西の果てカシュガルへ行く2012(1)シンセン 香港からカシュガルへの遠い道

《新疆カシュガル散歩》

2012年2月10-15日

昨年8月に初めて行った新疆ウイグル自治区。何となく危険な香りがするその場所に私は嵌ってしまった。美味しい食事、楽天的なウイグル族の人々、美しい風景、どれを取っても、それは素晴らしく、また中国ではなかった。

また行きたい、という思いは直ぐに通じ、A大学N教授より「また行くよ」の一声で私は乗ってしまった。しかも今回はまた未知の世界、カシュガルへ。否が応でも期待は高まる。

しかし、私はその時点で香港に滞在している。お世話になっている大学もある。東京にも用事がある。それをクリアーできるのか。香港から中国に行くことは想定内だが、正直新疆は遠過ぎる。それでも行けるのは運しかない、いや運命しかない。そして運命は私に新疆を指差した。

2012年2月10日(金)

1.シンセン   (1)   シンセンまで

前日午後の飛行機で東京より香港に戻り、ラマ島の自宅に辿りついたのは夜中の12時半。溜まったメールを処理して寝たのは午前2時。そして8時に起床し、準備を整え、重い荷物を持って再びフェリーに乗り、香港大学へ。大学の階段を喘ぎながら進み、そして日本企業研究のゼミに出て、またセントラルへ。そこから九龍駅へ行き、そして。

何とも長い旅をして、初めてシンセン空港行きのバスが出るという九龍駅バスターミナルを探す。そこはイメージしていたターミナルとは異なり、エレメンツと言う綺麗なビルの中に切符売り場があり、あっと言う間にチケットを買い、下に降りると直ぐにバスに乗り込み出発する仕組み。やはり香港の合理的な処理は早い。

バスは普通の大型バスで乗客は7割程度。中国人と香港人は半々、外国人は欧米人の夫婦が2人と私。バスがスーッと出発すると、私も昨晩までの疲れがドッと出て、直ぐにスーッと眠りに着く。どこをどう走ったのか分からず、目を覚ますと国境に着いていた。ここまで約40分。

バスでは何のアナンンスもなく、荷物を持っていくのか、どこへ行くのか、そしてその先でどうするのか、全く分からない。中国人が同じ疑問を聞いてきたが、答えられない。この辺は香港の悪い所。知っている者がどんどん進み、知らない者は確認しないと先に進めない。

取り敢えず荷物を持ってシンセンと書かれた建物に入る。そこは広々とした空間で大量の出国者をてきぱきと捌いていた。ここで数人の日本人がいるのを確認。続いて中国側の入境。ここでは中国人は早いが外国人は相当ゆっくりとなる。またイミグレカードが相変わらず備えられておらず困る。

それでも合計20分で中国側へ出る。ここは一体どこか。ようやく見つけた名前はシンセン湾。これまでのイミグレよりは香港側と中国側の距離が近く、スピードが速い。そしてバスチケットを出してバスを探すと、直ぐに出発。昔は自分が乗って来たバスに乗らなければならず、探すのも大変、誰からイミグレで引っ掛かると待つのも大変だったが、この辺が合理的な運営に変わっていた。

国境から30分弱でシンセン空港に到着。今日は取り敢えず空港ホテルに泊まるのだが、その場所が分からず、また困る。地下鉄駅の方へ行くとその向こう側にホテルがあり、無事に到着。

(2)   シンセン空港周辺

ホテルは外見は古そうだが、内装は立派。最近経営が変わったようだ。英語で話し掛けると一人の女性がきびきびと応対。部屋に入ると結構立派な作りで、驚く。これで2300円。しかし聞いてみるとこの部屋はダブルルームで結構高い。普通のツインならばもう少し安くなるのかもしれない。いや私の予約には朝食が付いていなかったが、朝食付きで同額か。ネットはケーブルで簡単に繋がり、快適。風呂はシャワーしかないが、部屋が暖かめなので、問題はない。ベットもフカフカで久しぶりに快眠できそう。

