杭州・安徽・北京茶旅2017(7)胡同を歩いて思う

6月26日(月)
北京散歩

翌朝は早起きてして、暑くならないうちに、懐かしの散歩ルートを歩いて見る。建国門には昔の気象台、古観象台があるが、今日は月曜日で上に登ることは出来ない。社会科学院(元科挙試験場)から胡同に入り、四川省弁事処を抜けていく。ここの四川料理は今もうまいだろうか。

 

北に進路を取ると趙家楼飯店というホテルがある。ここは五四運動で学生が押し寄せた場所として、今もプレートがはまっている。その向かいには梁思成夫妻のサロンがあったはずだが、既に10年前には取り壊され、未だに再開発が行われている(いや開発が止まっているのだろう)。

 

その辺から古い建物は残っているが、住人は減っている感じを受ける。一部は改修という名のもと、取り壊しが進んでいるようにも見える。ここまで地価が高くなった北京で、この立地は誰もが望むところだろう。外交部路の協和病院宿舎のようにホテルとして使われるならよいが、胡同の家に住みたい者も少なくなっているかもしれない。

 

お爺さんが日向ぼっこをしている横で修繕工事が行われていた。その横には人が集まっていた。見ると薬局だった。老人だけが残っている状況の今、この胡同に必要なのは薬局と医者なのかもしれない。それも高価な物は買えないので、伝統的な庶民の薬。胡同の明日が見えるような風景だった。

 

北京二十四中という学校の前を通ると、大勢の人が門の外にいた。何事かと門に近寄ると『考試』という文字が見える。大学入試統一試験、高考は今や日本でも知られるようになったが、その一つ前、高校受験がちょうど行われているようだ。中国の、特に大都市における受験競争の激しさの一端を見る思いだった。そして何より、子供や孫の合格を願って外で待っている親や祖父母の気持ちに思いが至る。

 

実はその横にもう一つの行列を見つけた。こちらはカメラを向けると皆が顔を隠した。何の行列かとみると、清朝時代の総理衙門のその建物は信訪室と書かれていた。ここは地方から出てきた人々が中央政府に何かを訴える窓口になっている。地方では解決できない問題が増えているのだろう。学生も陳情者も厳しい戦いを強いられている。胡同でこんな場面に遭遇するとは思いもよらない、これも北京散歩の面白い所だろう。

 

最後に蔡元培故居を少し覗いて、金宝街を歩いて、地下鉄の駅を探す。香港ジョッキークラブが作った北京ジョッキークラブはまだ存在していた。北京にこれがあってよいのだろうかと昔は思ったものだが、今はどういう位置づけなのだろうか。中国と香港の立場も大きく変化している。

 

お昼は現在連載している人民中国の王総編集長を訪ねて、西へ行く。最近は地下鉄も増え、6号線が近くを走っているらしいが、私は未だにバスで百万庄を目指す。オフィスでは初めて私の文章を担当してくれている銭さんも会えた。それから社内食堂でご飯をご馳走になる。いつも素朴だが美味しいご飯でよい。

 

帰りがけに、魯迅博物館に寄ったが、何と月曜日で閉館。この博物館、一般企業のオフィスもあるようで紛らわしい。白塔もお休みで、何も見ることは出来ず、1番バスで故宮など主要観光地をぐるっと回って、雍和宮に向かった。そこでTさんと待ち合わせていたのだ。Tさんは東京の大学を卒業後北京で勉強し、今は北京の大学で教えている。こういう人材が北京で活躍しているのは喜ばしい。

 

雍和宮は中国最大のチベット仏教寺院。過去何度か中に入っているので、今回は門の写真だけを撮る。それから孔子廟の方へ向かう。ここも観光地化が進んでおり、門の前を通り過ぎる。今や一世を風靡しているシェアバイクがあちこちで横行しており、緑豊かな通りをゆっくり歩くのは危ない。

 

夏の北京の風物詩と言えば、西瓜ではないだろうか。私が北京に住んでいた頃は、街中に小型トラックで西瓜売りがやってきて、ごろごろした西瓜が山のように積まれていた。そして値段も驚くほど安く、甘みもあった。だが最近この光景を見ることはない。トラックは街中に入ることができないのだ。それに代わって目に付くのは、水果店という小さなお店。これがそこいら中にあって驚く。しかしこの店は実は大資本によるチェーン店らしい。実際買ったバナナは美味しくなかった。若いうちにとった果物を大量に購入して、全国にばら撒く。これで美味しい訳がない。あの美味しい北京の西瓜はどこへ行けば食べられるのだろうか?

 

疲れたので観光地化された道のカフェに入ってみる。胡同とは無縁のおしゃれな様相。カフェラテやフレーバーティは置いてあるが、アイスティはメニューにない。だが注文すると作ってくれた。料金はラテの半分だから客単価を考えてメニューに載せないのだろう。決済は勿論スマホ。全てが経済だ。

 

夜は知り合いの陸さんと久しぶりに会った。場所は胡同の中にある工場跡らしい。そこの庭がとてもいい感じ、白人さんが夕日を浴びながら食事をしていた。我々もそこでビールを飲みながら、かなり寛いだ。日が暮れてもきれいなライトアップがあり、実に良い雰囲気が醸し出される。北京も変わったのかな、とふと思う。

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