ダラダラ佐賀まで茶旅2015(3)伊勢 茶業に立ち向かう人々

茶来

車は少し山道に入っていく。すると川が見える。茶畑があるところ、必ず川あり、と言う通りだろう。『茶倉』などという地名も見えてくる。いよいよ茶畑は近い。道路沿いある一軒のお店の前で停まる。『茶来まつさか』と書かれている。お茶屋さんだろうか。店内ではもちろんお茶を売っていた。

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Kさんが事前にお願いしてくれており、Mさんが対応してくれた。こちらの会社やお茶の説明もなく、すぐに車に乗り、茶畑へ行くという。嬉しい展開ではあるが、全くここがどこか、そして何をしているのかも分からず進んでいく。5分ほど走ると、そこには広大な茶畑が広がっていた。斜面でなく、平地に近い場所に、びっしりと茶樹が植えられている。大規模に機械で摘んでいく様子が目に浮かぶ。ものすごい数の防霜ファンが設置されているが、ここはそんなに寒いのだろうか?寒暖の差はありそうだ。

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向こうの方に金色に見える場所がある。変異した茶樹があるらしい。私一人が走って写真を撮りに行く。静岡の黄金みどりのような貴重な茶葉に見える。だが、なかなか根付かず、商品化するまでには至っていない。変異するということは、茶樹そのものが強くないということか。

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茶来は、7年前に茶農家の有志3人が集まり設立された。これまでの個人経営に限界を感じて行動を起こしたという。工場も見せてもらったが、かなり大きな設備投資も行っており、確かにこれまでの個人では出来なかった、そして農協などに頼らない経営を目指しているように見えた。

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お店は元々事務所として作り、茶の卸しをするつもりだったが、個人向けの販売も顧客の要望で始まったようだ。そして管理する茶畑も増えていっている。この地域もご多分に漏れず、高齢化が進み、後継者がない農家が増えている。最近は『茶畑を管理してほしい』という要望が良く持ち込まれ、管理できるところであれば、それに応えていこうとしている。

 

問題は作った茶の販売であろう。各地の品評会に出品し、受賞するなど知名度を上げてきているが、受賞することと売れるということが、必ずしも結びつかないのが、今の日本茶の問題の1つかと思う。以前は三重の茶は宇治などに供給されていたが、今はその量もかなり減ってしまった。茶問屋を通していては、従来と変わらない、知名度が低いこともあり、安い価格で買いたたかれるだけで、将来は見えてこない。農協に頼るのもどうだろうか。

 

三重県は県内のお茶を『伊勢茶』で統一する予定だといい、正直個別性のある尖ったお茶、が求められる中、その個性が更に見えなくなることが危惧されている。茶来のお茶は『飯南茶』として売れればよいと思うのだが、来年から県外ではこの名称も使えないという。海外へも目を向け、販路を開拓しなければならい。イスラム教徒向けにハラール認証を取るなど、様々な工夫をしているが、外国人のニーズを掴むまで活動は広がっていないようだ。

 

結局色々と話を聞きたかったが時間切れとなった。そしてもう一度お店に寄ると思っていたのだが、Mさんとはあっさりと別れてしまい、茶来のお茶を購入することもなく、次の目的地に向かうこととなった。何とも残念だが、それもまた流れ、と諦め、次回を期すことに。

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おじいさんの茶畑

車はどこを目指すのか。もう駅に向かうのかと思っていたが、学校の前で停車した。Kさんの知り合いの人が紹介してくれた茶農家を訪問する予定があるというが、その場所が分からず、携帯で確認していた。すると、軽トラに乗ったおじいさんが迎えに来てくれる。申し訳ない。

 

85歳のSさんは昭和30年代の高度成長期に、ミカンや桑の畑から茶に転作した。当時は順調に茶栽培もでき、作れば売れるということで、販売にも問題はなく、順調にやってきた。だがバブル崩壊後、茶の需要は減り続け、最近は茶価も下がるばかり。今日も元気に畑に出て、我々にも色々と説明してくれていたが、自らも高齢となり、奥様も亡くなり、茶畑の管理も日増しに難しくなってきている。

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『勤めている長男が、あと2年で定年となるので』と言い、茶畑を継いでくれるのを望んでいるが、果たしてそうなるのだろうか、と心配そうだ。茶業の現状からは、明るい将来が見え難く、今はハッキリ分からない。茶葉は元気に伸びているが、それを刈り採ることが、しんどくなってきている。

 

既に茶畑の一部は先ほど訪ねた茶来に管理を任せているという。彼らはきちんと管理してくれるので安心であると言っていた。実際ここに立つと、このような茶畑がどんどん増えていることが実情として良く分かる。青い空に映える茶畑を眺めながら、日本の茶の将来について考える。

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