夜も6時を過ぎ、次の約束の地へ向かう。ところがタクシーで来たため、ここがどこかよく分からない。この時間ではタクシーも捕まらない。仕方なく、歩いていくとようやく地下鉄の駅が見えた。しかし既に待ち合わせの時間に遅れそうである。ここから中山公園まで乗り、乗り替えて行くようだが、よく見るとここから2駅先で降りて歩く方が早いかもしれない。それに賭けた。結果として、それが正解で、何とか時間通りレストランに着いた。
今晩は東京で行っていた寺子屋チャイナの主要メンバー2人が上海転勤になっており、久しぶりに会うことになっていた。こんな会合は喜ばしい。後から新聞社特派員のKさんも参加して、上海情報を交換し、なかなか愉快な飲み会になった。上海の日本人は減っている、とのことだったが、まだまだ沢山の駐在員がおり、新しい人たちがやって来て、活躍している。
それにしてもこのレストラン、地元の庶民的な店で、味もまずまずだったが、夜9時前には店員たちが賄い飯を食べ始めた。我々は7時半に集合したので、あまり時間のないまま、解散となる。もっと遅くまでやればいいのに、とは思うが、繁華街からちょっと離れた店では、夜半のお客は見込めないのだろうか。いや、飲んだくれにダラダラいられても困るのだろう。
Hさんと一緒にホテルの方に戻った。彼は何とホテルの目の前の大きなマンション群に暮らしていたのだ。『日本人は確実に減っている』と彼は言う。日本企業も撤退を進めているが、中途半端な対応で、そのスピードは上がらず、結果として撤退コストが増大している。中には内部の不正が発覚するなど、今や本社の経営を揺るがしかねない会社も増えている。『外から見ると日本は何とも危うく見える』、その言葉が実に重みを増してくる。日本国内の議論の空虚さよ、何とかならないのか。
6月2日(火)
浦東で
上海最終日。外は雨が降っていた。今日は浦東へ行ってみる。既に高層ビルが立ち並び、上海を象徴する場所であるが、その中心街へ行くと、煌びやかな香港のショッピングモールそっくりの造りのビルがあり驚く。シティースーパーやペニンシュラーチョコなど、テナントもほぼ同じ、まるで香港をここへ移築したようで、既に香港など敵ではないという上海の自信、が感じられる場所だった。
ここにあるカフェで旧知のGさんと再会した。彼はいつの間にか上海駐在となっており、前回の香港以来、久しぶりに会った。上海の明るさはズバリ、『習近平政権への支持の高さ』『株式市場の高騰』、『資金が上海に集まる状況』などにあると明確に教えてくれた。勿論中国政府は『日本のバブル崩壊』に関しても詳細な研究を行っており、日本の巷で騒がれる『中国崩壊論』はあり得ない、という。その後の株式市場の暴落?により、上海の明るさに変化はあっただろうか。バブルは崩壊するのだろうか。そんな簡単な話ではなさそうだ。
午後は時間が空いたので、茶葉市場へ行ってみる。上海には茶城と呼ばれる市場がいくつもあり、よく分からないので、適当に検索して、新しい場所を探す。地下鉄1号線に乗り、延長路駅で降り、大寧国際茶葉市場なるところへ行く。雨の日の午後、お客は全くおらず、お店側のテンションも最低だった。確かこの茶城は2007年に開業し、取引量は上海一、と聞いていたのだが、茶葉の取引自体が低調なのだろうか。あまりに元気がなく、試飲すらせずに立ち去る。
雨が降る中、向かいの公園が気になった。閘北公園、入り口には急須のモニュメントがある。そして入っていくと陸羽の座像まであった。どういうことだろうか?そして入場無料の公園を奥へと歩いていくと、今度は清朝末期の革命家、宋教仁の墓があった。宋は湖南省出身で、日本にも亡命、北一輝などと交流した。清朝が倒れた後は国民党を立ち上げ、大統領制ではなく、議院内閣制を主張したが、上海駅で暗殺された。臨時大統領の袁世凱に嫌われた結果と言われているが、一部には孫文との対立の結果とも噂された。今は愛国者として位置付けられている。何故ここに墓があるのだろうか。
そしてホテル付近に戻る。雨が強くなり、外を歩くのは大変なので、喫茶店で時間をつぶすことにした。最初に入った、香港によくあるチェーン店は何とVPNが機能せず、コーヒーを飲んで早々に退散した。次にスタバに入るとかなり混んでいたが、何とか席を確保、VPNも繋がり、検索しながら、この旅を振り返り、旅行記を書く。上海でもスタバだけはVPNが機能すると聞いたが、何故だろうか。システムが違うのだろうか。スタバのカフェラテは1杯、30元。東京よりはるかに高い600円を出してネットを繋ぐ、やはり面倒な上、高い。
雨に降られながら、スーツケースを2つも持って、空港へ向かう。地下鉄2号線を延々と乗って行くと、途中駅で下ろされ、向かいの電車に乗り替えをする。そのホームはなぜかものすごく混んでいたが、最後の駅まで乗る乗客は海外へ行く人だけ。上海もどんどん郊外に住処が移っていることが分かる。約1時間半、料金は僅か7元で空港に着くと、後はスムーズだった。そして飛行機に乗り、荷物を引き取るための旅、バンコックへ向かったのである。