中国最北端を行く(5)漠河 零下37度 早朝死の彷徨 

3.漠河

客のいないホテル

車で市内へ。特に何もない道を行く。すぐに街に入った。街が異常にきれいで、街並みが揃っている。何だか不思議だ。この辺ではいいホテルだという金馬飯店に入る。確かにいいホテルだったが、人気は全くない。

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直ぐに昼飯へ。N教授が『魚が食べたい』というので、頼んでみたが、これがなかなか美味い。氷を割り、その下を泳ぐ魚を釣ってくるのだという。脂が乗っていた。熊の肉も出てきた。この辺でも珍しいらしい。豆腐も美味い。この北の果て、食事には問題がないことが良く分かってホッとした。辺境ではあるが、ここには少数民族はいない。ロシア人もいない。純粋な漢民族の街なのである。

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食後、先ずは鉄道駅へ行った。ここは中国で一番北にある駅だという。一日1便が通るらしい。貨物駅としてそこそこ機能しているようだが、正直景色は寂しい。ここからロシアへ繋がっていれば貿易なども生まれるのだろうが、残念ながらこの先もう1つの駅で途絶えている。漠河の位置づけが、ロシアではなく、中国国内に向いていることを示している。

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家具工場突撃

石炭を積んでいる場所へも行ってみた。未だに石炭の採掘はあるが、価格が大幅に下落しているので、採算は合っていないように思われる。夕暮れ時、黒々とした石炭が積まれている光景は異様。雪も積もっており、下は凍っていて滑る。

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運転している宋さんの親戚に『この辺に企業はないか』と聞いてみたが、うーんと首を捻る。そして、そういえば、という顔で車を進める。車はランドクルーザーである。そして暗闇の中、工場の前に着いた。いきなり中へ入れろ、というと、警備員がどこかへ電話し、『既に工場は閉まっている。車で回るだけならよい』ということで、1周した。木材が積まれており、どうやら家具工場らしい。この辺で切り出された木材で家具を作る、ということか。

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夜はとても静かなホテルで熟睡する。そして翌朝の夜明け前を狙い、5時半に起床。いよいよこれまで体験したことのない、寒さの中に踏み出してみる。

 

2月18日(火)

零下37度 早朝死の彷徨

外へ出るとまだ暗い。そして思ったほど寒くはない。勿論ダウンの上にオーバーコート、下にはズボンの上にオーバーズボン、靴下を重ね履き、そして足先ホカロンも入れて完璧な服装だった。

 

『夜明け前が一番寒い』という言葉通り、息は白いを通り越して、メガネは曇って見えない。デジカメは最初の10分で電池が凍結、動かなくなる。大通りには結構人影があるが、どうやら全て観光目的の人だ。地元の人は敢えてこの時間に外出はしない。

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20分ぐらい歩いて行くと、かなり疲れてきた。Mさんからは何度も『20分歩いたら、戻るのにも20分かかることを計算して歩いてください。ハルピン氷祭りに来る日本人に何度言っても守らずにヘロヘロになる人がいます』と言われ、分かっているつもりでいた。それでも人間は、頭でわかっていても『もう少しは大丈夫』などと思ってしまうもの。

 

戻ろうと思った時には、既に頭の思考が止まりかけていた。今来た道をただ戻るだけなのに、ホテルの場所が分からなくなる。周囲の人は外から来た人で聞いても分からない。体はどんどん疲れてきて、頭はどんどん重くなる。道はシンプルなのに、間違ってしまう。N教授が言う方向が正しかったのだが、冷静な判断力もなくなっていた。

 

歩き疲れてホテルにたどり着いた時、既に50分が経過していた。完全に時間オーバーだった。私はまだよかったが、N教授は『もう少しで死ぬかと思った』と声も絶え絶えだった。特に足先がやられていた。急いで足先ホカロンをつけると、血の気が戻ってきた。北京でHさんに教わったこと、これがどれほど役に立ったことか。先達は必要、ということだ。

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デジカメも壊れたかと思ったが、暖かい部屋の中で徐々に回復してきた。完全に電池が固まってしまったようだ。人間もカメラも、これだけ寒いのは想定外だということ。改めて自然の怖さ、寒さの恐ろしさを体験してしまった。

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