沖縄で突然茶旅2018(6)ブクブクー茶を点てる

すっかり暗くなった夜、今日の夕飯はどうしようかと思ったが、思い切って丸亀製麺にチャレンジした。このチェーン店ならわざわざ沖縄で食べなくてもよいだろうと言われそうだが、沖縄での麺の硬さをどうしても試してみたかった。それは過去、武漢、台中、ホーチミンで食べた物と比較したかったからだ。勿論沖縄は日本領だが、食文化までそうなのか、一つの試金石になると思った。

 

土曜日の夜、街道沿いにあるきれいなお店にはお客がかなりいた。沖縄でも一定の人気があることが分かる。釜揚げうどん+鴨汁+おいなりという組み合わせにしてみる。うどんは完全にコシがあり、海外の麺とは違っている。『沖縄の人も内地と同様コシのある麺が好きなんだ、沖縄そばにしても、フニャフニャしていないし』とつぶやいたが、Hさんは『そうとは限らない。このうどんは内地のものだと思って食べているかもしれない』という。なるほど複雑だ。因みに丸亀製麺は沖縄本島に7軒あるようだ。

 

1月14日(日)
突然ブクブクー茶

翌朝はゆっくり起きる。今日は日曜日で特に予定もないので、図書館にでも行こうと考えていた。そこへ老舗ちんすこう屋の女将さん、Aさんよりメッセージが入る。『本日11時に那覇市識名の沖縄そば屋にて』と書かれていた。実は昨日会ったTさんが繋いでくれたご縁だった。しかも『安次富順子さんと一緒に行きます』と書かれているではないか。

 

安次富順子さんと言えば、琉球沖縄食文化研究家で、且つ何よりも戦後ブクブクー茶を復活させたご本人だった。先日図書館でそのご著書を拝見していたが、まさか今回お会いできるとは思っても見なかった。ご縁というのは何とも凄いなと思う。

 

まずは県立図書館へ歩いていく。今日は少し暖かい感じなので、腰の調子もよく快適に進む。15分位で近くまで来たところ、公園があった。何気なく見てみると、そこは『沖縄県立農事試験場跡』と書かれており、1930年前後にここに設置されたらしい。1961年には移転したとあるから、30年ばかりの間、この街中に試験場があったことになる。今は木々が生い茂る公園だ。

 

その先に沖縄県立図書館があった。そこの2階には沖縄関連書籍が並んでいると、先日Nさんから聞いていたので、一度は訪れようと思っていたのだ。今年の4月からは新館移転作業のため、休館になるとも聞いていた。図書館はかなり規模が大きく、なにより広々としていてよい。

 

2階に上がると、本がずらりと並んでおり、検索をかければ沖縄関連本が沢山見つかった。だが先日訪れた名護の茶業誌を探したが、見付からない。図書館書士の女性に聞いてみると色々と検索してくれたが、結局ここには所蔵されていないと分かった。ところが少しすると彼女は『名護の図書館にはあるようです』と言って、わざわざ他の図書館まで検索してくれ、その結果を知らせてくれた。何とも細やかなサービスで驚いた。ここにはコピーを取りたい内容が豊富にそろっており、コピー機の前にいる時間が増えた。

 

その作業を終わると、11時を過ぎていた。約束時間が11時半に変更になっていたが、初めての場所なので急いで向かう。歩いて15分程度のようだったのでまた歩き出す。大きな道を行き、それから坂を上り、何とか時間前に着いたが、その店にはすでに行列が出来ていた。てんtoてん、というそのお店は人気店のようだった。Aさんを見つけて一緒に中に入る。

 

安次富さんも来られており、店の中をドンドン歩いていき、階段を下りて、一番奥の席に座った。色々とお話を伺おうと思ったが、まずは資料を頂き、更には『実際にブクブクーを淹れてみましょう』と言われたので、さすが料理学校の先生だな、と感心する。このお店はゆかりのあるところだと言い、普通は中で作ってもらうのだが、特別に道具一式を持ってきてくれた。

 

そして突然、『茶筅でかき回して』と言われ、目の前の大きな茶筅を持ち、大きな大きな茶碗に向かう。軽くかき混ぜたが変化はなく、『もっと強く』というので、かなりの力を入れてみると、意外とバランスがとりにくい。これはかなりの技術がいると分かる。何度もやっていると少し泡が立ってくる。これがブクブクー最大のポイント、泡立ちだ。この泡を掬い取り、小さな茶碗(既に小豆が入っている)に移す。飲もうとするがうまく吸えず、こちらにも技術がいる。

 

この泡を立てるためには、技術より重要なものがある。水だ。そのため、ブクブクーを復活させる際はどの水を使えばよいか、那覇近郊の井戸水などを1つずつ調査したという。何しろ戦後50年余り、もう知る人もなくなった茶を復活させる苦労は並大抵ではない。安次富さんとお母様などで、努力を重ねた結晶だ。因みに戦前はブクブクーと呼んでいたが、今では茶を付けないと沖縄の人も分らないという。

 

1つ言えることは、富山のバタバタ茶とは同じ振り茶の系列だが、その成り立ちは明らかに違い、また茶道ともい一線を画すことだ。その独特な手法と成り立ちは他に例を見ない。そしてその起源は謎のままだという。中国などでも見たことはない。ブクブクーは一体どこから来たのだろうか。

 

お見せで頂いた沖縄そばは思った以上に美味しかった。木炭すぱ、麺はこしのある沖縄そばで、かつお出汁のスープは抜群に美味い。古代米おにぎり、というもの、モチモチしていて旨い。何故この店が行列していたのか、それはブクブクーではなく、この麺が目当てだったのだ。納得!Aさんには本当に感謝だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です