香港で茶旅を語る2019(3)普通話で茶旅を語る

4月4日(木)
普通話で茶旅を語る

今朝は冬粉とトーストを食べる。これにインスタントコーヒーと言えば、茶餐庁のメニューだろうか。我が4人部屋に何と日本人の若者がいた。彼は地元から香港直行便の第一便に乗ってやってきた。鉄道オタクでもあるようで、これから西九龍から深圳まで繋がった高速鉄道に乗りに行くというのだ。

 

だが中国は全く初めてで言葉も通じない。お金だけは何とかしたいと、スマホを取り出し、微信支付を設定したが、肝心の資金を入れることが出来ないと困っていた。そこで私が通訳して、隣の中国人の若者に入金をお願いしてみた。ところが何度やってもやはり入らない。表示には『この口座は身分証が未登録』と出ている。今中国で外国人が旅するのは本当に難しい。仕方なく彼はその辺に両替に出掛けていった。果たして彼は深圳で目的を達成しただろうか。

 

早めのお昼に出た。旧知の林さんとランチ。指定された地下鉄駅で待ち合わせて、上に出てすぐ近くの林さんお勧めの店に入る。そこは何と咖哩牛腩の店だったのでかなり驚いた。よほど食べたい念力が効いてしまったのだろうか。でもせっかくだし、嫌いでもないので、何も言わずに食べてみる。これはカレーがインド風か、サラサラ。咖哩牛腩にも実は色々な種類があることを知る。

 

林さんとは中国昔話などで、いくらでも話のネタがある。1970年頃に中国の空気を知っている人はそう沢山はいないのでとても参考になる。しかもキューバまで行き、スマホを無くした話まで出てくるから、実に面白い。物事は多角的に見ないといけない、とつくづく思う。

 

林さんと別れて、近所で本屋を探す。奥様からのリクエストである、2019年版の香港街道地図を買いに行く。昔はその辺の新聞スタンドでも売っていたと思うのだが、今はこんな本を買う人などいない、という雰囲気が漂っている。確かに私ですら、もう香港の地図は買わない。全てスマホ地図で済ませている。奥様は毎年これを買い、コレクションしているようだが、いつまで出版されるのだろうか。

 

MTRに乗り、クントンに向かう。前回12月にも行った昔の繊維工場ビルを目指す。しかしなぜか道を反対に歩いてしまい迷う。この辺が老化現象の際たるものだ。一度通った持ちを忘れるはずがない、という思い込み。マズい!途中、今日開店の『紅茶』という名のレストラン?があったが、英語名は『Red Tea』と書かれており、妙に印象に残る。

 

ビルに到着して3階に上がる。今日の茶会の準備が進んでいる。更に上の階で画家の個展が開かれているというので見に行ってみる。カナダに渡った香港人が描いたもので、元は実業家らしい。日本にも何度も行っており、日本の風景もちょくちょく描いているという。

 

午後3時から5時まで2時間、私の茶旅のトピックスと、日本茶の簡単な歴史を紹介した。参加者は20名程度。こちらの会社の社内研修のようなものだから、と言われて参加したのだが、お茶好きの香港人、そして日本人を前にパワーポイントを使い、何と普通話で話し続けた。これまで多くのセミナーでお話ししてきたが、これだけ長い時間普通話だけを使い続けたのは初めてだろう。かなり緊張した。

 

そして何より驚いたのは、香港財界の大物である、83歳のこちらのオーナーも最初から最後まで参加され、途中からは色々お話ししてくれたことだった。お茶が好きだという熱意には驚く。福建出身で先祖は茶貿易に携わっていたというが、彼自身は繊維、不動産開発の成功者だ。彼の娘と息子も同席し、新茶、緑茶を特別に飲ませてもらい、なかなかない体験をさせてもらった。

 

何とか茶会は終了したが、お茶好きさんからの質問を沢山受けた。香港茶の歴史もいつか調べてみたいと思うようになる。会が終わると、今日の茶会をアレンジしてくれたTさん、そしてそのお知り合いのUさんと共に、今回私のTさんを紹介してくれた、20年来の知り合いであるNさんを訪ねて、お礼を言いに行った。

 

Nさんとは近年何度も会っているが、仕事の話も殆どしたことはなく、勿論仕事場に出向いたのも初めだった。彼はサラリーマンから独立して、今や香港日本人の成功者だ。そのアパレル会社の名前に『Tea』とあったので驚いたが、よく見たら『Team』だったので笑ってしまった。今の私には見るものすべてTeaに見えてしまい、反応してしまうのだ。もうバカの領域ではないかと自嘲するしかない。

 

夕飯はイタリアンに行った。イタリアにもよく行くTさんは店員のイタリア人にイタリア語を使っている。そう、香港とはこうだったんだ。東洋と西洋との接点、と言った雰囲気があったものだが、今や東洋、いや中国の影ばかりが見えてしまい、ちょっと残念だ。そういう私も視野は随分と狭くなっているのを肌で感じている。

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