富山から静岡まで茶旅2017(2)朝日町 旅するお茶会

7月5日(水)
2. 朝日町
バタバタ茶再び

翌朝はホテルに朝食が付いているので、そこで食べる。和食・洋食の両方があり、それなりに充実している。昨日のサービスと考え合わせると、このホテルのコスパはかなり高い。全国チェーンのようなので、またどこかで泊まってみようと思う。そう思わせるホテルはそうは多くない。

 

今朝は雨も上がり、天気はよさそうに見える。Yさんの車で、富山から朝日町に移動した。電車で50分ぐらいかかるところ、高速に乗っても1時間ぐらいかかっていた。途中で雲行きが怪しくなるなど、やはり山の天気は変化が大きい。まあ雨が降らないだけよいか。車はなないろKANに入る。

 

その駐車場の向こうには朝日町歴史公園があり、その脇には茶畑があった。ここがバタバタ茶の原料を供給している場所。4年間でさぞや育ったことだろうと思っていたが、意外やそれほどでもなかった。やはり寒い場所は育ちが遅いのだろうか。後で聞くとやぶきた品種の半分が枯れてしまい、2年前に別品種を植えたのだという。

 

因みにその品種、富山らしい名前の『富春』を選定し、指導したのは、武田善行先生だという。その時はただ有名な先生が来られたのだなと思っただけだったが、まさかこの20日後にタイのチェンライの茶旅でご一緒することになるとは、まさに茶縁というのは恐ろしい。

 

次に車で連れてきてもらったのは、バタバタ茶伝承館。ここには4年前も来ている。以前より黒茶生産を中心的に行っている元町役場のHさんとも4年ぶりに再会したが、私のことは覚えていなかった。そしてその茶作りの苦労、プレッシャーは相変わらず続いているようだった。あと1か月もしないうちに今年の茶作りが始まるが、気が重くなっているのだろうか。

 

一方朝日町のPRを託されたKさんは、非常に熱心な人。バタバタ茶を精力的に売り込んでいる。ここに集うおばあさんたちとも仲良くしている。ご老人たちは賑やかに煮出した黒茶を五郎八茶碗に入れて茶筅でバタバタ泡立たせている。先日テレビ番組の収録で松岡修造もやって来たとか。おばあさんたちはいつも明るく、楽しそうにその時のことを語る。相変わらずお当番が持ってくる漬物がうまい。お茶を飲みながら、バクバク食べる。

 

お昼前に伝承館を失礼して、ランチに向かう。この辺の名物ということで、たら汁を食べるために、海岸近くの道路沿いのお店へ。4年前もそうだったが、ここ朝日町には山もあるが海もあるのに、今回も海を見ることはなかった。ヒスイ海岸も一度は見てみないといけない。

 

たら汁はスケソウダラをぶつ切りにして、味噌で煮込んだ料理。元はこの辺の漁師が船上で食べていたものだが、今はこの付近の海水浴客などに提供して、評判だとか。この道路はたら汁街道とも呼ばれ、何軒もの店がたら汁を出しているそうだ。ただ今やたらの水揚げは激減し、北海道産などで作られているらしい。美味しく頂き、まんぷく。これで午後お話などできるのだろうか。

 

旅するお茶会
朝日町の古民家カフェにやって来た。実に良い感じの雰囲気が漂う。ここで午後と夜の2回、お茶会が開かれ、その中で茶旅のお話をする予定となっている。ただ正直一体どんな人たちが聞きに来てくれるのか見当もつかない。しかも最後はバタバタ茶のお話をすることになっているが、このお茶の歴史、国立国会図書館にも出向き、何冊もの本を読んでみたが、どうしても謎が解けないまま、今日を迎えてしまう。恐ろしい。

 

この古民家の一族であり、京都でお茶屋さんと風水師をしているTさんが美味しい台湾茶を淹れてくれることになっている。これは心強い。しかもバタバタ茶に使われる黒茶と酷似していると言われている広西の六堡茶をわざわざ持ってきてくれ、飲み比べまでしてくれた。これは参加者にもわかりやすい。

 

参加頂いた方々、地元朝日町は勿論、富山市など富山全土から集まって来られ、2部とも満員盛況で驚きだった。東京では毎週のように多くのお茶会、セミナーが開かれているが、地方ではその機会が少ないということだろうか。それなら、私のような旅人は旅のついでにお話しする、旅芸人に徹してもよいのでは、と思わせてくれるほど、熱気があった。

 

北京で一緒だったコーヒー屋のRさんとも再会した。昨日飲んだ富山紅茶の会の代表Sさんも来てくれた。学芸員の方、茶道などお茶に関連する方、文化関連のイベントを開催する方、など、思いもよらない人々が集まり、一緒にお茶を飲んだだけでも嬉しかった。また機会があればぜひやりたいな、と思う。

 

因みにセミナーの内容はバタバタ茶にまつわる幾つものネタを披露し、まるでパズルのピースを出すように提供。後は地元で考えてくださいというものだったので、お役に立ったかどうかはわからない。ただ言えることは単にお茶の話をするより、地元にまつわる内容の方が当然ながら興味が沸くだろうということ。バタバタ茶の謎についてはお茶からのアプローチだけでなく、歴史学、言語学、地政学、文化人類学など、様々な観点から切り取ってみると更に面白いと思う。4年に一度ぐらいその成果を発表できれば嬉しい。

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