6月14日(金)龍神村で
朝は5時過ぎには目覚めた。というか、あまりよく眠れなかった。既に明るくなっていたので、外を眺めてお茶を飲む。6時には朝のお務めが始まる。前日同様、住職の英語が響き、我々はまた後から朝食会場へ向かった。朝ご飯は豆腐の他、海苔や漬物など、昔の日本の朝食だった。それから午前9時のチェックアウトまで、庭を眺めていた。殆どの宿泊客はあっという間にチェックアウトして見えなくなったが、ごく1部は連泊するようで、英語ガイドが迎えに来るなど、熱心だった。
9時過ぎに荷物を引きずり、街へ向かった。バスは9時55分発なので、その辺をぶらぶらしていたが、荷物が邪魔なので、早めにバス停に行った。するとすでにそこには数人の外国人がバスを待っており、日本人のおばちゃんに『ここで待っていれば、熊野本宮へ行けるか』などと聞いている。私と同じバスに乗るのはやはり全て外国人だった。横にいたオランダ人の若い女性は2か月日本を旅しており、仏教に興味があるという。
バスは何とかやってきて、高野山駅から乗っていた数人と合わせて13人が乗り込んだ。中国人カップルの2人以外は皆ヨーロッパ人だった。奥の院を抜けると、一路下りに入る。約1時間で護摩壇山に着くと、もう一台のバスが待っており、熊野方面から来た乗客を入れ替えて出発する。若い車掌と話していると『とにかくコロナ前から外国人が多かったが、コロナ後日本人は殆ど来なくなり、今日もあなた一人ですよ』と寂しそうに話す。そしてなんとか英語を使って乗客を捌いて行く。
聖地巡礼バスは、熊野に向けて再び出発した。そこから35分、私の目的地、龍神村に着いた。と言っても、ここには温泉宿だけがあり、周囲は大自然。そして何とここで40分ほどの休憩が入るというので、私はここで下車して、荷物を宿にチェックイン。再度外へ出ると、さっきのオランダ女性が車掌と話している。聞けば彼女、アクセサリーデザイナーのようで、この周辺の木に関心がある。何でもこの辺はチェーンソーアートが有名だとか。
バスが行ってしまう頃、今回お世話になるOさんが迎えに来てくれ、村の中にあるカフェでランチを頂く。何だかほっこりしたご飯で美味しい。Oさんはお客さんと挨拶しているが、その様子がかなり好ましい。彼は18年前この地に来て伝統的な豆腐作りを始めた人だが、既に完全に地元民になっており、好かれている。ただ近々ここを離れて新たな挑戦をする予定だと聞き、私が急遽やってきたわけだ。
そしてここでもう一人のサポーターにバトンが渡された。Mさんはここに移住してきて長い。今はキャンプ場などを運営されているというが、同時に龍神村の歴史、お茶にも関心が深く、10数年前から龍神ハートというグループで活動されていた。私がここを訪ねた9年前も確か龍神ハートの方に案内されたのをふと思い出す。
Mさんが連れて行ってくれたのは、丹生ノ川という場所。丹生と聞くだけでテンションが上がってしまう。四国愛媛にもあった丹生。確か島根にもあった地名だろうか。水銀と関係があるとも聞いたが、茶との関連を是非追求したい。ここに1本だけ大きな葉の茶の木が残っていた。確かに普通とは違う。後で聞くと、コウロ種ではないかという。このような茶樹はどこから来たのか、中国から渡ってきた可能性はないのか、実に気になる所だ。