茶旅の原点 福建2016(2)黄檗文化促進会

福州街歩き

ホテル騒動があったが、さて今日はこれからどうするのか。実は決めていなかった。知り合いの福建人から人を紹介されていたので、その内の一人と微信で連絡を取ると、『ちょうどいい。今晩会おう』と言ってくれたので、それに従う。これが中国らしくて、気ままで有り難い。ただ指定された場所はちょっと分り難かった。タクシーがなかなか捕まらず、ようやく見つけても、その場所がわからずまごまごした。

 

何とそのレストランは日本食。台湾で日本食を学んだ福建人が開いたらしい。私が会った陳さんは日本への留学経験もあり、日本食が好きなようだ。台湾的にアレンジされた日本食はまずまずだった。なぜか高校生のお嬢さんも同席している。彼女もアニメなど日本好きだという。どうやら彼が食事をとらせる役目になっていたようだ。日本から来て最初の食事が日本食とは、面白い。

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食後は三坊七巷を歩く。福州の古い街並みを再現した場所。夜はきれいにライトアップされている。ジャスミン茶の第一工場、福州茶廠というのがあった。勿論茶葉を売る店。昔のジャスミン茶作りの写真が飾られている。ジャスミン茶は福州の名産、昔ここでしか作られなかったお茶。金日成が送った記念品なども置かれており、その歴史が感じられた。

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硯や石を売る店にも入る。日本でも人気の寿山石というのはここ福州の産。実は福州から日本へは実に様々な文化が海を渡っているらしい。この街を歩き、陳さんに話を聞くと、一層それを感じる。陳さんは実は天目茶碗を扱っている。天目茶碗も福建のものだが、今や国宝級の茶碗は日本に5個あるだけ。中国にはないのである。それを今、中国で再生しようとしている。

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422日(金)
福清へ

朝はホテルの横にあるモスバーガーで食べる。ホテルの宿泊客は10元でセットが食べられるのである。ただ勿論日本のモスほどおいしいという感じはない。それからホテルの向かいにある魏さんの店、紅茶屋へ行った。魏さんとは10時に待ち合わせていたが、他の用事があり、遅れていた。お茶を飲んで待つ。このお店、中国中の紅茶を扱っており、見たことがない、珍しい紅茶もあるので楽しい。

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そこへ微信でメッセージが来た。昨晩お世話になった陳さんからだった。『今から福清に行く』というもの。実は本日午後福清を訪ねる予定だった。やはり福清出身の陳さんが車で連れて行ってくれるという有り難いお話があり、魏さんと会った後、向かう予定にしていたので、ホテルをチェックアウトして、荷物を持ってきていた。それにしてもなぜ急に?

 

実は本日お訪ねする黄檗文化促進会、お知り合いの紹介で連絡を取ったのだが、陳さんもそこのメンバーであり、会長の林さんから『ランチまでに来るように』との指示があったという。何でも重要なランチらしい。それで陳さんが急いで迎えに来てくれた。魏さんには事情を説明して、明日会うことに変更した。何とも慌ただしい出発だった。福清までは車で小1時間、高速道路で空港へ行く方向だった。

 

2.    福清
黄檗文化促進会

その建物は福清の街の外れ?にあった。高級なマンションが立ち並ぶ中に建つ会館。黄檗とは仏教の1つの宗派。我々が京都に行けば、JR奈良線の宇治駅の隣が黄檗という駅であることに気が付く。そこはこの福清の地にある黄檗宗万福寺の隠元禅師が江戸初期に日本に渡り、開いたお寺だった。隠元禅師と言えば、隠元豆の名前が残っているが、一般の日本人は殆ど知らない存在だ。

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この黄檗宗、福建省では古来信仰されてきた宗派だというが、全国区ではなかった。中国でも隠元禅師が広く知られているのかは不明だ。だが、彼は日本の江戸期に様々な文化、文物を日本にもたらした。美術・建築・印刷・煎茶・普茶料理、隠元豆・西瓜・蓮根・孟宗竹(タケノコ)・木魚などは彼がもたらしたものと言われている。お茶の関係では、煎茶の祖とも言われている。勿論今の煎茶ではないが、宇治の万福寺では年に1度、全国煎茶道大会が開かれている。

 

促進会は昨年正式に出来たばかりだという。ちょうど昨年自民党の二階氏が率いた日本の代表団3000人が北京を訪れた際、習近平主席が、この隠元禅師の話を持ち出したことから、急速にその歴史の発掘、文化の伝承などが行われ始めたらしい。まさに中国の文化は政治である。しかしその政治と経済がなければ文化や歴史は忘れ去られる、それもまた中国である。福建省での勤務の長い主席から隠元の名が得れば、地元はそれを活用して、広めていく、当然のことではあるが、我々には違和感もある。

 

ただ会館内の展示はしっかりしており、分かりやすい。そして林会長以下、皆さん、非常にまじめに取り組んでいる。発掘された茶碗の鑑定が行われている。その一方では皆さんが書画を実に自然にさらさらと書いている。こういう点では、中国の底力は凄いな、といつも感じる。文化を語ってはいても、私など、書の一つも書けないし、詩などを詠むこともできない。ましてや骨董を見る目などない。林会長は私に『これが中国の伝統的な煎茶だよ』と言って、茶葉を煮出して、淹れてくれた。煎茶とは何か、をもう一度考えてみたい。

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