インドでアユルベーダを2017(5)ギーを飲む

8時に先生がやってきて、朝ご飯を食べるかと聞いてきた。3年前のカイバリヤダーマは全てのスケジュールがおおよそ決まっており、特に食事の時間は食堂の関係でしっかり決まっていたのだが、ここでは特に何時に何をするとは言われない。お互いの時間が合う時(基本的に私は暇だから、先生たちの都合)に事が起こる。

 

先生が持ってきてくれた朝飯は何とトーストとオムレツ。私はベジタリアンではない、と伝えた結果か、それとも実質的には未だ治療が始まっていないのか。とにかくおいしく頂く。そしてお茶は緑茶ティバッグ。お腹が一杯になると、なぜか眠くなる。昨晩あれだけ寝たのに、なぜだろうと思いながら、ベッドでごろりとしていたら、本当に寝てしまったらしい。ちょっと涼しいと感じていたので、そのせいかもしれない。

 

10時頃、先生が部屋のドアを叩いた音で起き上がる。すぐに脈診が始まる。アユルベーダではこの脈診が重要であり、毎朝取るのだが、今日は眠ってしまい、時間が遅れた。先生より『日中は寝てはいけない』というお達し書きを頂戴してしまう。脈は正常らしい。眠気でちょっと気持ち悪いなと思っているとヨゲーシュが来て、マッサージが始まった。昨日と同じ力強い指を使ったマッサージ。足もそうだが、腕にも強烈な痛みが走る。更には昨日同様、強烈なスチームバスを浴び、何だか疲れてしまった。

 

昼ご飯を食べられるかどうかと思っていたが、12時半ごろ先生が来て、何と『ギーを飲みなさい』と言われ、コップに継がれたギーが登場した。このギー、牛の油、バターを煮詰めたような油なのだが、私はこれが大の苦手。前回は食事に混ぜて取っていたのだが、それでも嫌で誤魔化し胡麻化し口に入れていた。アユルベーダ治療ではこのギーが重要な要素であることは分っているのだが。

 

今回誤魔化しは利かない、とばかりに飲めという。恐ろしい。飲みにくいからと言って、しょうがに砂糖が入った物を一緒に渡され、それを口に入れながら、ゆっくり飲んでいった。食事に混ぜると食事が不味くなるので、それよりはマシだが、正直飲み終わった後は気持ちがよいものではない。

 

それで結局ランチはなしとなった。食べると言えば用意してくれたはずだが、とても食べる気にはなれない。洗濯物を渡すために外に出ると、かなり強い日差しが照り付けて暑いのだが、この建物の中はクーラーもなく、扇風機すら回っていないのに、何とも涼しく快適。元々建物の構造がそのようになっているのだろう。

 

ギーを飲んでからは眠気が襲ってくるが、寝てはいけないので堪える。先生も気を使ってくれ、話し相手になってくれる。実はアユルベーダは数千年の歴史を持つ伝統医療であるが、インドで茶が飲まれたのはイギリス植民地時代以降の話。だからアユルベーダには茶についての記述はないという。ただ概念としては、お茶を飲み過ぎるのは良くはなく、また飲むにしても紅茶よりは緑茶の方が体に適していると考えているらしい。特にインドの庶民が飲むチャイについては、ミルクの質が悪い、砂糖を入れすぎている、などの理由から、11-2杯を限度とするのがよいとのこと。

 

午後3時ごろ、ご同窓のA師夫妻がラトールさんと共に、様子を見に来てくれた。元々今回このクリニックを紹介してくれたのも、昨年バンコックのヨーガ合宿で会ったA師からだった。ちょうど眠気が来ていたので、話し相手になってもらう。彼らは今日、プネー郊外のナチュロパティセンターに行っていたという。自然療法というのだろうか、自然に帰って、心身を健康にするものらしいがよくわからない。自分が決めたフルーツだけを食べたりすると聞くとちょっと興味が沸く。

 

ナチュロパティと違って、アユルベーダはバラモン階層の人々の治療法であり、インドの一般人は知らなかったはずだという。これが一般化したのは、わずか20年ほど前かららしい。何ともヨーガと似ている。流石インド、豊富な資源を持ちながらも、活用されていなかったということか。

 

インドで急速に進む都市化、それに合わせてマンションなどで植木鉢を置く家が増えており、自然に帰りたいという人間の心理を表しているらしい。そしてナチュロパティは今やインド人に大人気、多くの人々がセンターに来ていたという。一方カイバリヤダーマでもインド人および外国人が大挙して押し寄せており、今や個人で予約を取ることはできないという。ナチュロパティとアユルベーダ、何となく対極にあるようなこの2つの治療法がインドで人気となるとは。この3年で様変わり、インドの急速な変化の一面を見る思いだ。日本人でも興味を持つ人は多いが、決して低くはないハードルがある。

 

1時間ぐらい話していると、ヨゲーシュが来て、ハートマッサージをするという。心臓をマッサージするのだろうが、なぜだろうか。初めて受ける。心臓の上に煮出した薬草を包んだ布を置く。このマッサージによりギーでモヤモヤしていた気分は晴れてきた。気持ちが落ち着くと少し腹が減ってくるが、先生はいないので、何ともしようがない。まあ食事よりもいつ寝てよいのか、いつシャワーを浴びてよいのかが知りたいが、何となく放置された気分になる。

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