九州茶旅2019(1)阿蘇で突然通訳を

《九州茶旅2019》  2019年11月29日-12月3日

九州には1年に一度は行きたいと思っている。昨年6月に熊本、佐賀を旅したが、今年は7月に沖縄に行った。そしてここ3年間でまとめた『九州茶をシベリアに売り込んだ男』の話をついに地元熊本で話す機会を得た。ついでに佐賀でも話す。そして何だか福岡経由で大阪まで飛んでしまった。いつもながら予測不能な旅だった。

 

11月29日(金)
熊本へ

偶にはマイレージを使って国内線に乗ってみようと思った。羽田‐熊本の片道だからそれほどマイルを食うわけでもない。そしてよく見てみると、私には毎年アップグレードポイントなるものが付与されているのだが、今まで一度もアップグレードしたことがなかった。国内線だとちょうど持っているポイントでアップグレードできたので、プレミアエコノミーというのに初めて乗る。

 

座席は一番前。少なくてもここ10年、飛行機の一番前の席に乗った記憶はない。座席もまあまあ広くて快適。そのうえ、国内線エコノミーではドリンク一杯しか出ないのに、軽食まで登場した。乗り込んだらすぐに寝ようと思っていたのに、眠れなくなる。だが実はもう一つ眠れない要因があった。

 

若いCA二人が、私の斜め前でずっとおしゃべりしていたのだ。これまであまり見たことのない光景だった。カーテンの陰というならまだ分かるが、私が見える位置でだから驚いた。そして年配CAが来たので収まるかと思ったが、止めさせようともしない。確かにプレミアム席は空いていたから、やることはなかっただろうが、日本の航空会社もアジア化が始まったか。

 

ほぼ定刻に熊本空港に着いた。先日のウラジオストクのフライトと時間はほぼ変わらない。この空港、3年前に台風直撃の中、成田に向かって飛び立ったことはあるが、降り立ったのは初めてだ。そしてここで35年ぶりの再会が待っているはずだった。大学の1年先輩のTさんは熊本出身で卒業後は地元に帰ったとは聞いていたが、その後全く連絡を取っていらず、今回電話番号を聞いて連絡したところ、わざわざ空港まで迎えに来てくれるというのだ。

 

事前に最近の写真ももらっていたので、問題なく分かるだろうと思っていたが、何と出口で通り過ぎてしまったらしい。その原因の一つは、明日からちょうどハンドボール女子の世界選手権が熊本で開催されるそうで、私のフライトにもフランス語を話す選手たちが乗り込んでおり、彼女らを歓迎する人々が多かったからだろう。電話をかけてようやく再開にこぎつける。

 

Tさんの車に乗り、お互いの35年を埋めようと話し始めたが、それは簡単な作業ではなかった。卒業後のTさんの波乱万丈の展開だけでも今日中に終わりそうもない。それほど長い時間会っていなかったのに、一瞬にして昔に戻れるのはすごいと言わざるを得ない。下宿で一緒にご飯を食べたことなど、色々と思い出して、若かりし自分が蘇る。

 

周囲は既に暗くなりかけていたが、折角だからと阿蘇方面を走り、写真を撮ろうとしたが、残念ながら暗すぎて見えなくなっていた。それから田楽を食べようと、高森というところにある雰囲気の良いレストランに入った。囲炉裏がいくつかあり、そこで肉を焼いて食べた。向こうでは中国語も聞こえてきており、観光客もいるようだった。

 

いつの間にかお客は皆帰ってしまい、我々だけが話を続けていた。話しは尽きないのだ。ところが突然店の人が騒ぎ出し、こちらに向かって『車をぶつけられたみたいです』という。意味不明ながら急いで駐車場へ行くと、暗がりの中で、Tさんの車に別の車が微かにこすったらしい。

 

その運転手は日本人ではなかった。顔を見てすぐに中国語で話しかけると、相手は台湾人であり、彼らも店の人も言葉が通じたのでホッとしている。台湾人は高齢の両親を連れており、お父さんの具合が悪いので、一度宿に送ってから戻ってくるというが、律義に一人は残っていた。私は車を運転しないので、こういう処理には全く疎く、言葉が出来てもなかなか捗らない。

 

警察もやって来て現場検証と確認が始まった。若いお巡りさんは『いやー、助かります。多いんですよ、外国人の事故が』と言い、いつもは携帯アプリで会話していると告げた。レンタカー会社もちゃんと中国語対応の体制は出来ており、様々あったが何とか解決した。事故を起こした台湾人の方は、実にきちんとしたいい人たちで、『今度高雄に来たら寄ってくれ』などと言いながら分かれた。

 

思えば熊本辺りは戦前台湾に渡って仕事をした日本人も多かったはずだ、などと思っていると、店のおばさんも『うちの主人も台湾生まれで、その両親は花蓮で・・』などと話し出す。明日の講座で話し内容にも、熊本ではロシア語や中国語が話せる人が戦前は沢山いた、というくだりがある。

 

Tさんに熊本駅前に予約した宿まで送ってもらった。何とも有り難い。もっともっとその後の出来事を聞いていたかったが、それは次回にしよう。そういえば、明日の夜、東京では大学の同じクラブのOB会が開かれるので、早々にTさんについて報告を入れておいた。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です