茶筅の街から宇治まで茶旅2015(2)高山町 茶筅工房からお茶室へ

お茶室へ

1時間ほど茶筅についての様々なお話を伺い、さてそろそろお暇するかと思って腰を上げると、『さあ、こちらにどうぞ』と言われ、家の奥に案内される。何とそこはお茶室であり、これからお茶が供されるというのだ。これにはビックリしたが、Iさんからここに来る前に、『お茶とお菓子付きで1,080円です』と聞いていた意味がようやく分かる。先ほどの部屋では確かにお茶は出てきたが、お菓子は出なかった。話に夢中でそんな事は全く気にしなかったが、お茶付とは、抹茶のことだったのだ。このような趣向は意外性があって、なんとも面白い。

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こちらでは、今回のような普通の訪問、工房見学の他、茶筅作り体験コースが用意されている。ここに来て、自ら茶筅作りを最初から最後まで簡単にやってみるらしい。谷村さんの隣で作業をしていた男性は、茶筅作りに興味があり、会社を定年になってから、この工房に入って、今やプロになっている。まずは一度体験し、身近に感じてもらうという趣向だろう。後継者不足の今日、このような取り組みも重要ではなかろうか。因みに茶筅の他、茶杓製作のコースもあり、何回も楽しめるようになっている。私は不器用だが、興味のある人には良いのではないか。

 

お茶室には掛け軸もかかっており、花も活けられている。外を見ると、小さな、きれいな庭がこっそりと隠れるように配置されていた。何とも言えない空間、居住まいを正し、畳に正座して待つ。お菓子が出される。そして茶碗に抹茶が淹れられて、運ばれてきた。谷村さんとお話しながら、お茶を頂く。一緒に行った2人は茶道の心得があったが、お茶を飲む作法も知らない私にも、丁寧に教えてくれる。実にゆったりした時間が流れ、心が静まって行く。30分後、立ち上がろうとすると、完全に足が痺れており、恥ずかしい思いをした。茶道の作法を学ぶ必要があると痛感すると同時に、正しく座る練習もする必要がある。

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偶にはこのような体験も必要だな、と思う。そして外国人にも人気がでそうな、茶筅作り+抹茶のプログラムであった。また茶事、茶懐石を食するコースなども用意されている。千利休が考案したとされる「茶懐石料理」、茶道の会合に供する懐石料理ということで、本格的な会食が可能である。実際大阪あたりから、意気なお客さんが、会合を兼ねて昼にやってくることもあるという。今や忘れられつつある伝統的な作法を守り、あるものは復活させること、谷村さんの単に茶筅を作るだけでなく、文化そのものを伝え、残していこうという姿勢が素晴らしい。

 

そして谷村さんの工房を後にした。車で大学まで戻り、そこで長野に戻るSさんと別れた。今回の思いがけない茶筅の旅はSさんの存在が非常に大きかった。このご縁は今後も大切にしていきたい。そして私は今度Iさんの車に乗り、京都に向かった。車を運転しない私にとって、日本の、特に地方都市を移動する場合、このような乗り継ぎをさせてもらえることは、時間や費用の節約にもなり、また新たなご縁も繋がり、とても有難い。朝方の高野山は小雨だったが、ここはいい天気だった。

 

2.京都

町家風ゲストハウス

車は1時間ほど走って、京都市内に入った。まずは今晩の私の宿に向かった。ネットで予約した京都駅のすぐ近くのゲストハウスだった。本当に駅からすぐ、こんなところに、と驚くような場所に、蔦が絡まった古い建物が建っていた。中に入ると、町屋風というだけあって、本当に古い家であった。そこに管理人の女性が2人おり、お客さんは殆どいなかった。

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部屋は2階で男女別のドミトリーになっていた。男子部屋はベッドが5つ、何となくいい雰囲気だった。今晩は客が2人しかいない、と聞いたので、ゆったりと過ごせそうでよかった。シャワーは1階に1つしかなく、トイレは男女別に2階にあった。キッチンもあり自炊も可能らしい。1階の居間でスマホをいじりダラダラしている人もいるようだ。管理人はテレビに見入っている。階段は急なので、年寄りの私には夜間の上り下りはちょっと辛そうだ。

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部屋には鍵は掛からない。そして建物の入り口にも鍵はかけていない。この辺は如何にも日本だな、アジアではあり得ないと驚く。管理人がいない時間も長くあり、その間はどうするのだろうか。実際翌日居間にいると、電力会社の人がやってきたが、誰もいなくても、中に入ることは出来てしまう。

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現在京都には外国人観光客が大挙して訪れており、それに対応して、ゲストハウスを含む様々な宿が急激に増加している。外国人が好む宿は、必ずしも駅前にあるのではなく、もっと京都らしい場所の近くにあるのではないだろうか。今回の宿は利便性が高いが、1ベッド3,000円は少し料金的に高いのかもしれない。次回はまた違った宿を探して泊まってみよう。

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