神奈川茶旅2020(1)小田原から足柄茶へ

《神奈川茶旅2020》  2020年8月25日-27日

7月にあるはずだった東京オリンピックは1年延期となり、何となく7月、8月と過ぎていった。この間どこへ行くでもなく、鬱々とした生活を送っており、体調も捗々しくなかった。このままではどうかしてしまうと思い、また原稿にも差しさわりが出てきたので、近県へのショートトリップを敢行することとなった。

8月25日(火)小田原で

朝の電車に乗るのは実に久しぶりだ。コロナ、コロナと騒いでおり、オフィスワークの7割削減を叫んでいる都知事をしり目に、電車はいつも満員らしい。勿論学校が休みなので、幾分緩和されているが、7割削減などあり得ない。もし本当にそうしたいのなら、先ずは首相や知事がオフィスに出ないで、リモートワークしている様子を見せるべきだ。そして記者会見などもすべてリモートで行うべきだ、と考えるのは、私だけではあるまい。それができないなら、リモートワークなど絵に描いた餅、企業に対する無理強いに過ぎない。日本は完全なデジタル後進国なのだから。

少しでも混雑を避けるため、京王線を新宿方面と反対に乗り、京王永山から小田急へ切り替え、小田急線下り電車で小田原を目指した。小田原駅は静岡方面に行く時によく通る駅だが、実際にここで降りて観光するなど、近年は一度しかなかった。その日も雨でほぼ何もできなかった思い出しかない。

駅で日本茶インストラクターのWさん、中国茶荘を経営しているMさんと待ち合わせた。そこへ小田原在住で茶作りもしているTさんが迎えに来てくれ、4人旅となる。先ずはお昼ご飯を食べに行くらしい。車窓からは小田原城が見える。ここは改修後、まだ行っていないが、今日はとても時間がなさそうだ。

ちょっと行くと、箱根板橋というところに古めかしい建物があった。下田豆腐店という90年の歴史ある豆腐屋だったが、既に閉店となっていた。そこへ何と、インド料理を出す店ができたというのだ。中に入ると、何とも立派な揉捻機や乾燥機が置かれており、紅茶が今すぐにでもできそうだった。

このお店、如春園は小田原でこゆるぎ紅茶を作っているという。元々オーナーOさんは旅行ガイドをしており、インド、スリランカなどへの添乗をしている内に、紅茶の魅力に取り付かれたらしい。更にインドカレーにも目覚め、この3月に開店したという。コロナ禍にあっても、本格的で美味しいカレーと紅茶が評判で、店内は意外と広いのに、ランチは満員盛況であった。またOさんは以前、私の講座を聞いてくれたこともあったようで、ご縁を感じる。

実はここの近所には三井物産初代社長で、大茶人とも呼ばれる益田孝の別邸『掃雲台』が昔あった。9つの茶室で茶会を開く他、農場、牧場、林業の実験場として、チーズ、牛乳工場や缶詰工場などを製品にして三井物産に出荷していたらしい。また戦後すぐ三井農林は一時ここで日東紅茶を作っていたともいう。小田原は紅茶にとっても歴史的場所であり、ここで今、こゆるぎ紅茶が作られているのは、偶然ではないかもしれない。今回は行けなかったが、次回はフラフラとこの付近を散策し、有名人の別邸も探してみたい。

折角なので、如春園さんが、最近植えたという茶畑を見に行くことになった。そこは意外にも旧小田原城内で驚く。勿論現在の城とは異なり、戦国時代あの北条氏が作り上げた広大な城の一部だった。ある意味山城で、豊臣秀吉に攻められて滅亡したのは、この辺なのだろう。石垣の城壁ではなく、環濠が深く掘られ、守られていた。小田原城については、別の機会にもっと調べてみたい。

そんな中の平たい場所に小さな茶樹を見つけるのは、何とも愛おしい感じだ。何とか大きく育ってほしいと思う。その周辺はハイキングコースにもなっているようで、時々人が通っていたが、至って静かな場所だった。次回は自らの足で歩いてここを散策し、併せて探索してみたい。

山北へ

そこから車で約1時間、山北町に行く。今回の目的である神奈川のお茶、足柄茶の茶畑を見に行った。神奈川といっても、山の一本道の、こんなに山深いところがあるのかと思うような場所にその畑はあった。以前はかなりの茶農家があったというが、廃業が続いており、耕作放棄茶園も増えているらしい。見晴らしはよく、富士山が見える日もあるという。

Tさん夫妻は、ここの土地を借りて茶作りに励んでいるという。土地は斜面にあり、茶園の管理は大変そうに見える。それでも茶を作ろうとしているということは、色々と苦労はあるようだが、それはそれできっと楽しいのだろう、と勝手に思ってしまう。

駅のある所まで下りてくると、そこに足柄茶を売るお店があった。外には足柄茶の碑も建っており、近くには茶工場もあるという。神奈川県は何とか足柄茶をブランドにしようと努力していたが、9年前の東日本大震災の影響もあり、なかなか難しい対応を迫られているように見受けられた。

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