福岡、長崎茶旅2022(3)八女で紅茶の歴史を

6月15日(水)三潴駅へ 

いよいよ博多を離れ、今回の主目的である八女を目指す。今回も茶旅に連れて行ってくれるOさんとは、8年前ここで出会った。待ち合わせ場所は西鉄三潴駅。昨日大宰府へ行った同じ路線を走っていくので気が楽だ。特急に40分ほど乗り、大善寺で乗り換え、三潴駅に着く。何とも小さな駅だが、三潴という名は明治初期、僅か5年間だけ三潴県という県名として見える。そして明所初期の紅茶製造の場として、この三潴が歴史に登場しているのだ。

Oさんと合流して、まず向かったのは黒木。酒屋だった旧松木家住宅がまちなみ交流館となっている。広い土間と立派な梁を持つ住宅。この辺に明治後期に紅茶試験場が建てられたが、すぐに緑茶伝習所に代わったとある。裏には矢部川が流れ、川沿いにおしゃれな病院があったが、あのあたりだろうか。

木屋で江戸時代からの庄屋だったというM家を訪ねた。今も庄屋さんの家という風情を残しており、庭には簡易のお白州が開かれた際の敷石がそのまま置かれている。この家には明治期、県の物産品評会で紅茶部門3等に入賞した賞状が残されている。ただ現在お住まいの方々も、『紅茶製造』については何も聞いておらず、これが短期に終わったことを示している。

八女市役所黒木支所に聞けば何かわかるかも、ということで、訪ねてみる。だが役所が把握している黒木の紅茶作りの歴史は限られており、特に我々が追い求めている明治初期紅茶を輸出した星光社については、分からないという。それでも色々とご尽力を頂き、ついにその方面に詳しい方を紹介してもらった。何とも有難い。昼は美味しい蕎麦を食べて英気を養う。

午後星野へ行く。8年前まさにOさんが最初に連れてきてくれた場所、そこに星光社の茶工場があったというのは驚きだ。その時訪ねたお茶屋さんは既に廃業してしまっていたが、何と偶然にもそこでUさんとばったり再会した。工場は星野川のすぐ横だったと分かる。数年前の水害で、この付近も大変な被害があったそうだ。

それから紹介された専門家の家を訪ねた。さすがに郷土史に非常に詳しく、星光社についても相当調べておられ、蚊に刺されながら、かなりの情報を入手した。星光社のメンバーは広い地域から集まっており、八女出身者ばかりではないことなども分かり、さらに調査を困難にはした。先方にも可徳乾三のことなど、こちらの情報を提供した。

八女市内に戻り、予約した宿まで送ってもらった。驚いたことにこの宿、『コロナ感染者の宿泊は固くお断り』として上で、『コロナ陽性が判明した場合、消毒費用などを別途請求』と書いている。ここまで厳しい規定をこれまで見たことはなく、自分が感染した場合はどうなるのか、不安を覚えた。

夕飯を探しに外へ出た。近くには古い木造住宅や江戸から続く工場などもある。ただ食事をするところが意外となく、最後はラーメン屋に飛び込んで済ませた。留学生かなと思える店員が一生懸命働いていた。夕日が落ちていき、今日一日の成果を思いながら宿に戻る。

6月16日(木)八女許斐園

宿で朝食を食べたがロクなものはなかった。食べている人はほとんどいないが、食券回収箱には券が積み上がっている。なんかの作業する人々が泊り、朝早く出ていたのだろう。

本日は江戸時代から続く九州最古の茶商許斐園を訪ねた。さすがに店舗自体が歴史であり、文化財であった。店主の案内で作業場、そして2階の座敷を見学する。ロシア語の蘭字が張られた茶箱が目を惹く。2階では様々な客が往来したらしい。江戸後期からここで文人煎茶なども行われ、あの田能村竹田らも集ったらしい。この地は九州交通の要所だったということだ。

幕末にはグラバーやお慶がこの地から八女茶の購入、許斐園は輸出製茶問屋として発展する。輸出が不振になると国内に回帰し、九代許斐久吉は玉露の生産、品質向上に尽力し、また『八女茶』の名称に統一してブランド化を図った。いずれにしても200年近い歴史を有するお茶屋は、日本にはそんなにない。そしてその歴史が分かるとなると更に少なく貴重だ。

もう少し質問を繰り出そうしていると、そこに地元ラジオの取材がやってきた。Oさんもラジオに出演しているので、その辺で話が盛り上がり、そのまま退散することとなった。また質問を纏めてリベンジしたいと思う。紅茶についても次回聞いてみることにしたい。

そこから八女の図書館へ向かった。やはり地元には資料があるのではと探してみると、いくつかあった。私とOさんは二人で来たので、二人分のコピーを取りたいと願い出たが、『規則で1枚まで』と頑強に言われる。同じ一人が2枚取るのは問題でも、欲しい人が二人きちんとやってきているのに、1枚しか取らせないという理屈には納得しかねるところがある。仕方なく午後コンビニでもう一枚を取るという無駄な作業を行った。

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