極寒の湖南湖北茶旅2016(6)1日に2度、湖南省へ行く

ここに来た時から王さんのお知り合いの政府関係者が同行していた。やはり地方史を研究している公務員だった彼には各地に知己が多いらしい。少し早いがここで昼ご飯を食べていけ、と言われれば、彼らのメンツを立てて、ご飯を頂くことになる。ここの川でとれた魚などが出てくる。万里茶路の水運の起点、新店ではその昔茶商が魚を食べただろうか。

 

 

羊楼洞

それから車で1時間ほど乗り、羊楼洞という表示が見えた。その付近には平地に茶畑が広がっている。政府の実験茶畑のようだ。平地なので茶葉の大量生産が可能であり、それでこの場所がえらばれたのだろう。品質よりも産量が求められていた、そういう時代が長く続いたことだろう。

 

羊楼洞の街へ到着した。前回来ているので、見覚えのある場所がいくつもあったが、車は真っすぐ、趙李橋の工場の前へ行く。ただ今回も中へ入ることはなく、横の販売所で資料探し、説明を受ける。トワイニングが1981年に社創立200周年の記念に作った米せん茶が展示されていた。トワイニングの歴史の中、このブロック型紅茶があるということだろうか。

 

それから付近のお茶屋で、趙李橋のお茶を安く買っている。さすが中国的。趙李橋の茶は内モンゴルでよく飲まれているのだが、これからもずっと飲まれ続けるとは限らない。恐らく方向転換を迫られているだろう。高級路線にちょっと厳しいかな。漢族は飲むだろうか。

 

古街も歩いた。これも前回同様だったが、今回は天気が良かった。天気が良いと同じ風景も随分と違ってみえる。人間の目というのは恐ろしい。いや、恐らく1年前と比べても改修するなど、きれいにしたところが多いのではないだろうか。萬さんはここに何度も来ており、馴染みの店に入ったりする。その店の女性が、来たお客さんには無料でお茶を振る舞っているので、メディアなどにも取り上げられているらしい。

 

私一人ならすぐに歩き終わるこの古街を、皆で回ると1時間以上かかるから面白い。写真家の劉さんは勿論、じっくりカメラを構えており、研究者の王さんは、プレートなどを確認している。どこかに見落としがないか、皆念入りに仕事をしている。私のようなフラフラ旅している訳ではない。

 

古街を突きあたり、もう行くところがないから引き返そうとしたが、萬さんはその先へ進む。そこには万里茶路の起点という石碑があった。最近できたものが一応参考まで写真を撮る。その向こうは公園のように見えたが、その中にも石碑がある。1950年の朝鮮戦争時に建てられた病院があった場所だとある。そしてそこには日本の看護師が100名近くも働いていたとの記述があり驚く。どのような経緯でここまで来たのか、傷病兵も看護師もこんな所まで来るのは如何に大変だったことか。意外なものを見てしまい、胸が騒ぐ。

 

車だと色々なところへ行ける。もう一つのせん茶ブランド、洞荘の工場にも寄ってみた。案内がないと中には入れないが、ここの立派な門を潜って眺めた光景はなかなか良かった。近年の黒茶ブームで、皆息を吹き返しているのだろうか。工場もきれいに感じられた。それにしてもドンドン南下しているようだが、今日はどこに泊まるのだろうか。

 

夕暮れが迫って来た。ちょうど羊楼洞大橋を渡った。ここから先は湖南省だという。今日2度目の湖南だ。こんなことはなかなかないな。そして臨湘市の市という場所に着いた。ここに何があるのだろうか。人がいない役所のようなところで待つと、誰かがやって来た。老人がいる。王さんの古くからの知り合いらしい。研究者のようで、お互いの最近の著作などを交換して、話がはずんでいる。だが私にはその言語は良くは聞き取れなかった。さすがに方言がきつい。

 

真っ暗になった道を行く。今日の宿は道沿いのレストランの上だった。まずは食事をする。夜はかなり寒いので、温かいなべ物などが出て心身ともに温まる。食事をする部屋も狭くて、返って都合がよい。寒い時は皆で丸くなって鍋を囲む、何だか日本を感じさせる。それから上に上がり、部屋に入る。最初は21部屋と言っていたが、結局11部屋になる。お客は省外から出稼ぎに来たと思われる3人の若者のみ。

 

夜はここで持ち込んだお茶を飲みながら話をする。皆さん経験豊富だから色々な話が出るが、専門的だったり、内輪の話過ぎたりでよく分からない。今朝は早起きで疲れていたので、先に休ませてもらう。部屋にはなぜか麻雀卓があり、ここが泊まる場所というより麻雀部屋になっていることが分かる。

 

1223日(金)
茶工場へ

 

翌朝は早く起きたが寒いので部屋にいた。萬さんなどは散歩していたようだ。8時頃になり、皆で麺を食べに行く。中国は朝ご飯に麺がある(粥は無くなりつつある)のが有り難い。その後散歩していると、民族楽器の太鼓を引っ張っている人に出くわした。街の人々で楽団を結成しているという。今日はその練習日だとか。折角なので見学に行く。昔の映画館の建屋にやってきたが、団員がまだ集まっておらず、後でまた来ることに。

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