時、Kさんがバス停まで送ってくれる。そこには軽食も取れる売店があり、ソマリアンカレーを売っていた。杣の里のカレー、ということらしい。Kさんがご馳走してくれた。この山中でカレーを食べる、何か濃厚な味がよかった。ギリギリまでKさんと話しをして、外へ出るとちょうどバスがやってきた。名残惜しいが次回また来よう。乗客はやはりいなかった。

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佐賀へ

帰りのバスも数人しか乗り降りしなかった。殆どの人が車を使う田舎社会。しかし車が運転できないお年寄りもいるだろう。子供たちが外へ出てしまえば、医者にも行けず、食料を買うのも大変な状況となる。限界集落という言葉をテレビでよく聞くが、この付近も段々そのような状況になっていくだろう。地域社会の相互扶助、古来行われてきたことが、今重要になってきている。そんな中で、Kさんたちの頑張りが、未来を切り開くのではないだろうか。

 

バスは順調に戻っていき、午後2時過ぎに羽犬塚駅前に到着した。そこからJR線で鳥栖へ。更に鳥栖で乗り換えて佐賀へ向かった。この車両はかなり新しく軽そうだった。この辺りはスイカではなく、SUGOKAというICカードが使われているらしい。その使用可能エリアは佐賀まででその次の駅はエリアを跨ぐそうだ。私は何とかスイカで佐賀まで行くことができた。

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途中の駅に吉野ヶ里公園というのがあった。佐賀の吉野ケ里、といえば、弥生時代最大の遺跡。青森の三内丸山遺跡を見たら、ここも見る必要があると思っているのだが、今日は時間がなく、無念にも通り過ぎた。次回はどうしても見に行くことにしよう。電車は3時過ぎに小雨の佐賀駅に着いた。

 

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