ようやく熊本・宮崎茶旅2016(4)五ヶ瀬の釜炒り茶

駐車場から階段を下りていくと、そこには何とも雄大な景色が見られた。川がかなりの速さで流れ、岩がごつごつとしており、樹木が鬱蒼と生い茂っている。紅葉のシーズンなどはさぞやきれいだろう。今や中国にはこのような風景は見られないような気がする。いや、日本だって、早々あるものではない。雨で濡れる道に足を取られそうになりながら、その眺めを堪能した。

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「天孫降臨とは、日本神話。邇邇藝命(ににぎのみこと)が、天照大神の命を受けて葦原の中つ国を治めるために高天原から日向国の高千穂峰へ天降ったこと」を指すようだが、それが実話なのかどうか、そしてこの降りた場所が、現在の高千穂町であるとは確定できないようだ。それでも日本史がここから始まったかもしれないことに、ちょっと感慨があるのはなぜだろうか。

 

ちょうど昼時になり、腹が減ってきたので、駐車場付近に戻り、空いている店に入る。そばと地鶏のセットを食べる。まあ、観光地の昼ごはんだが、地鶏は歯ごたえがあった。それから高千穂を出て、今日の目的地、五ヶ瀬へ向かう。車で僅か15分位だが、これがバスに乗ろうとするとほとんどないので大変だ。実は明日宮崎市へ向かう予定で、ここからバスに乗る算段をしていた。

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五ヶ瀬の釜炒り茶

Y夫妻は昨年も五ヶ瀬に来たという。それは単なる旅だったが、宿で飲んだお茶があまりに美味しかったため、その生産者を急きょ訪ねたというのだ。それが今日訪問するM茶房だった。五ヶ瀬の役場を通過したところ、横断幕にM茶房が全国茶品評会で農林水産大臣賞を受賞したと書かれていた。この付近ではとくに有名な茶農家だと分かる。かなり平たい場所に茶畑が広がっていた。

 

忙しいとのことだったが、Mさんは待っていてくれた。聞けば、午前は四国から阿波晩茶の生産者さんや研究者の方が来られていたらしい。私が昨年3月に四国の後発酵茶を回ったことを話すと『それなら午前中から来てもらえばよかった』と残念がる。役所に就職して、週末にお茶作りをしている青年も一緒にいた。Yさんが言う、『M茶房には色んな人が出入りしている』というのは本当だ。それはMさんの魅力が大きいのだろう。

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M茶房は昭和の初期に茶作りを始めた。こちらでは農薬や化学肥料は一切使わず、30年以上やってきたという。Mさんは4代目。基本的に緑茶、それも釜炒り茶に力を入れてきた。日本では珍しい。高度成長期に皆が蒸し製の煎茶に切り替えた時に、ここだけは昔のままの作り方が残ったという。釜炒りというと、佐賀の嬉野が有名だが、一昨年訪問してみると、もう釜炒りしている農家は殆どなかった。日本に釜炒りが初めて持ち込まれた場所としては有名だが、生産現場は既に違っていた。

 

茶畑をゆっくり見学した。ちょうど小雨が上がり、フラフラ見て回る。標高700m程度の場所に、色々な品種が植えられており、平たい土地ばかりではなく、斜面もあった。平地の茶樹は密集しており、傾斜地の茶畑は美しかった。無農薬なので草取りが大変だという。茶工場もかなりの規模があり、古い製茶道具も置かれており、歴史が感じられる。手前に販売所、奥に試飲室があった。その試飲室に入り、実に沢山のお茶を一気に飲ませてもらった。

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こちらも持参した茶葉を出して、一緒に試飲してみる。茶農家は他の人が作った茶を飲む機会が多いとは言えず、このような場で比較してみるのは面白い。釜炒り茶だけではなく、紅茶も作られていた。昨日訪問した熊本のKさんのお茶にも興味を持っていた。『今年はKさんのところを回ってここにくるお客さんが多い』というのだ。国産紅茶への関心の高まりがそうさせるのだろうか。

 

M茶房では、日々ここで様々なお茶にトライしている。釜炒り茶、紅茶だけでなく、ほうじ茶、烏龍茶まで作っている。一見飄々としたMさんだが、そこに独特の感性があるように思える。そうでなければ、数多くの賞を受賞することなどできないだろう。ただそれがどこにあるのか、外見や話からでは分からない。そして日々の活動を見ないと、何も出てこないようだ。ただただ楽しい日々と過ごした。

 

山の民宿

天気は今にも雨が降りそうだ。M茶房を辞して、すぐ近くにある民宿へ移動する。今日は三連休の中日、Y夫妻が昨年宿泊した農家民宿は予約が取れずに、観光案内に紹介されたこの宿に泊まることになった。何だかちょっとロッジ風。雰囲気がよい。ベッドの部屋と畳の部屋があるようだが、私は一人で畳の部屋に入る。窓から外を眺めると山のいい景色が見えた。それだけで満足。

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外に出て茶畑の写真を撮る。遠くにワイナリーが見える。ここ五ヶ瀬ではブドウが採れ、ワインの製造もしているらしい。高原野菜も美味しそうだ。雨が止んでいたので、そのまま付近を散歩した。予想以上に茶畑があり、その風景は美しい。そして夕飯は豪華。刺身、山の焼き魚、そして和牛まで登場した。宿泊代はそれほど高くないのに、こんなに立派な夕飯でよいのだろうか。昨日、本日の反省をしながら、楽しく夕飯を頂き、そのまま話し込む。10時近くにやっと引き上げたが、それまで片づけを待ってくれていた宿の人には申し訳なかった。

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