偶には香港を旅する2017(2)長洲島でお爺さんに再会

地下鉄に乗り、金鐘へ向かう。昔の知り合いヘレンに連絡を取ると、ちょうど彼女が所属する財団でパーティーがあるから来ないかと誘われた。折角なので出向いてみると、大都会の喧騒とは別世界の場所がそこにあった。非常に驚く。久しぶりに香港社会の一面に触れた。

 

しかしヘレンは見当たらず、待っても来ないので、勝手に見学を始める。今日のパーティーは展示会のオープン記念。創作的な芸術の世界を歩いていると、向こうにヘレンが見える。周囲には数人の日本人がいた。香港人やイギリス人もいる。無国籍状態で会話が弾む。これはヘレンのなせる業だ。お茶の関係者を紹介してもらったのは有り難い。

 

夜は尖沙咀へ移動して、その昔香港で一緒に過ごした人たちと会食する。もう20年以上前の知り合いだが、彼らは未だに香港にいる。脱サラして起業に成功した、また現地採用として、長らく職を得ている、など、私は見れば、好きな香港に居られて、良い環境で生きているように見えるのだが、最近の激しい変化には、かなり厳しい面もあるようだった。

 

3月11日(土)
長洲島へ

今朝はゆっくりと起き、ゆっくりと朝食を食べた。土曜日ということか、朝食を食べている人々にもゆとりがある。香港は衰えたとはいえ、スピードが命の場所。1日半で結構疲れている自分を発見した。このホテルとは今日でおさらばということで、荷物をフロントに預けてチェックアウト。

 

MTRに乗ってセントラルへ向かう。そこからスターフェリー乗り場方面へ。観覧車が寂しそうに回っている。何となく活気のない香港。それはどこから来ているのだろうか、気のせいだろうか。今日は久しぶりに長洲島へ行くことになっている。あの5年前の衝撃的な訪問以降、ずっと温めてきた題材に一つのケリをつけに行くということだろうか。

 

Yさんが同行してくれるのは有り難かった。何しろお爺さんは広東語しか話さないので、通訳は必須だった。フェリーの料金は何となく少し値上がりしているようだ。まあ、5年前との比較をしても意味がないほど、香港の物価は上がっているのだ。土曜日ということもあり、乗客は多い。

 

長洲島に着くと、やはり多少はオシャレになっている。取り敢えずお爺さんは元気かどうか確かめに、ベビー服屋へ。この辺にも2週間ほど滞在したことがあるので妙に懐かしい。服屋に変化はなく、おばさんもそこにいて、顔を見るとすぐに思い出してくれた。そして『お爺さんは元気だが、少しボケて来たよ』と言いながら、午後ここで再会する段取りをしてくれた。何とも有り難い。

 

そこでまずは腹ごしらえと、港の方に戻る。海鮮が名物だが2人だと多いかなと歩いていると、その昔ここで体調が悪かった時に食べたお粥屋が見えた。どうしても食べたくなり、そこへ入る。1938年創業などと書いているがどうなんだろうか。粥は相変わらずに美味しい。我々が注文すると、もう店仕舞いだ。昼までしかやらない。安くてうまい、これが一番。

 

再び服屋に行ってみると、お爺さんは既に来ており、満面の笑顔で迎えてくれた。既に90歳になっているが、足が少し悪いだけで元気そうだ。彼がプーアルの熟茶製法を初期段階で考案したと5年前に聞いていた。その後中国でもその話が広まり、今では有名人になっている。早々に、プーアル茶に歴史について、色々と確認させてもらった。広東プーアルの元祖との関係などもよく分かった。やはり一部、記憶がはっきりしないところがあり、娘であるおばさんが聞き返したり、補足してくれたりしたが、いずれにしても貴重な、生の話には価値がある。

 

ただこういうインタビューというのは実に難しいものだ。お爺さんは生き証人だから、彼が言った言葉は事実になっていく。しかし時には記憶違いもあるだろうし、また元々の思い違いさえもあるかもしれない。これをどう生かして、真実に近づけるのか、また一体何が真実なのかを理解するのは至難の業だ。私はノンフィクション作家には絶対になれないな、と以前から思っている。

 

1時間半ほどお話を聞いて、記念写真を撮って、退散した。お爺さんは初めて会った時と全く同じな笑顔であった。今度はいつ会えるだろうか。それから島の中を少し散歩した。桜の花が咲いているか見に行ったり、Yさんの知り合いに教えてもらった開放日の学校に闖入したりもした。ふらふら歩いているとすぐに時間が経ってしまう。本当は他にも行くところがあったのだが、次の予定が決まり、急きょ島を離れたのは、ちょっと残念だった。

 

偶には香港を旅する2017(2)長洲島でお爺さんに再会」への2件のフィードバック

  1. 中国側ではすでに、“熟茶第一人,卢铸勋”という呼称が定着しているようで、なにより嬉しく思います。須賀さんに日本語で色々教えて戴きたいと思っています。
    ご苦労さまでした。

    1. こちらこそ、茶旅のヒントを頂き、感謝しております。また何より熟茶の歴史について、更に専門的な考察が加えられることを期待しております!

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