カンボジア・タイ 国境の旅2016(7)緊張の地雷処理と村の未来

地雷処理の現場へ

そして雨が上がり、ついに地雷処理の現場を見学するため、外出した。村の郊外の野原、というか、何もない丘で、そのデモンストレーションは行われた。ダマイナーたちが先導して、3種類の既に除去した地雷を穴に入れ、そこに導火線のついた爆薬を使い、爆破する。我々はその現場まで見たうえで、車が停まっている、かなり離れた場所まで下がり、更には防弾チョッキをつけて、待機した。じわっと汗をかく。これにはかなり緊張した。 

少し待っていると、突然大音響とともに、噴煙が上がった。ただ我々の位置からは正直よく見えず、丘の向こうに砂塵が上がるのが少し見えた程度だった。聞くところによれば、このような爆発音は反響の関係で、近場よりむしろ村の方が大きな音が聞こえるらしい。爆破はほんの一瞬の出来事だった。少し時間をおいて、また現場へ向かう。既に跡形もなくなった地雷を確認するためだった。しかしこの人海戦術で、一体どれだけの地雷が処理できるのだろうか。地雷は何百万個と埋まっているという。

 

機械ではできないのか、犬を使えないのか、など色々な研究がなされているらしい。この現場を見れば、機械が求められていることがよくわかる。と同時に、これだけの地雷をよくも埋めたな、と感心してしまうほど、その数は多く、今後いつまでこの処理に時間が掛かるか、全く分からないというのも、何とも言えない心持がする。しかも世界にはカンボジア以外に多くの国にいまだに地雷が埋まっており、その被害に遭う人々がいるという事実も、胸に突き刺さる。

 

帰りに、仏塔の前で停まる。ここは7名の方が亡くなった事故の慰霊塔だという。Tさんたちが資金を工面して建てたものだった。『一番端は自分の骨壺の場所だと思っている』と語るTさんにとって、この事故は一生涯消えないものなのだろう。中には7名の写真が掲げられており、女性も3名含まれていた。幼い子供など、家族を残して逝った人々の思いは計り知れない。隣のお寺がこの慰霊塔の供養をしてくれているという。ちょうどそこではお坊さんが信者に水を体にかける、荒行のようなことが行われていた。

 

慰霊塔の横に階段があり、丘を登れるようになっていた。階段はかなりあり、相当疲れてしまったが、やはり高校生が元気だ。スイスイ上っていく。下には平原が広がっている。この一帯はポルポト軍がやってきて、政府軍もやってきた。更にはベトナム軍までがやってきたという。ポルポト軍は国境を越えてタイまで逃げ込んだが、その際、地雷を埋めて行ったらしい。中国とベトナムの戦争である中越戦争、ベトナムの主力がカンボジアに行っている間に中国が仕掛けた、と思い出す。

 

のどが渇いたので、村の喫茶店に入った。皆さんがにこやかに迎えてくれ、飲み物を頼むとフルーツが出てきた。ここで採れた物らしい。そして楽しそうにTさんと談笑している。さりげなく生きる人生、何だかこんな夕方がよいな、と思ってしまう。結局飲んだり食べたりしたが、代金は受け取られなかった。これで商売になるのかと、心配になってしまう。

 

車は村から少し外れた。そこに小さなゲートがある。『ここも国境だよ』とTさんが説明する。この国境、カンボジア人とタイ人は通ることができるが、我々は越えられない。こんな国境がこの付近にもいくつかあるようだ。実にのんびりと、トラックが国境を越えていく。以前はカンボジアの木材がタイに運ばれたが、今は禁止されている。一体何を運んでいるのだろうか。

 

事務所に帰ると今日も日本語学校が開かれている。日本の高校生二人が教室に入り、生徒と交流を始めた。自己紹介したり、日本のことを話したり。でもこれが意外と難しい。結構苦労している。だが同じ年代の若者たち、すぐに打ち解けてしまう。昨日のおじさんとは大違いだ。授業が終われば、一緒に記念写真を撮り、サッカーに興じている。ついには、皆でどこかへ遊びに行ってしまった。

教室では昨日からどうしてか気になって女の子が一人いた。あまり口をきかず、しかし真っすぐに前を見ている子。皆が縄跳びを始めるが、その輪に加わらず、じっと見ているだけ。私が縄跳びを渡そうとしても、首を横に振る。シャイなのか、と思っていると、彼女は実はサッカーがしたかったのだと分かる。何とも真っすぐな性格、自分のやりたいことを無意識に持っている。とても芯が強い。

 

その子のお母さんが、フルーツをプレゼントしてくれた。あのぬかるんだ道の家、上の子が日本に留学している子のお母さんだった。ということはあの子は妹なのか。姉が途轍もない頑張り屋で日本にまで行った。決して豊かではない暮らしの中で、感謝の気持ちを忘れない。この母子を見ているとなぜだか、未来があるな、と感じてしまった。そして愛媛にいるお姉ちゃんにもぜひ会ってみたいと思う。

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