取り敢えず腹が減ったので外へ出る。外は非常に寒く、新疆行きの服装がそのまま通じる。ホテルの周囲を見渡しても何もなかったが、もう少し入って行くと、そこは昔の中国の街。シンセンも空港を別にすればこの辺りはまだまだ田舎である。

簡単に食べようと思い、探すと、「木桶飯」と言う字が見える。面白そうなので入ってみると、皆米櫃に箸を入れて食べている。回鍋肉飯を頼むとスープと共に米櫃が登場。下は米、上におかずが乗っている。決して質が良いとは言えないが、これで12元なら安いか。一人でご飯を搔き込んでいる人が多い。出稼ぎ者だろうか。

又歩き出す。今度は潮州料理が目に入る。既にお腹は一杯だが、あの潮州料理の鴨肉、内臓系には目が無い。思わず入る。15元で、大盛りの御飯に汁が掛かり、その上に鴨、鳥の内臓、などが乗る。ウマい。が、とても食べ切れない量だ。残念。

この店、店先で肉を切り、鴨や鳥を吊るしている。お客がどんどん入ってくる。繁盛している。小さい女の子がおばさんに絡み付くが、おばさんは忙しい。母親だろうが、構っている暇がない。女の子はいきなり店先に走り出し、しゃがむと、おしっこを始める。そうか、トイレに行きたかったのか。既に街は暗くなっており、公衆トイレに一人ではいけない。すっきりした顔で戻ってきた彼女、うーん、ちょっと寂しい。

その日は翌朝に備えてシャワーを浴び、早く寝ようとしたが、こんな時に原稿の依頼やら、参画しているプロジェクトの案内を出す羽目に。結局11時過ぎに寝る。しかし快適過ぎてか、夜中に起きる。

2月11日(土)

2.カシュガルまで   (1)   空港出発が

朝早く起きた。これからネットが繋がるかどうか不安なので、早朝からメールをやり取りする。気が付くと6時を過ぎて出発の時間に。チェックアウトし、空港までのシャトルバスを待つが、待っていたのは30元で行くVIP車。断って歩き出す。昨日来た道なので慣れた感じ、10分弱で到着。既にかなりの人混みだったが、何故か海南航空の空いているカウンターがあり、直ぐにチェックインできた。荷物検査台では、これまた何故か傘を出すように言われる。分からない振りをしてみたら、「かさ」と日本語で言われる。日本人には傘を出す意味が分からないだろう。

非常に順調に搭乗も出来た。フライトは満席。後は出発を待つのみ。ドアも閉まった、さあ。ところが、出発しなかった。エンジントラブルらしい。一度出掛かった機体は元へ戻る。そして音がしなくなる。不安が過る。機長からアナウンスがあり、当分出ないことが分かる。するとCA達は慣れた様子で、あっと言う間に暑いお茶を配る。そして30分後には機内食も出してしまう。こちらが心配になる素早さである。しかしこれが中国だ、乗客の不満を和らげる一番の方法は先ず口に物を入れること。これは鉄則であろう。実に見事。そして1時間45分後、機体はゆっくり動き出し、離陸した。

私の隣には小学生が二人、折り重なるように寝ている。彼らはどうやら家族でシンガポール旅行へ行った帰りらしい。旧正月の休みは今週までのようだ。周囲に子供たちが多いのはそのせいか。中国の地方都市の人々も海外旅行を楽しむようになってきている。

ジャスト3時間で蘭州に到着。このフライトは安いのだが、その分時間が掛かる。全員が一度飛行機から降ろされ、ターミナルへ。遅れているためか、実に素早い対応で20分後には機内へ戻る。よく見ていないと置いて行かれそうな雰囲気。そして一部乗客が入れ替わって出発。私の横の二人は今度は座っているのに飽きてきて、活発になるが、私に被害はないので好ましく思う。蘭州からウルムチまできっちり2時間掛かった。



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