カンボジア旅2022(5)奇跡のベンメリアへ

今日の部屋は昨日の宿とは全く違い、実にシンプルだが、必要な物はすべてそろっており、断然良い。腹が減ったので周辺で店を探すと食堂があった。入っていくと愛想のよい店主が英語でオーダーを取る。今日はポーク焼そばだなと思っていると、おまけに目玉焼きを乗せてくれた。麺はインスタント麺、美味い。2.5ドル。

近所の寺を見学していると雲行きが怪しくなる。慌ててスーパーに入ってドリンクを調達した。勘定しようとしたが、持っていたドル札はやはり受け取ってもらえない。古いものは銀行でも受け取らず、既に流通していないという。私の持っているドル札は6年以上前に使ったものだから、それも当然かもしれない。ただどれが使えないのかを私は判断できないことだった。今やアジアで米ドル札を使うのはカンボジアぐらい?なので、必要性は薄れている。

宿に戻ると激しい雨が降り出した。昨日と同じスコールかと思って部屋から外を眺めていると、向かいのレストランはいずれも中国人経営のようで看板は漢字だ。これだけ中国人観光客を当て込んで作った店は果たして生き延びられるのだろうか。この午後、雨は全く止まず、暗くなっても降り続けた。疲れてしまった私は雨の中を外へ出る気もならず、そのまま部屋で過ごし、寝てしまった。

9月27日(火)ベンメリアへ

朝は晴れていてホッとした。朝ご飯もビュッフェで、昨日のようなこともなく、ゆっくりと食べられてよかった。宿を出るとトゥクの運転手が何人も客を待っていた。彼らと値段交渉する必要がないだけでも助かった。いや今はGrabがあるから、吹っ掛けられればそちらへ行けばよい。彼らのターゲットはGrabを使わない外人客だけになっている。

ミニカブ?は順調に走っていく。ベンメリアはアンコールワットよりはるかに遠く、50㎞は走らなければならない。途中道は平たんだが、何度も大きく曲がる。何となく『The Long&Winding Road』という言葉を思い出し、その音楽が頭を流れていく。その時、『そうだ、私が本当に会社を辞めようと思ったのは、このベンメリアへ行く道』だったのだと分かった。車は音もたてずに、ただただ前に進んでいく。

1時間半ぐらいかかってベンメリアに着いた。チケットを買おうと売場を探したがない。窓口があったので聞いてみると、アンコールワットと共通券なので、不要だと言われる。トイレに行くところにベンメリアだけのチケットは0.5ドルと書かれていて驚く。次回はベンメリアだけにしようか。しかし車代を考えれば、同じか。

ベンメリアはアンコールワットより古い11世紀ごろの宮殿跡。アンコールの仏教と違い、ヒンズー教の影響を受けており、寺院もある。今は廃墟となり、その一部が整備され、見学できるようになっている。日本ではジブリの『天空の城ラピュタ』のモデル舞台だとも言われており、日本人観光客には人気があったが、今はほとんどいない。

いつものように廃墟を眺めていると、男性が『こっちだ』と声を掛けてきたので、その後に従った。彼は軽々とがれきを乗り越え、中へ入っていく。恐る恐る従っていくと、どんどん奥へ突き進む。雨も降ったので石が濡れていてかなり怖いが、面白みも出てきた。崩れた建物を潜り、西から東まで中を歩いた。普通の観光客は全く入らないエリア。なぜ彼は私を誘ったのだろうか。一部ヒンズー寺院の跡にレリーフが落ちており、図書館跡という建物も見える。

運転手との約束は1時間後だったが、まさにぴったりのワイルドツアーは終了した。そこへ日本人の男女がやってきたので少し話したが、彼らは周囲を散策しただけだった。私にも何か特別な物が付いていたのだろうか。そういえば、『会社を辞める決断』もアンコールではなく、ここで廃墟を見ながら、思ったことのように感じられた。奇跡のベンメリア、と私は名付けている。

それから運転手の案内で、街に近い3つの寺院を回った。ここも共通券があれば無料で見られるので寄っただけだが、意外と面白い。ベンメリアよりさらに古い9世紀頃の遺跡。傷みが激しく修繕中の建物もある。その横を通ると作業員が英語で話し掛けてきて、修繕の様子を熱心に語ってくれた。彼はこの遺跡に誇りを持っている。実にすばらしいことだ。

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